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映画『武器人間』で大満足の”悪酔い”をしました。

 この映画のレビューなんてググれば山ほどあるので今さら感はあるのですが、鑑賞後すぐに書きたくなったのですでに深夜ですがここに書くことにします。というか、そんな映画だからすでに山ほどレビューが存在してるんですよね。その山に石が一粒増えたというわけです。
 
 最初になんですが、自分は事前知識ほぼゼロで観ました。そのおかげで強烈なデザインの「武器人間」を視覚に叩き込まれましたので良かったです。なのでYouTubeに上がっている予告映像はこちらに貼りません。ぜひ視聴後にご覧ください(最後びっくりするので)。公式で描かれているくらいのあらすじに関しては事前に知ってもまったく問題ないと思われますので簡単に言及しますと、第二次大戦末期の1945年、ソ連の偵察隊がドイツの占領地に潜入し、そこで行われている実験を目の当たりにする……というもの。

悪酔いポイント①

 手法としておもしろいのが、全編が偵察隊に随行する記録映画という体裁での映像ということ。自分は観ていないんですが『クローバーフィールド』と同じですかね。プロパガンダの記録映画を撮ってるんです。なにが起こってるかわかりにくかったり画面外の見えない部分があったりするのですが、それらをうまくホラーとしての利点としています。また、カメラを誰が持つか、どう使うかという演出も冴えており、再現された手ブレやフィルム交換も相まって臨場感はたっぷりです。自分はFPSゲームやってたので問題なかったですが、もしかしたら人によっては酔うかも。

悪酔いポイント②

 容赦なく飛び出る血液!はみ出る内蔵!!こぼれる脳みそ!!!
 スプラッター要素てんこ盛りです。これに関しては流石に平気な人だけどうぞ……ってことですね。一応この映画公式にはアクションホラーというジャンルになっているのですが、スプラッタースリラーと評する方もおり、それも正解だと思います。実はタイトルの武器人間が本格的に出てくるのは30分ほど経ってからなのですが(スタッフロールを削ると本編映像80分くらいなのに)グロい死体だけは割と早めに出てきます。慣れておきましょう。さもないと後半でオエップ……となるかも。

悪酔いポイント③

 この映画の最大の魅力。それはタイトルの武器人間たち。最初に書きましたが、この武器人間たちがとにかく強烈なデザインでとにかく個性的。なに食ってたらこんなの思いつくんだよ、というビジュアルばかりで、なにかの悪い夢を見ているみたいでした。武器人間というだけあって兵器感があるのかと思いきや、そこにリアリティは割かずにむしろマッド・サイエンティストが好き勝手にやった結果という印象です。兵器というよりは怪人に近い。そもそも基本的に動きがノロい。なのでツッコもうと思えばいくらでもツッコめるし、脳がバグって襲いかかる異形に笑っちゃったシーンも少なくありません。そんなヤツら惜しげもなくバンバン出てくる。情緒ぶっ壊れる。いや、これはクラクラしますよ。実際自分は酔っちゃって寝る気にならずに深夜にこんなの書いてますからね。

悪酔いポイント④

 この映画の主役は間違いなく武器人間たちですが、人物たちも別に没個性というわけではありません。むしろしっかりキャラ立ちしていてストーリーを作っていました。ただまあ……赤軍なのでというと失礼ですが、略奪なんて当たり前、異常事態が起こっているのに平然と強姦に及ぼうとしたり、窮地にあって統率もとれないし、そもそも彼ら兵士たちがちょっとややこしい境遇に置かれていることが中盤で明らかになります。なかには冷静で感じの良いヤツもいるんですが……武器人間たちにはそんなの関係なしで、もちろんひどい目にあいます。ここに倫理なんてもんは存在しません。戦争だからではありません。単純に、人間は適者生存の最下層なんです。
 中でも強烈なキャラクターが、武器人間を作った博士です。ぶっちゃけその異常な精神性は武器人間たちの強烈な外見よりもイカレていると言っていいでしょう。武器人間たちを見てこれで戦争に勝つ気あるのか?!と思ってしまいましたが、実際この博士は戦争に関しては割とどうでもよく、完全に狂った倫理観のもとで研究と実験を繰り返しています。もう本当にすさまじい。悪役とも呼びづらい独特な魅力があるのですが、彼のぶっとんだキャラクター性は観客の精神を揺さぶってくること必定です。いやー、これにもクラクラしました。結局のところ、人間が一番恐ろしい……なんてのは散々使われているテーマですが、それを普通にやってくるのはまた話が違ってくるだろ。

悪酔いポイント⑤

 オチ。いや、なにも言えないんですが、ご覧いただきたいです。これどんな感情になるのが正解なんですか。いや、たしかに意外だしびっくりはしたけど……。スタッフロールといっしょに流れるBGMも相まって、完全に置いてきぼりくらいました。こう書くと批判に聞こえるかもしれませんが、褒めてます。どこまでも力技ですが、キレイに締めてるんですよね……。
 本当に最後まで観る人間をぶんぶんと振り回す映画でした。観終えて現実世界に着地しても、足元がおぼつきません。しかし、大満足です。今夜は悪い夢を観るかもしれませんが、そうなったとしても、おそらくそう悪い気分でもないでしょう。
 おやすみなさい。


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