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宇宙事業と宇宙放射線

宇宙で人間が生活する場合に、2大課題があります。

それは

「重力」と「宇宙放射線」

です。 

今回は宇宙放射線について素人がまとめました。

Q宇宙放射線の概要

宇宙放射線は宇宙環境に存在する電離放射線です。まずは電離放射線について話しますと、これは電磁波(X 線やガンマ 線等)と粒子線(陽子、中性子、電子、アルファ線、重粒子等)からなります。

宇宙放射線の量は高度が上がり、各種大気層(対流圏、成層圏、中間圏、熱圏)を過ぎるにつれ急激に増加していきます。なぜなら、地上から離れ高度を上げてゆけば宇宙線と衝突することによりエネルギーを拡散させ、吸収していた大気分子の密度が減少するからです。また高速で飛来してきた宇宙からの荷電粒子を、地球に到達する前にそのコースを曲げてそらす役目の地球磁場の強度が下がっていくことも理由としてあります。この2つの地球の持つ特性と物質のおかげで、過去数十億年、生存、進化の道を歩むことができたと言えます。

より詳細に解説していきます。定義が定まっておらず一定の見解として下記の分類がなされています。
宇宙放射線は大きく分けるとA 一次宇宙放射線とB 二次宇宙放射線に分かれます。
一次宇宙放射線は3種類に分類されます。

A 一次宇宙放射線
①銀河宇宙線(Galactic Cosmic Ray : GCR)
銀河宇宙線は太陽系外から飛来する荷電粒子のことを言います。超新星爆発等をその起源とし、銀河系内磁場により加速されます。非常に高いエネルギーを持っている場合が多いです。

②太陽フレア粒子
太陽表面の爆発現象に伴って起こる高エネルギー粒子の放出によって生じます。

③放射線帯粒子
地球磁場に捕捉された荷電粒子を意味します。

B 二次宇宙放射線
一次宇宙放射線の衝突で発生した粒子を二次宇宙放射線と呼びます。

Q宇宙放射線の測定

宇宙における生物の放射線影響の解明や人間が長期にわたって宇宙に滞在するためのリスク評価を行うためには、宇宙環境において、実際に宇宙放射線を計測することが必要となります。生物学的指標と照らし合わせる物理的な環境パラメータのひとつとして、正確な宇宙放射線の被ばく量を把握することも重要です。
宇宙放射線環境を測定するのに優れた2種類の線量計素子(固体飛跡検出器CR-39、熱蛍光線量計TLD-MSO)を組み合わせた受動型線量計とその解析を自動高速で行うシステムを PADLES: Passive Dosimeter for Lifescience Experiments in Space といいます。 これはJAXAが開発したもので、ISS内外の宇宙放射線計測に用いられています。測定したデータを用いて、「きぼう」船内構造図面や太陽活動予測を利用した宇宙放射線被ばく線量シュミレーターモデルも構築が行われています。

Q宇宙放射線の対応


今後人間が、月面、火星、その先に移住を目指していく中で確実に大きな課題の1つとなります。放射線を浴びても大丈夫なガードのようなものを作るのか、放射線を浴びても大丈夫な体に人間がなるのか、まだまだ課題は山積みですがワクワクする領域です。


Q放射線対応


放射線被ばくの種類には3つあります。職業被ばく(作業時の人々の被ばく、操業管理者の責任であると合理的に見なすことのできる状況の結果)、医療被ばく(診断または治療の一部としての人々の被ばく)、公衆被ばく(放射線に対する他のすべての被ばく)です。
放射線防護における3つの管理方策は線源管理、環境管理、個人管理 と言われています。

Q放射線耐性のある生物


・ヒトよりも1,000倍以上放射線に強い性質を持つ“放射線抵抗性”細菌のデイノコッカス・ラディオデュランスは、放射線照射にDNA損傷を修復する機能を有します。
・クマムシは動物でありながら数千Gyの放射線を照射してもほぼ100%の個体が生存します。


【参考文献】
https://pixabay.com/ja/photos/%e5%8e%9f%e5%ad%90%e5%8a%9b%e7%99%ba%e9%9b%bb%e6%89%80-3545244/
Biomed Res Int . 2020 Apr 8;2020:4703286.
https://edu.jaxa.jp/contents/other/seeds/pdf/2_radiation.pdf
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/kisoshiryo/attach/201510mat1-01-14.pdf
Earozoru Kenkyu, 27 (3), 264-268 (2012)
https://www.qst.go.jp/site/press/20784.html
化学と生物 Vol. 56, No. 8, 2018

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