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植物少女

夜のお稽古で、お抹茶を3服いただいたからか、まんまと眠れなかった。2時すぎに目覚めてからポッドキャストを聞きつつ横になって、丸々番組を聴いたらすっかり覚醒して、読みかけのままにしていた朝比奈秋さんの小説『植物少女』を読了した頃には朝の5時をまわっていた。

出産時の脳出血で植物人間になった母と、その娘、家族の26年のお話。植物人間として病棟で過ごす母はずっと眠っている状態ではあるのだけど、生きるための機能は正常で、口元に食べ物を持って行くと咀嚼して食べたり、痛みに反応したり、手のひらに何かを触れさせると握ろうとする。

作者の朝比奈さんは現役の医師ということで、自身が植物状態の患者さんに初めて応対したときの驚きがこの作品のベースになっているという。その描写と知られざる実態にドキドキしながら読んだ。

娘は植物状態の母に日々話しかけ、まるで健常者と同様にコミュニケーションをとる。母の髪を金色に染めたり、耳にピアスを開けたりもする。しかしながら、もちろん母はいつだって返事をするわけでもなく、声を発するわけでもない。突然目をぱっちりと開けることもあるけれど、基本的には眠っている。そんな母を娘は、自分のすべてを受け止めてくれていると感じている。

母にもたれかかり、呼吸を同期させる場面が何度か出てくる。わたしの母は健在だが、幼い頃の母への思いがよみがえって、懐かしいような切ないような気持ちになった。

母が亡くなり、斎場で娘が棺の母と二人きりで過ごす夜、ほんとうに「母がいなくなった」瞬間を描いた場面がある。母の体が容れ物みたいになる瞬間。
わたしの父も犬も、最期はこんなふうに容れ物みたいになったなと思い返しながら朝を迎えて、明け方に読んでよかったと思った。

本当のような嘘みたいな、日常のような非日常のような、そんなあわいの時間に、生きているような死んでいるような人間(犬含む)たちのことを思いながら物語の世界に溶け合うことができたうれしさと心地よさがあった。



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