サンタさんへ

ずっと、なにかをほしいと思うことが苦手だった。

どうせいつか死ぬのに大きなものを所有しても無意味だと思っていたし、学生の頃はそう長く生きる予定がなかったから貯金欲もなかった。時々委託して書いたシナリオやコンビニバイトで稼いだお金は全部、大切なひとたちと会う時間に費やしていた。死ぬときは所有物をすべて持っていけないのだとしたら、人生をあたためてくれるのは素敵な思い出だけだと思っていた。
ほしいものは、ほしいなあと思っているくらいが丁度よかった。本当に求めてしまったら、手に入らなかったとき苦しいから。私なんか、という枕詞を振りかざし、自分には何かを求める資格なんてないと思っていた。
でも、高校から大学にかけての出会いは私の輪郭をゆっくりと変えた。社会に出た途端、色々なものがほしくなってしまった。柄にもなく求め、傷つき、ああやっぱりだめだ、でも、の繰り返しで、半殺しになった心を手当てする暇もないまま生きてきてしまった。
死にたいばかりだった人生が、死にたくないに転じた瞬間、こわくてこわくて仕方がなくなった。ほしいものをほしいと言うことも、傷つくことも傷つけることも、生きようとすることも、そのためにしなければならないことも。

ねえまだサンタさんはいますか。
いたとして、私は一体、
あなたになにを求めたらいいんでしょうか。

眠れない夜のための詩を、そっとつくります。