影咲シオリが創作論を語るってよ   第2回 小説を生み出す三段階/企画編

【1】小説を生み出す三段階

私は小説を生み出すプロセスを3つの段階に分けて考えています。

  ステップ:1 企画   (テーマ、コンセプト、モチーフ)

  ステップ:2 設計   (ストーリー、プロット、キャラクター)

  ステップ:3 執筆   (文章、修辞法、構成)

【2】 企画 (何を書くか)

 企画段階では【テーマ】、【コンセプト】、【モチーフ】を決定します。この3要素は作品のコアとなる部分で、これらがしっかりと作品を支配していること(ブレていない)ことが良い作品を作る上で重要です。

【3】テーマ

 定義:作者が読者に伝えたいこと(作者の提示した問いと答え)

①どんな作品にもテーマはある(読者はテーマを理解しようとする)

 例:桃太郎(作者が固定されない伝承なので厳密には小説ではないですが、ここでは、小説「桃太郎」と仮定しましょう)

桃太郎は英雄譚です。つまりテーマとしては「英雄とはかくあるべき」といったところでしょうか。では、桃太郎の作者が求める英雄とは?私は大きく3つあると思います

 1:部下に恵まれる(サル・キジ・イヌの三匹のお供)

 2:孝行である(鬼の宝で、お爺さんとお婆さんに恩返し)

 3:大衆から支持される(鬼を退治し、故郷に凱旋)

これが桃太郎という作品の問いと答えです。

 答えの部分が違ってくれば、また違う物語が生まれます(孤独な英雄/結婚する英雄/大衆に疎まれる英雄)。

②テーマは作品を支配しなければならない

 テーマは作品の王です。何ものもテーマに嫌われてはいけません。コンセプトも、モチーフも、ストーリーも、キャラクターも、文体も。構成もテーマにふさわしいか?という観点から決定されなければいけません。テーマは常にオーディションの審査員長なのです。

③テーマに良し悪しはない。作者の理解が浅いか深いかがあるだけである。(作者自身も、テーマを理解することは簡単ではない)

 難しいテーマが良いテーマではありません。流行りのテーマを書けば、売れるかもしれませんが、やはり作品の良し悪しとは無関係です。ただ、テーマをきちんと理解することで作品が良いものになるのは間違いありません。

 既存のテーマに沿った作品を書く場合、「先人の出した答え」や「それに対する反対論、批判」などを理解した上で、作品を書くことが作品の質を高めることになります。

テーマは難しい題材ですので、今後もテーマ論としてより深く扱っていきたいと思います。

【4】コンセプト

 定義:その小説が一目で面白い、独創的だといえる根拠となるアイデア

※コンセプトは集客と興味の持続が役割です。

①コンセプトは単純明快であるべき(一行で説明できる)

例:『らんま1/2』作 高橋留美子 小学館刊の漫画の場合      「水をかぶると女になってしまう男子高校生」です。          単純明快でかつ、直感的に面白そうと思います。

※ハイ・コンセプトとはコンセプトが強い作品のことを言います。ハリウッド映画では特にハイコンセプトの作品が好まれます。「なろう小説」も、ハイ・コンセプトといえるかもしれません(コンセプトを生かせていない単なる「出オチ」で終わってる作品も多いですけど)

 逆にコンセプトが強くない名作もあります

例:『鬼滅の刃』作 吾峠呼世晴 集英社刊の漫画の場合 

コンセプトは、しいて言えば「鬼になった妹に口枷をつけ箱に入れて一緒に旅をする」あるいは「少年漫画としてはシビアな世界観」あるいは「画風」といったところでしょうか(ちなみにテーマは「人のつながり」であり、り、それはストーリーやキャラクタに色濃く反映されています)。

映画や小説では、コンセプトに頼らず『文章で読ませる』、『映像でみせる』作品というものがあります。『あらすじにするとつまらない』といわれることもありますが、作家としては一つの理想でしょう。

【5】モチーフ

 定義:類型化された物語要素

①モチーフは無限にある

時代背景:戦国もの、幕末もの、古代ローマ、第二次世界大戦、大正ロマン

人間関係:父と子、兄と妹、三角関係、転校生、幼馴染

舞台:学園もの、お仕事もの、法廷もの

作品類型:密室劇、ロードムービー、対話劇

ジャンル:ミステリ、ラブコメ

過去の名作:タイムトラベル、ロミオとジュリエット、王子と乞食

②モチーフは、作者の想像力の起爆剤

モチーフだけで小説は書けません。ただ、作者の想像力をかき立てる起爆剤になります。同じテーマとコンセプトでも、モチーフを変えることでまったく違う作品になることもあります。

③モチーフの入れ替えによって新しい作品を生んでみる

 時代背景の入れ替えは定石の一つ:ロミオとジュリエット(ルネサンス期)→ウエストサイド物語(現代)

 性別の入れ替え、異性間の物語を同性間にあるいはその逆

【6】小説を書き始めるキッカケ


①普段から「テーマ」や「コンセプト」を用意しておきましょう。

②相性のいい「テーマ」と「コンセプト」の組み合わせを考えます。

③「テーマ」×「コンセプト」の組み合わせが決まれば、おおまかな「ストーリー」を考えます

⑤「テーマ」×「コンセプト」×「ストーリー」にふさわしい「モチーフ」を選択します

⑥納得いく組み合わせができれば、次の段階へGO!





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