命の移し替え
菊花の季節。
鮮やかなこの色を見ると秋が来たことを実感する。
切花ならば手折ることさえ躊躇われるというのに、その切花よりも可憐で柔らかなこの花弁を指先でむしり取るとき、私はいまでも胸がチクンっとする。
それでも季節の変わり目の身体に、優しく力を貸してくれることを信じてお湯に浸す。
現代では食べる人も料理をする人も少なくなってきているけれど、エディブルフラワーなんて言葉が生まれる遥か昔から、郷土料理として当たり前に共にあった。
厳しかった母に仕込まれたおかげでずっと食べ続けてこられた事を有り難く思っている。
今年も甘くほろ苦い味と共に、命の移し替えをいただく晩秋の候。
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