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シュレッダー的エゴイズム

会社に戻った。

何も選べなかったような気もする。
いや、ちゃんと選べたような気もする。

迷っている間に何もかも失ってしまったような気もする。
でも迷っている時間は尊かったと思いたい自分もいる。
そして、大切なものはちゃんと守ったような気もする。

「悔しいかなしい虚しいつらいでもこれでよかったいやもっと頑張りたかった違うここで頑張ろういやいや違う人生で大切なのは何も仕事だけじゃないでも、」

がががががが。

思考の空白になだれ込んで来る後悔や不安や迷いを、書き損じた書類と一緒にシュレッダーにかける。

がががががが。

没頭したい。何かに。
やりたいことに没頭したい。ずっと文化祭前夜みたいな気持ちでいたい。

やりたいことが沢山あって、全部やるには人生が足りなさそうなんだ、だからこんなところで病んでいる時間なんてない気がする。焦る。お手紙屋さんになりたいって人事面談で言おうかな。恋文代筆業で生計を立てていきたいです。お前はそんなの書いてる暇があったら退職届でも書けと言われるかな。でもやりたいことをやるには、今の私には基盤がないの、悔しい、悔しいけど、仕方ない。耐えて機会を待つんだから。待つだけじゃない、追いかける。チャンスの神様は前髪しかないなんて嘘だね、白いひらひらした服の裾を掴んで振り向かせてやる。

退勤後、駅前の店でマトリョシカを沢山売っていた。とても気になったけど、早く電車に乗りたかったので買わなかった。
満員電車では座れなかった。よろけておじさんの足を踏んだ。怒られなかった。ごめんなさいと思った。

「仕事するなら私に余白を与えないほうがいいですよ、がむしゃらに働かせたほうがきっと使い勝手がいいです。たぶん思考の隙を与えると色々考え出してしまうから。それはあなたたちにとって不都合だ」なんて言えないまま、しれっと8時間働いて物足りなさを感じている私は何なんだ。あれ?働くって何だっけ。

働いている自分は好きだし、
誰かの役に経っていると感じられるのも好きだし、
ありがとうと言われるのも好きだ。
だから働くことは嫌いじゃない。働いてたい。

でも、好きなことを仕事にできたらいいのに。
前まで怖かったけど、本気で思うようになった。

好きなことが誰かの役に経ったらいいのに。
そうやって生きて、ひと月人間が生きられるくらいお金がもらえたらいいのに。

むずかし、働くって難しい、生きるって難しい。
がががががが。

ここは東京、東京です。

みんな平等に正しくさみしい、
麻薬漬けの人形みたいな街です。

眠れない夜のための詩を、そっとつくります。