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SDGsへの挑戦は一冊の絵本から始まった | 株式会社平出章商店 平出社長インタビュー

「つながり創造企業」をキーワードにさまざまな事業を展開する株式会社平出章商店。同社は昨今、SDGsや障害者雇用にも力を入れているといいます。

平出社長が大切にしている理念はどのようなものでしょうか。また、社員魅力アップ制度とはどのような制度なのでしょうか。

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SDGsへの挑戦は一冊の絵本から始まった

究極的に私たちがつなげていきたいのは「過去と未来」です。先人たちが築き上げてきたものを後世につなげるのも大事な仕事だと考え、弊社ではサステナブル経営に力を入れています。

サステナブル経営とは、「環境・社会・経済」という3つの観点において長期的に持続可能な社会を実現するための経営を指します。レモンケーキの例に見られたような、フードロス削減や障がい者の方々の雇用創出も持続可能な社会づくりへの第一歩です。

会社の成長だけを追い求めるのではなく、安全な環境、安全な食を未来の人々に引き継いでいくことも弊社の役目なのです。

サステナブル経営に取り組むきっかけにはある一冊の絵本がありました。それがこちら、『ゾウの森とポテトチップス』です。

動物園に子どもと行った時、ゾウのブースでイベントをやっていました。絵本を買うとゾウの餌やり体験ができるというもので、子どものために半ば仕方なく購入しました。

せっかくだからと読んだ絵本には、このようなことが書いてありました。

たとえばドーナツやポテトチップスのような油で揚げた食べ物にはパーム油という食用油が使われています。パーム油は世界中で消費されており、その出荷量は年々増えています。

パーム油を取るためにはアブラヤシという木が必要なのですが、そのアブラヤシのプランテーションをつくるために大規模な森林伐採がおこなわれ、動物たちの棲家が奪われているといいます。

弊社でもマーガリンやショートニングなど、パーム油由来の材料を多く取り扱っています。私たちの身近なところに環境破壊の大きな原因があったのです。

食の問題はパーム油に限ったことではありません。

チョコレートも大きな問題を抱えている食品の一つです。カカオ農家の方々は非常に貧しくて、自分たちの収穫したカカオでつくられたチョコレートを食べたことがない、という話も聞きました。

自分たちが取り扱っている食品の裏側に大きな闇があったと知り、「はたして、このままでいいのか?」という気持ちが大きくなっていきました。

同じタイミングで、所属している商工会議所青年部のメンバーからSDGsについて教わりました。今でこそ耳にしない日はない言葉ですが、当時はまだメディアで大きく取り上げられることがありませんでした。

しかし、SDGsの取り組みは「やるか・やらないか」のレベルをとっくに超え、私の知らないうちに世界は持続可能な社会づくりに本気で取り組み始めていました。

企業人として、もっといえばこの地球上に生きている人類として、必ず行動に移さなければいけない! そう思ってから、会社で何ができるかを問い始めました。

お中元から始めるサステナブルな取り組み

身近なところから始められる取り組みは、探せばいくらでも見つかります。直近で弊社が始めたものとして贈り物の抽選購入があります。

たとえば、お中元でジュースの10本セットをいただいたとします。今までは10本を1本ずつ、10人の社員に分けていました。最近はそれをチャリティー抽選という形に変えました。やり方はこうです。

会社に届いた贈り物を並べ、本来の購入価格の半分くらいの値段をつけて掲示します。それが欲しい人は自分の名前を書いたシールを貼りつけて抽選を待ちます。期限がきたら名前をつけた人たちの中で抽選をし、当たった人は商品を買う権利が得られるのです。

そうして集まったお金は浜松の防災ネットワークに募金しています。社員は本当に欲しいものが安く買えて無駄をなくせますし、募金もできて一石二鳥だと思っています。

また弊社では省エネ化を進めており、冷凍機・エアコンの入替や全熱交換型換気機器の導入を行う予定です。取り組みの様子は浜松商工会議所の発行している情報誌「Digital NEWing」の12月号(34ページ)にも掲載していただきました。

このように、できるところからコツコツ始めるのが大切なのではないでしょうか。

強度のある経営を目指し

先代が大切にしているのが年輪経営という考え方です。

年輪経営とは、経営を樹木の年輪にたとえた考え方であり、私たちが目指す「良い会社」の一つである伊那食品工業さんの言葉です。

年輪の幅が広い木っていうのは成長の早い木なんです。一年ですごく成長する木は、あっという間に大きくなりますが、その分もろい。一方で成長の遅い木は、見た目の変化こそあまりないものの、中身は強く育っています。

私たちの目指す経営も同じで、急成長はしなくてもいいから、年輪を刻むように一年ごと着実に会社としての強度を増していきたいという想いがあります。 

また、会社の売り上げだけでなく、「社員が笑顔で働けるようになった」とか「お客様が評価してくれるようになった」といった、数字には表れづらい部分での成長もしっかりさせていきたいです。

全てに感謝!

