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ジャングルジムにのぼれなかった

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ジャングルジムに登れなかった。それも登れないのは自分だけだった。小学校の校庭にまあまあ大きなジャングルジムがある。ほとんどの子は低学年でそのジャングルジムに登ることができていた。4年生にもなるとジャングルジムを使って鬼ごっこしたり、速く登る競争をしたり、普通に登るのにも飽きてアクロバティックに登ったりといろんな遊び方を誰もがやっていた。自分だけが登ることすらできなかった。

放課後、人もまばらになった頃、一人でそのジャングルジムに行って少しだけ登ってみることにした。棒をしっかり掴んで、ゆっくりと足を踏み外さないように慎重に。棒を掴んで進むということ自体、幼少期に家の中でしか過ごしたことのない私にはなかなか体力のいる大変なことだった。
それでも、そのひとり練習会をひっそり続けていくうちに、一番安全そうな高い場所まで登れるようになっていた。高い場所は怖かったので、長居はできなかったけど、ちょっとうれしかった。うれしいのもつかの間、次は降りなくてはいけない。これがまた怖い。降りる姿を人に見られるのが嫌だった。へっぴり腰で腕はプルプルしていて何とも情けない。だからいつも人がいないときに練習していた。それでも、たまに誰かがやってくることもある、ジャングルジムはそんな場所だから仕方ないというか当たり前なんだけど。誰か来ると、練習しづらいから嫌だなあと思っていた。

ところが、そこでたまに会うまったく知らない女の子となぜか仲良くなっていた。たしか友だちの友だちだったような?理由はほとんど覚えていない。その子はジャングルジムが苦手な私をバカにすることもなかったし、一緒にできそうな遊びを作りだしては遊んで楽しんだ。どんな遊びだっただろうか?今は何も覚えていない。その子とはそのジャングルジムでしか会わない。数回ぐらい家に行ったような気もするけれど、ほとんどそのジャングルジムだった。

なんでこんなことを思い出したのかというと、さっき夢をみた。たまに似たような夢をみるんだけど、とても高くて足場の悪い場所に自分がいて、車を取りに行きたいけど、とんでもない場所を通らないとそこまで行けなくて、早く降りて帰りたいのに降りるのが怖くて身動きが取れない状態になっている夢。いつもはここでひどい寝汗をかいて起きる。けど、今日は少し違った。最後に降りるのを助けてくれる人があらわれて、一緒に降りてくれた。それでも怖かったからひどい寝汗で起きたけど。

ちょっとでも背伸びして新しいことを始めたりすると、よくこんな夢をみる。きっと原点はあのジャングルジムだ。自分だけがギリギリの体力と精神で必死になって落ちないように掴まっている気がする。他の人たちは苦しいどころか、楽しんでさえいる。自分はいつ落ちてしまうかという恐怖と戦っていて、楽しむ余裕などない。

今日の夢はこれまでと違って、助けてくれる人が出てきたし、怖い夢ではあったけれど、目覚めたときの気分がいつもと違っていた。


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ジャングルジムの高い場所にいつもいないとダメな気がしていた。

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でもジャングルジムの下でも楽しむことはできる。上に登りたいときがあれば、助けを求めたらいい。こんな感じでいろんなことが頭を巡った。夢が何かを伝えて来ようとしている気がした。まだ上手くはまとめられないけれど、自分のなかで何かが変化してきている手応えがあった。

自分の内側から発せられる何かを、掴んだと思ってもすぐに消えてしまいそうなそれらを、1枚でも多く作品にしたい。同じ感性や同じ心象風景を持つ人たちの元に作品を届けたい。と願って日々描いています。またサポートして下さることでいのっちの電話に使える時間も作れるので助かります!