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「いろ」のお話、いろいろ。

人間は、およそ100万色の色を見分けることができると言われています。もちろん、個人差やコンディションにもよりますが、それだけの色を当たり前のように識別しているなんて人間の持つポテンシャルには驚かされます。そして、こうして数字にすると何気なく見ている「色」に対して、私たちがいかに敏感であるかという気づきがあります。さらに、「色」からうける心理効果は科学的に立証されていて、それも広く知られているところです。つまり、印刷クリエイティブで人の心を動かす表現を目指している印刷会社にとって「色」は、とても重要な要素だということであります。今回はそんな印刷表現の鍵ともいえる「色」お話です。

CMYKって

CMYKは、C=シアン、M=マゼンタ、Y=イエロー、K=キープレートという印刷で使用する4つの色のことです。印刷では、この4色であらゆる色を表現しています。「絵の具の三原色と同じか!」と、小学校の頃の図工の授業を思い出した方もいるかと思います。また、原色と言えばテレビ、スマホ、パソコンなどで使うR(Red)G(green)B(Blue)があります。どうしてCMYKとRGBの2種類があるの?共通で良くない?と思うところですが、これは「光を反射する印刷物」と「発光するTV、PC、スマホ」の違いです。少し専門的な言葉を使うと減法混合(反射)、加法混合(発光)というもので、「減法混合では、CMYを混ぜると黒に近づく」「加法混合では、RGBを混ぜると白に近づく」というように性質がかなり異なります。ちなみにPCやスマホで、このnoteで皆さんが見ている色はRGBで表現されています。

印刷の「いろ」は?

印刷では、前述の「CMYK」のインキを使ってあらゆる色を表現しています。みなさんも図工や美術の授業で、青色と黄色を混ぜると緑色になる・・・というように絵の具を混ぜて絵を描いた経験がありませんか?それとほとんど同じ要領です。ただし、印刷機械でインキを混ぜ合わせて色を作るということはありません。4色(カラー)の印刷機械は、スミ、シアン、マゼンタ、イエローの順番で色を重ねることで、あらゆる色彩を表現しています。これをプロセスカラーといいます。

スミ(K)のみの印刷
シアン(C)のみの印刷
マゼンタ(M)のみの印刷
イエロー(Y)のみの印刷
全てが重なることであらゆる色が表現できる。

版と網点

この色を重ねるために重要なのが「版」と「網点」です。わが社で使っている版は、平板というもので、金属の板に親油性部分と親水性部分を作り水と油の反発を利用して親油性部分にのみ付着するインキを転写するものです。4色カラーの印刷をする場合シアンの版、マゼンタの版、イエローの版、スミの版の4種類を作ることによって、どの部分に、どの濃度でインキが付くのかで表現します。そして、そのインキの濃淡をつかさどるのが網点で、印刷物は無数の点の密度でその濃淡を表現しています。

網点の角度とモアレ

規則的な点どうしが重なると、意図しない模様ができる。これをモアレといいます。
網点の重なりが重要な印刷業界では、網点の角度を調整することでモアレができないように対応しています。それがスクリーン角度です。標準的なスクリーン角度は、C版15度、M版75度、Y版30度、K版45度で色ごとに網点に角度をつけて網点どうしが干渉しない工夫をしています。

モアレの起こった写真

特色

CMYKの4つの色を重ねることであらゆる色を表現する印刷技術でありますが、その方法では表現難しい色が存在します。例えば、金、銀、蛍光色、白色などがそれにあたります。こういった色はCMYKではどうやっても表現ができないのでその色のために特別に調合された特色インクを使用し、こういったものを特色と言います。また、企業や組織を象徴する色=コーポレートカラーなどの、特定の色で紙の全面を印刷する場合などは、色のムラを無くすためにその特定の配合率でインクを混ぜてることもあります。ちなみに、複数のインクを混ぜることを調肉(ちょうにく)といい、特色のインクをインクメーカーから購入するだけでなく、印刷現場で調肉してインクを作る場合もあります。

最後に

あらゆる「色」を表現するために、印刷現場では様々な技術が使われ、確かな色の表現ができているかをオペレーター注意深く確認しながら印刷物は作られています。色と印刷技術は、あらゆる表現の課題と向き合って、解決してきた先人たちの工夫とアイデアの歴史です。さらなる表現を求め、限界を超え、今日まで印刷技術は発展してきました。そして、まだまだ新しいアイデアが生まれ新しい技術が生まれつつあるのです。

次回も印刷会社ならではの「オモシロイ」に目を向けてご紹介いたします!!

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