三日月型テロリズム未遂

東京駅で夜に浸る時間が好きだ。
誰かを待っていたことを忘れてしまうくらい、
ただひとり静かに佇む時間が。

ここにいるひとたちには
帰る場所と向かう場所と
大切なひとがちゃんと存在している気がする。

だから無駄に声をかけられることがない。
みんな満ち足りているから、
迷い子の私など気にも留めない。
だから安心してひとりでいられる。

欠けたままの月を抱えて
光る駅舎をぼんやり眺める私は

誰にも見つけられないことと
誰かに見つけてもらえることを
同時に願っている。

「クリスマスに東京が滅ぶとしたら、
原因は孤独のテロリズムだ」

誰かが私に囁く、
その声を踏みつぶして

欠けたままの月で言葉を綴っている。

眠れない夜のための詩を、そっとつくります。