鉄道落語「ドクターイエロー」

鉄道落語「ドクターイエロー」
 
(T海道新幹線事業本部・名古屋運輸所・所長室)
 
田所「そうですか、ハヤミさんのようなベテランの運転士のかたに辞められると、こちらとしても寂しいものがあります」

速水「いやいやそう言わないでくれ、会社の作った早期退職制度だ、退職金も割増しになるしな、コロナ渦でどの会社も人件費がかさんでいる、私のようなベテランの運転士が去ったほうが若いもんも育ちやすいだろう」

田所「そう言わないで下さいよ、いやでもほんとハヤミさんにはお世話になりました」

速水「いや~まったくだな、今でも思い出すよ田所くん、君がまだ見習いで運転士だった頃、懐中時計もバッスイもカンバンもシノビジョウも全部新大阪の詰め所に忘れたときは、私は随分と背筋が凍る思いがしたよ」

田所「いやいやいや~それは言わないでください」

速水「あのときは何とかバレなかったけどな、いやいいさ、その田所君も今や出世して名古屋運輸所の所長様だ。私もゴジュウゴだ、第2の人生歩んでいこうと思うよ」

田所「それはいいですけど、ほんとハヤミさん、これからどうされるんですか」

速水「どうされるつったってな、趣味という趣味もないしなあ、体だけが丈夫なのが取り柄だけどな」

田所「体が丈夫?じゃあどうです?献血ルームとか行かれてみては」速水「献血か?」

田所「ええ、ここから見えるでしょ、あの名古屋駅のゲートタワーに献血ルームがあるんですよ、最近じゃ献血の方も人手が少ないんだってきいたことがありますよ、55歳ならまだ大丈夫でしょうし…あ、あそこが日本一高い献血ルームだそうです」
 

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