職人文化人類学は響くのか!?~大学生に聞いてみた編~
20210324 ミドリヘッド・ワタナベ
[過去の記事はコチラ]
▷職人文化人類学の旗揚げ
▷ブレイクスルー前夜。〜職人文化人類学になぜ行き着いたのか〜
▷職人文化人類学は、何故、文化人類学なのか!〜過去から未来へ一貫した何かを見つけるため〜
▷弟子入りは職人文化人類学のキモ?!〜アクションリサーチでDNA抽出〜
これまでの記事で職人文化人類学が目指す世界を記事で書いてきました。
しかし、これは仕立屋と職人の中で組んだアイデアであって、実際にこの世の中で必要とされるのかはわかりません。
「職人文化人類学を使いたいと思う人は誰なのか?」
「職人文化人類学にどんな価値を受け取ってくれるか?」
共感してくれる人、共感してくれない人を認識するためにインタビューをし、使えるものへとブラッシュアップしていきます。モリモリ。
インタビュー調査を学生へ決行する理由
以前記事でも書きました、【どうやってプレーヤーを増やすか、が課題】 と。
(前回の記事より引用)
仕立屋が増殖していくには…と頭を悩ませました。 …そうだ!体系化してみんなが使えるようにしよう!このやり方はきっと各地で必要だ!若者よ、集まれ!新しい学問を共につくろうぞ!
カンタンにいうとこういう話です。セオリーというのは、人が理解や実践をしようとした時に必要なガイドブックのようなものだと思います。これをつくって、そして各地で応用できるようにすれば、自ずと拡がっていく…!という道筋が見えました。
そして、学生と共に進んで行った先には、
学生や地域に経験と方法論が蓄積される!
1. ライブプロジェクトで方法論を実践できる
2. 学生が伝統産業に介入し地域での仕事へつながる
3. 学生のアイデアを活かし、新たな施策が生まれ、それを実行できる土壌ができる
若い層が伝統工芸/伝統産業に触れる機会も増え、地域の新陳代謝が促進される。そこから、次の世代に文化が続いて行き、継続した関係がつくれるのはないか!
産地は日本各地にあり、大学も日本全国各地にある!!!!!
という目論見なのであります。
なぜ今回のインタビュー対象が山本くんなのか?
滋賀の眠れる獅子(否、もう起きているか)、山本龍成くん。
同志社大学神学部の2年生です。
そんな彼は、IT技術を中小企業に導入する合同会社に所属しつつ、自分の興味のあることをドンドンプロジェクト化して行くスーパー大学生です。
最近では、「はじめましてコンドームです」という性に対して学ぶイベントを行う団体を立ち上げたそうです。商品開発も進めているそう。
すごい発信力ですな。
そんな山本くんは、こけしとの出会いを求め、仙台にまで行っちゃうくらい、なによりもこけしが好き。
歴史や伝統文化、宗教や、民俗学に強い興味があり、現在大学にて神学を専攻しています。
伝統工芸好きで職人の事もとても興味を持っている、そして、興味のあることはドンドン行動に移していく山本くんに職人文化人類学の話をしたら、どういう反応をしてくれるのか、となった次第です。
山本くんに何を聞きたかったのか?
何を山本くんに聞きに行ったかというと、
多くの学生と交流している山本くんの交友関係から、職人文化人類学はどんな人たちが参加しそうか。
学生が参加する事業を企画、運営する山本くんの経験から、参加したいと思うモチベーションをつくるにはどうすればいいのか。
こけしライフと大学生ライフを過ごす山本くんの視点で、職人文化人類学の推しポイントはどこだと思うか。
です。
学生を巻き込んでいこう!と言っているのに当の学生が職人文化人類学にどう反応してもらえるのか….ドキドキですね。
それでは、早速本題にいきましょう!!
山本くんからのアンサーソング
職人文化人類学は学生にササルのか!
~職人文化人類学はどんな人たちが参加してくれると思う?~
故郷を持たない人がいいのではないでしょうか?
知人で、地域で子育て支援をやっている人は、帰国子女です。
自分も、もともと転勤族で日本の文化を知らないことにコンプレックスがありました。
小さい頃から引っ越しが多く地元という認識がなく、引っ越した先のお祭りはお客さんとして参加していましたんです。
自分の地元がないからこそ、地域のことに興味があり、自分の故郷を作ろうと思っているのかもしれないです。
それは好きとは違う、アイデンティティーであって、アイデンティティーへの渇望だと思うんです。
職人文化人類学が自分事になるのか!
~学生が参加したいと思うモチベーションをつくるにはどうすればいい?~
カンボジアに学生と一緒に行くツアーを主催しています。
これは、参加する人たちもどんどん増えていくし、参加した人ははならず翌年も参加します。
このプログラムでは、現地に行くまで何をするかわからないという、余白をたくさん設定しています。
最初に、カンボジアの地元の人たちとの接点を作り、地元のことを学ぶ機会を作る。その後、何の予定もない日を作ることによって、現地で学んだ知識から「自分たちの経験」を自らつくりだします。
そうして、誰かが作った思い出ではなく、自分がつくった自分だけのストーリーがカンボジアでつくられていくんです。
プレイヤーの視点でジャッジ!
