この家どうするの?(41)葬儀屋さん今昔・21「安い理由」
直葬。葬儀屋の社長さんが運転する黒い車。わたしと、ものいわぬ父の3人しか乗っていない。気になることを聞いてみた。家族や親戚がいないのをいいことに。
つらくなるかたは、お読みにならないでください。
(1324文字)
お迎え・義母のとき
斎場(火葬場)まで30分。葬儀にかんすることを聞いておきたい。この機会をのがしてはいけない。
「あのぅ……【検察医事務所までの迎え】は、別途費用は要らないのですか?」
「いただきません」
今回は、たまたま検察医事務所の場所が市内で近かったからか。いやまてよ、義母(オットの母)のお迎えは高かった!
回想
約15年まえ。義母が入院していた神戸市内の病院から隣区の自宅まで、17万かかりました。そのとき、わたしはお迎えのため義実家に待機。
近所の御婦人たちも遠巻きに見ていた。
白い車が着いた。担架がやってきた。
白い頭にヘルメット・白衣すがたの男性、なんと小走りで。
「嫌やなぁ……嫌やなぁ……こんな仕事」
わたしは聞こえてしまった。
「ありがとうございます」
むこうからのあいさつはない。
「入らへんわ、早くドア外して」
むかしの家なので引き戸を外さないと入れない。
引き戸を外すと、トテトテと担架を家に入れて、ここでいいですかとテキトウに義母をおろして去っていった。
ええっ、葬儀社の人と違うの?
どこの人?
シルバー人材センター?
研修とかないの?
ひどいわ……。
たぶん下請けで、お手すきのひとがテキトウに担当しているという感じ。たまたまだったのか、うちに男性がいなくて、わたしに偉そうな態度になったのかは不明。男の人がいたらこんなこと言わないだろうね。
とてもオットには言えなかった。これで17万と思うと、泣けるし腹立たしい。
大手の葬儀社だった。
病院には、この会社のパンフレットしかなかったらしい。クレームは出さなかった。これぞ、ほんまの泣き寝入り?
義父もこの葬儀社だったが、そんなことはなかったのに。
回想おわり。
わたしは「お迎えや無言の帰宅」のタクシー代が気になっていた。私の父は孤独死で検察医事務所に旅立ったのだ。それこそ特殊。お迎えの別途費用が発生してもいいと思っていたのに。
こういう下請けの制度があり、中間のいろんな会社が入り込むのか。お花屋さん、お弁当屋さん、いろいろなお店。みんな生活がある。葬儀費用がドンドンかさんでいくのも納得した。
聞いておきたい
とどめに社長さんにたずねた。
「義母のときタクシー代17万でした。そんなにするのですか?」
「…………それぐらいすると思います」
数秒の沈黙。ウソだ。
「ぼくも、彦根〜大阪間のお迎えしましたが、それくらいかかりましたよ」
滋賀県か、長距離やんか。
やっぱり。社長さんは神戸〜大阪間と勘違いしたのだろう。
とどめをさされた。
丨棺桶《カンオケ》の父が誇らしげ。
「ワシは丨無料《ただ》やで」
安いのを自慢する大阪人。
「社長さん、おおきに、ありがとう」
父と娘のハーモニー。
(つづきます)
いつも こころに うるおいを
水分補給もわすれずに
さいごまでお読みくださり
ありがとうございます
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