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平泳ぎではない泳ぎ方とは

 娘が公文をやめて、代わりに水泳を習い始めた。夏の間、学校のプールでは進級テストがあるが、その時にみんなの前でカッコよく泳ぎ、級の位も上げたかったようだ。

 去年までの娘の位は青線4本で「息つぎなしで10メートル泳げる」というものだった。その上の位は「どんな泳ぎでもいいから25メートル泳ぐ」、その上は「クロールか平泳ぎで25メートル泳ぐ」ということのようだった。

 去年の夏の終わりの試験では、娘は「どんな泳ぎでもいいから25メートル泳ぐ」に挑戦したが、途中で立ってしまったので、今年は何としても25メートル泳ぎたかったようだ。でも、息つぎができなければ25メートル泳ぐのは困難だ。

 それで、夏休みに旅行した時、私はホテルのプールで彼女に平泳ぎを教えてあげた。私はクロールはできないが、平泳ぎには自信があるのだ。プールのふちにつかまらせ、足の形や手の動かし方を教えた。といっても、うまく教えられないので、娘はマスターできない。それでも、何とか息つぎができるようになった。はたから見ると、手足をバタバタさせて溺れているようにしか見えないが、私も面倒くさくなってきたので、「できてる、できてる」と言って練習を終わりにした。

 進級試験は夏休みの終わりにあった。家を出る前に緊張していたので、「どんな泳ぎでもいいって書いてあるんだから、何が何でも、どんなに時間がかかってもいいから足をつくな」と言って送り出した。

 果たして、娘は25メートルを泳ぎ切り、スイミングキャップに付ける黄色い線1本を獲得した。ただし、先生からは「今度からはちゃんと泳ぎなさい」と注意されたそう。よっぽどめちゃめちゃな泳ぎだったのだろう。泳ぎ終えるのにも時間がかかったようだ。先生もずいぶん忍耐が要ったに違いない。

 2学期に入って始まった授業でも進級試験があり、今度は娘は「平泳ぎかクロールで25メートル」に平泳ぎで挑戦したが、不合格になったそうだ。先生に「それは平泳ぎではありません」と言われたとか……。

 娘によると、友達のみくちゃんも自己流クロールで25メートル泳いだが、却下されたそうだ。私が「みくちゃんはどんな泳ぎだった?」と聞くと、娘は「すごかった……。浮かんでこないかと思っちゃった……」と答えていた。

 スイミングクラブの練習は8月からで、しかもクラスを決めるための体験入学では娘は自分をアピールできなかったらしく、幼児クラスの「けのびができる」というレベルからスタートした。このため、スイミングクラブに入った成果は、今年の学校の進級試験には生かせなかったようだ。それでも、先々週のスイミングクラブの進級試験では合格し、ようやく「けのび」から「息つぎなしのクロール」にコマを進めた。来年の夏までにどうなっているのか、今から楽しみだ。

2010年10月10日

☆2009年から2012年まで子ども向けの新聞につづった連載を改編したものです。

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