創業者である祖父から受け継がれる言葉に「全てに感謝」があります。これは会社の外にある石碑にも刻まれています。

祖父はかつて薬剤師でした。戦時中は満州の病院に勤めていましたが、ソ連の侵攻などによる混乱の中、いろいろな人の助けを受けながら日本へ帰ってくることができました。

ところが、命こそ無事だったものの無一文で財産も何もない状態。そこで祖父は薬剤師だったころの人脈を使い、人工甘味料の仕入れの仕事を始めたそうです。

当時は砂糖や小麦粉が入手困難でした。製パンメーカーはパンもお菓子もつくれず、人工甘味料で甘くしたアイスキャンディーを売っていたそうです。

時が経ち、製菓・製パン業界にも日常が戻っていく中で、お客様からの要望も「食品を日持ちさせたい」「ふんわりさせたい」といった内容に変わっていきます。祖父は、そういった要望や困り事を添加物の知識で解決することでお客さまの信頼を獲得し、今のような製菓材料の販売へ事業をシフトさせていきました。

創業まもない頃の平出章商店

無事に日本に帰ってこられたことも、無一文から事業を始められたことも、すべて人々とのつながりがあったからこそなんです。そのようなつながりに感謝しつつ、今日まで事業を続けてきました。

お世話になったみなさんに感謝しなきゃいけないし、日本が国家として存続できたことにも感謝しなきゃいけない。すべてのものに感謝しなさいっていうのは、そういったところが根底にあるんじゃないかと思います。

もっとも差が出るのは「人」

弊社が経営理念とともに大切にしているのが人事理念です。人事理念というのは「社員として、人としてこうあってほしい」という考えを表したものです。

製菓材料の業界を俯瞰して見た場合、景気がよいとはとても言えません。弊社は年々売上が伸びていますが、同業他社でも「あと何年もつだろう……」といった会社が増えているようです。

そういった状況下で、業績が上向いている会社と悪化している会社を比べた時、もっとも差が出ているのは人財育成だと感じています。

理念の一つに「人財が会社にとって最も大切な財産であると考え、部下や後輩の育成指導に尽力します」とあります。教育という観点でも、5年後、10年後の未来までを視野に入れた人事を心がけています。

目指すところは社員みんながキラキラして笑顔で働ける職場です。しかし、まだまだ理想の職場像からはほど遠いでしょう。

なかなか思い通りにはいかないですが、少しずつでも社員が納得できる職場づくりを進めていきたいです。

魅力アップ制度の導入

人財育成の一環で、数年前から新たに社員魅力アップ制度を導入しました。一般的な人事評価制度とは違い、「社員の成長を支援するための制度ですよ」っていうことを伝えたくてこの名前にしました。

今の自分のポジションやできること・できないこととを明確にし、各々の課題をクリアしていくことが目的です。

社員はそれぞれのポジション、部署でクリアしたい項目をずらっと設定してあります。それに対して年二回、できている・できていないを本人と評価者が評価、面談をして、「今のあなたはここができています・ここは課題です」と現状を伝えます。

フィードバックをもらった社員は新たな目標を立て、さらなるレベルアップを目指していきます。

弊社では評価者側の教育も必要だと考え、人財育成に詳しい先生に来ていただいて勉強会をしています。

役職者は人を育てることに優れているから役職者になったわけではなく、実務に優れてるからなっているだけであり、「人を育てる」ってところではできなくて当たり前です。

なので評価する側もしっかりと目標を立て、成長していく必要があると考えています。

新規事業支援、はじめました

昨今では新規事業支援も始めました。広い人脈と蓄積されたノウハウをもとに、お客様の専門でないは分野をサポートするのも弊社が得意とするところです。

たとえば、新しくお店をオープンされる方々の多くは、お菓子作りやパン作りを中心に学んできたため、お店の設備や経理といった事務的なところまで手が回っていないケースがあります。

そこで弊社がお客様のご要望に沿ったお店づくりをお手伝いさせていただいています。

具体的には、コンセプトづくりや資金調達に始まり、開業のために必要な設備のご提案をします。また土地や設計の専門家とお客さまをつなげるサポートもさせていただきます。

弊社の直営小売店である『HIRAIDE ホームメイドストア』には様々な製菓・製パン機械の試用機があり、機材購入前のお試しも可能です。

お菓子屋さん、パン屋さんをオープンされるうえで気になることや不安なことがございましたらお気軽にご相談ください。一緒にお店と地域を盛り上げていきましょう!

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