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ちいさなさみしい女の子

ある森の奥に、ちいさな女の子がいました。

女の子はいつも明るくいつも優しく、森の動物たちみんなから好かれていました。

けれど女の子には、帰る場所がありませんでした。

一緒に遊んだ友達が家族や恋人の元に帰るのを見送った後、女の子は一人、夜の森を徘徊していました。帰りたくても、どこに帰ればいいのか分からないのでした。

女の子はいつも寝不足でした。

けれど大好きな動物たちと一緒にいる間は、笑っていることが出来ました。女の子はみんなのことが大好きでした。

ある日女の子は、森の中で一人の男の子と出会いました。

色の白い、青い瞳をした男の子でした。

女の子と男の子はすぐに仲良くなりました。男の子と別れる時、このまま一緒に帰ることが出来たらいいのに、と女の子は思うようになりました。

「君のことが一番大切だよ」

ある日、男の子は花輪を女の子の頭の上にのせながら言いました。

「一番大切」という言葉が、女の子には分かりませんでした。

女の子にとっては、一人ぼっちの真夜中以外のすべてが大切でした。自分と一緒にいてくれる動物たち、みんなのことが大切でした。

だから、男の子が自分のことだけを見て「大切だよ」と言ってくれることが、とても不思議でした。少し怖くも感じました。

女の子は男の子のことが好きでした。

でも、どうすれば「一番大切」という言葉に応えられるのか分かりませんでした。

女の子は大切なものを一つもなくしたくありませんでした。今持っているものを、何一つなくしたくありませんでした。何かを溢さないように、毎日必死で大切なものを大切にしようとしました。

女の子は寝る間も惜しんで、動物たちと会うようになりました。

女の子の寝不足は悪化しました。

絶えず誰かと会っていないと、すべて失ってしまうような気がしたのです。女の子の目はいつも真っ赤でした。

そんなある日、久しぶりに会った男の子は、かなしそうな声で女の子に言いました。

「君は僕のことが大切ではなかったんだね」

女の子はびっくりしました。

何もかも大切にしようと、今まで頑張ってきたのに。大切なものを失わないように、必死で――。

男の子はそれからもう、森の中に現れることはありませんでした。

一番なくしたくなかったものをなくしてしまったことに、女の子は気がつきました。何もかも大切にしないといけないという思いでがむしゃらに動いた結果、一番大切だったものを大切に出来ていなかったことに気がつきました。

女の子の所には今日も、「楽しい話をして」「楽しいことをしよう」、そう言う動物たちが沢山やってきました。

女の子は頑張って、楽しい顔をしようとしました。そうしないと、大切なものをもっと失ってしまう気がしたのです。

女の子はみんなのことが大好きでした。

でも、みんながそれぞれの場所に帰っても、女の子には帰る場所がありませんでした。

男の子がくれた花輪を抱いて、女の子は夜の森を歩き続けました。

月が綺麗な夜でした。

それを一番伝えたい相手は、もう、女の子のそばにはいませんでした。

女の子は枯れかけた花に口づけをして、その場に横たわり、深い、深い眠りにつきました。

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眠れない夜のための詩を、そっとつくります。