脱毛サロンと満員電車

寒くなってきているにもかかわらず、電車の中には脱毛サロンの広告ばかり、11月半ばの東京。吊り革に捕まり不規則に揺られている時、テンプレ通りの都会にいることを実感する。

動物たちは寒さから身を守るために体毛を厚くしてきたのに、人間は進化過程で体毛を失い続けてきた。人間以外のもので偽りの毛をつくり、纒い、ファッション化し、エゴイスティックに寒さから身を守ってきた。

YouTube広告でしきりに流れる、モテたいなら脱毛しよう!というメッセージ。むしろ脱毛しないと価値ないよという警告。これを作ったひとには、「ムダ毛は高尚なものだ」と書かれた江國さんの小説を読んでほしい。前初めて行った脱毛サロンは何だか無機質で怖かった。

名前を知らない美しい女優の顔とにらめっこしながら、冬物のコートを身に纏い、いつ隣の人が発狂して刃物を振りかざしてこないか怯え、同時に、私自身がいつ発狂しないか恐れながら、今日も社会に柔順なふりをして電車に乗っている。11月半ばの東京。

眠れない夜のための詩を、そっとつくります。