イス取りゲームをやめて、仲間をつくろう〜田内学『きみのお金は誰のため』
最近、私が生徒・保護者の方も含め、友人など、様々な方におすすめして回っている本があります。*1
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実は、私は一度、この仕事(塾の講師)を辞めたことがあります。
入試は学校の定員が決まっている以上、しょせんイス取りゲームでしかないのに、そんなイス取りゲームに向けて生徒をがんばらせて、その周りで大人はカリカリしていて、子どもを幸せにしているとは到底思えませんでした。
自己嫌悪に陥り、別の仕事に転職しました。*2
ですが、今は逆転の発想で、カリカリする大人が多いこの中学受験の世界だからこそ、一人でも多くの子どもが幸せになれるよう、自分にできることを全てやり切ろう!と思って、仕事をしています(この思いを絶対に忘れたくないので、自己紹介にお約束として書いています)。
ですので、今、私にとっていちばん大切なことは、生徒個人個人が「一生懸命、勉強して良かった!」と思えること、生徒自身が幸せだと感じられることです。
ただ、できれば、勉強が好きで得意なお子さん(中学受験をされる方は、日本の人口全体で見ると、ほぼ間違いなく該当します)には、ぜひ、その得意な勉強や中学受験の経験を活かして、できるだけたくさんの人を助けてほしいな、とも思っています。
私自身の経験不足であったり、未熟さゆえに、なかなかこうした思いを上手く伝えられずにいるのですが、そんな中で出会ったのが田内学さんの『きみのお金は誰のため』でした*3。
本の購入前に見たビデオニュース・ドットコムの番組で、田内さんが終わりがけにおっしゃったことが胸に刺さりました。
田内さんはゴールドマン・サックスで金利トレーダーをされていた方なので、言ってみれば、イス取りゲームの勝者です。
一方、私は中高一貫校を出て、東大法学部まで(?)出たのに、年収も大したことのない中学受験の講師をやっている、言ってみれば、イス取りゲームの敗者(途中脱落者?)です。
私みたいな敗者が「イス取りゲームをやめよう!」*4と言うのは、ある意味、当たり前です。
ですが、田内さんのような勝者も同じことを思っている、というのが私にとっては新鮮でしたし、とても心強い味方のように感じました。
今、ここまで記事を読まれている方には、ぜひ田内さんの本を読んでいただきたいです。
きっと私と同じように、社会という荒野を生き延びるための、心強い味方を得た気持ちになっていただけると思います。*5
「いきなり本を買うのは、ちょっと…」とおっしゃる方は、ぜひこちらのインタビュー記事をご覧ください。
横浜創英中学校・高等学校の工藤勇一校長との対談記事も読み応えがあります。
私自身、この仕事をしながら、もっと社会のために考えなければならないこと、行動しなければならないことが、いっぱいあると思っています。
まずは、私が一緒に勉強する機会をいただいた子どもに
「入試はあくまで非日常。非日常に向けてがんばりながら、仲間を作って助け合う日常をしっかり作ろう」
と、自らの行動や態度をもって示したいです(言葉で伝えるのではなく、私と接する中で感じ取ってもらえるように)。*6
また、保護者の方や私の周りにいる人たちを触発する存在になれるよう、努力しつづけたいと思います。
*1 本当はおすすめするのではなく、100冊くらい自分で買って、配って回りたい。それくらい素晴らしい本です。
*2 転職後、仕事があまりにも上手くできず、自分が得意なことで人の役に立つ大切さを身にしみて実感することになります…。
*3 田内さんのことは、ビデオニュース・ドットコムにゲストとして出演されたり、経世済民オイコノミアという番組の司会をされていたので、存じ上げてはいました。ちなみに、田内さんは灘のご出身で、そのあたりのエピソードにも親近感を覚えます(私は余裕をもって灘は落ちたので、なんの親近感かよく分かりませんが)。
*4 正確に書くと、私は中学受験は子どもが真剣に勉強する経験をするという意味では、意義のある制度だと思います。ただ、制度としては「イス取りゲーム」にならざるを得ません。なので、子どもには、これはあくまで非日常(=ネタ)なのであって、日常(=ベタ)ではない、と分かってほしいと願っています(12歳の子どもにとっては、かなり難しいことであるのも事実ですが)。子どもにとっての日常は「仲間との助け合い」であってほしいです(もちろん、子どもだけでなく、大人にとっても)。
*5 もっとも、本を読むだけで味方が得られるわけではなく、仲間を得るためには、当然のことながら、実際に行動しなければなりません。でも、この前向きな気持ちは、この本でしか得られないと言っても過言ではありません。私はそれくらい前向きになれました。
*6 授業中の声がけも、極力生徒の主体性(当事者意識)を促すよう心がけています。…と言いながらも、工藤先生の記事を拝見すると、まだまだ改善できることがあると感じました。
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