~職人文化人類学の推しポイントはどこだと思う?~
これまでの自分の経験から、職人文化人類学は翻訳者として大事な役割を担うと思うんです。
そこへ行く側と受け入れる側の間に翻訳者が必要だと感じています。
ただ言葉を翻訳するのではなく『熱量の翻訳者』です。
翻訳は、気持ちも言語も色々と伝えることができなければ、想いが一方通行になってしまう。
これは、コミュニティーマネージメントという領域になるのかもしれません。
しかし、翻訳者がいても失敗する場合もあるんです。
プロジェクトが進み成熟してくると、翻訳者がいなくてもうまく回るようになってくる。
しかし、翻訳者の人は自分が必要とされたいと感じ、自分を介することを強要してくる場合があるあったんです。
地域に根ざしたほど主張が強い翻訳者が多いとも感じています。
現地(カンボジア)_の人たちとはどうやって関係を築いていったのかを質問したら、こんな話もしてくれました…
カンボジアの経験からわかったことは、人間はどこかへ行くと、「自分はそこで何かしなくては」と目的を持とうとするけれども、目的を持っていかなかないことです。
例えば、研究員だったら「研究が終わってしまいえば、もう来ないでしょ」と思われる。
そこへ行く側は、そこで何かしら感銘を受ければそこの場所、そこの人たちを好きになれるけれど、受け入れる側の人たちの気持ちの整理をどうするかはとても大事なことだと思うんです。
だから、行ってから何か「ふっ」と気付く方がいい。
そして、それはfor youではなくfor usでなければだめだと思っています。
↑ 山本くんがカンボジアに行った時の写真
インタビューの結果から考察
こんなに自分がやってきたことを客観的に分析できる能力を持っている山本くん…おそるべし…
〜職人文化人類学はどんな人たちが参加しそうか。〜
自分の地元ってその土地から離れて見ないと、どう感じているのか、どう感じるようになるのかはわからないものです。
私も自分には地元持ってないと思っています。(実家と地元は別の認識です。)埼玉生まれの私は大学生の頃、長期休みに入ると友人が地元に帰るんだーといって新幹線で帰るのを羨ましく思っていました。
だから、福島県郡山市のデコ屋敷本家大黒屋の職人たちに言ってもらった「おかえり」が忘れられず、仕立屋と職人を結成し、続けているのだと思います。
私のように、地元欲を持つ人は以外と多いのかもしれません。
そして地元が一つではなく、たくさんあってもいいのだと思います。
〜参加したいと思うモチベーションをつく理、維持するにはどうすればいいのか。〜
地域プロジェクトでは、外部からプロデューサーを召喚した場合は、契約期間が決まっており、その期間が終わってしまうと、プロジェクトも終わってしまうという事が起こっていました。
そのため、自発的な関係まで発展することが、プロジェクト終了後の理想的な形だと考えます。
自分事化になる設計が重要ではあるけれど、そこの関係にまでたどり着くにはちょいと時間もかかりそうだな、とも感じております。
〜職人文化人類学の推しポイントはどこだと思うか。〜
コミュニケーションが誰でもうまく円滑に取れるわけではないと思っています。
なんなら私は人見知りです。人見知りすぎて、初めての土地で始めましての人と話すのはスーパーミラクル緊張します。そして、地域によって使う言葉のニュアンスが違う事も感じてきました。
その壁を取り払ってくれる存在がいると言うことは、プロジェクトを決行しやすく、齟齬が生じず、円滑に進むことができると言うことだと思います。
何よりも、相談できる相手がいるって心強いですよね。
その心強い存在としての職人文化人類学。
最後に
「for youではなくfor usでなければだめだと思っています。」と、話してくれたように、今回山本くんは、そこの土地へ飛び込む側のご意見を聞くことができました。
行く側と受け入れる側のバランスを調整するために職人文化人類学が使えると言う視点。
そして、参加者の自分事化を目指す仕組み。
ふむふむ。
インタビューに協力していたいただいた山本くん、
そして、場所を提供してくださった SNACK-HYPHEN- の深尾さん
ご協力、誠にありがとうございました。
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まだまだ職人文化人類学は未完成であり、仮説の段階であります。(旗揚げイェーイって言ってたけど)
今回のインタビューで学生は職人文化人類学を面白い、といってもらえたけれども、職人の立場や現場から職人文化人類学が必要なのか…?職人文化人類学は100年後の文化をつくることが出来るのか…?
まだわかりません。わからないことは、職人に話を聞いてみましょう!!
と、いうこと、次回は越前和紙のバリバリのホープ山伝製紙株式会社の三代目山口真史ことマサシに突撃インタビューです!
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