見出し画像

愛憐の祈り


色素の薄い春のような2月。
淡い陽光の作る街の色が、ゆっくり生きることを許してくれる。早咲きの桜、檸檬色の小さなポンポンが付き始めたミモザを見つける。

一瞬の早春を想う。



四半世紀生きて多くのことを経験したせいか、成す術もなく記憶がすがれてゆく哀しさを感じるようになった。

「こんなことがあったよね」
と言われても、記憶の色はもう褪せていて、同じ場所で、同じ空気を飲み込んでいたのに、
私だけ忘れちゃって、置いてけぼりにされて、
独りぼっちになった気がする。

思い出したいというよりも、あの時のあなたを
分かりたいと、必死に記憶の糸を巡っても、
あなたにしか分からない空気と、温度と、景色がある。

私がそれを感じることはできない。
今のあなたの綺麗な輪郭をなぞることくらいしかできないだろう。

それでも、私たちは独りで生きられないから、
その「分からない」を、分からないまま慈しみたい。脆くても苦しくても、分からないまま傍にいたい。

それが私にできるあらんかぎりのことで、
最大限の「好き」なんだと思うのです。


そんな祈るような戀をして生きていたい。

ルノワールの描く静物画、愛おしい


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?