【獣医師監修】犬のワクチン接種の時期と種類
犬のワクチンの種類
犬のワクチンは大きく分けて2種類存在します
混合ワクチン(6種 or 8/10種)
狂犬病ワクチン
どちらのワクチンもどの動物病院でも打ってもらえるような一般的な注射です
以下、それぞれに関して詳しく述べていきます
混合ワクチン
犬の6種混合ワクチンで予防が期待できる病気には以下のものがあります
ジステンパーウイルス
アデノウイルス2型
伝染性肝炎(アデノウイルス1型)
パルボウイルス
パラインフルエンザウイルス
コロナウイルス
これらは全て犬同士でしか感染しない病気であり、ペットホテルやドッグランなどを利用する際には
ワクチン接種証明書ないし、抗体価検査の結果を提示される場合があります
中でも、ジステンパーウイルスとパルボウイルスは致死率が高い病気であるために
予防医療がとても大事な疾患です
また、犬の8種 / 10種混合ワクチンも存在しており
基本的には前述の6種ワクチンに加えて、レプトスピラ感染症を予防できるものになります
8種 :カニコーラ、イクテロヘモラジー
10種:グリッポチフォーサ、ポモナ
レプトスピラに関しては他稿にて詳しく述べているのでご参照ください
レプトスピラはヒトにも感染し(人獣共通感染症)、
ネズミから移って感染する病気という点で6種混合ワクチンで予防できる病気とは違います
狂犬病ワクチン
狂犬病という病気は皆さんご存知かと思います
日本においては1957年以降、狂犬病の発生はなく、
日本、英国、スカンジナビア半島の国々など一部の地域が清浄国であり
その他全世界に分布しています(外国に行ったらむやみに犬に触らない方がいいですね、噛まれたら大変)
狂犬病は犬だけの病気ではなく、ヒトを含めた全ての哺乳類が感染し
怖いことに発病すると治療方法がないのです
致死率はほぼ100%でかかったらみんな死にます
こんなに医療が発達した現代においても
毎年5万人 + 10万頭のヒトと動物が死んでいます(インドでは毎年3万人死亡)
そんな危険な病気を予防するために
日本では厚生労働省が狂犬病予防法を定めています
その法律では3カ月齢以上の全ての犬に対し、年1回のワクチン接種が義務付けられています
一昔前には各自治体で集合注射をしていて
登録とワクチン接種を一緒に行うこともできました
動物病院で接種する際には多少の差はありますが、ワクチン費用は2,000~4,000円ほどです
なんで費用にばらつきがあるかというと、獣医療にはヒトの保険制度のようなものはなく自由診療です
自由診療といえど、2000-4000円程度であるのは、その地域の獣医師会で獣医さんたちはみんなで口約束をしているからなんですね
また、犬を連れて外国に行く際にはより複雑な話になってきます
主にアメリカの多くの州では、入国と出国の際に狂犬病のワクチン接種証明が必要になります
ワクチン2回接種、抗体価証明書、マイクロチップ挿入(これはなぜかワクチン接種後に入れることが指示されている)
複雑ですねー
他の国に関しては筆者は分かりません笑
わからないことがあれば動物病院の先生に尋ねましょう
ワクチン接種はしなくても良いの?
これまでのところでワクチンの種類について述べてきましたが
接種はした方がいいのでしょうか?
しなくても許されるのでしょうか?
なんだかワクチンって副作用も怖いなー
って思いますよね
混合ワクチンの考え方
任意であるので義務ではない
しかし、打たない場合はドッグランやペットホテルなどの施設が使用できなくなる可能性がある
また、ジステンパー、パルボといった致死率の高い病気にかかる可能性がある
予防できる病気は予防したほうがいいとは思います
昔はワクチンなんてなかったんですから
今は少なくなってきたそれらウイルス関連疾患も、みんなが集団免疫をしてきたから少なくなってきたんですから
お金もせいぜい数千円だし
まあ家から全く出ないし、他の犬に触れ合わないし、上記のリスクについては承知ですという飼い主さんは打たなくてもいいでしょうね
レプトスピラに関しては
ネズミに触れ合うような自然たっぷりのところに(キャンプとか)
旅行を行く場合には接種を考えたほうがいいと思います
基本的に関東在住以外は接種したほうがいいです
関東でもちらほら感染が報告されているので打ったほうが安全であることは間違い無いです
狂犬病ワクチンの考え方
法律で決まっているので打たなくてはいけません
ちなみに厚生労働省が発表している狂犬病ワクチン接種率は約7割程度です
みんなちゃんと打ちましょうね
罰則は20万円以下の罰金と記されています
ワクチン接種の時期
ワンちゃんを飼い始めた飼い主さんはいつワクチンを打てばいいのかわからないですよね
基本的には動物病院の獣医さんに聞いてもらうのが確実ですが
子犬か成犬かで少し変わってきます
子犬の場合
子犬の場合、ペットショップなどからおうちに迎えることが多いと思います
ペットショップの場合には、もう既に何回か混合ワクチン接種が終わっていることがほとんどです
基本的に、生後間も無くは移行抗体が母体から受け継がれており、
その状態でワクチン接種をしても、免疫誘導がうまくいきません
そのため、生後6-8週間程度で一回目、その後3-4週間ごとに追加でワクチンを接種し
初年度は計3回混合ワクチンを接種します
翌年からは毎年、混合ワクチン接種をしたほうが良いでしょう
MSAVAワクチンガイドラインでは3年に1回程度の頻度でコアワクチンの接種が推奨されていますが、
あくまでアメリカの会社の作ったワクチンなので、
そのまま日本に外挿するのは危険だと考えられます
したがって、日本では毎年の接種がどの動物病院でも一般的です
狂犬病ワクチンは義務なので打ちましょう
おかしな話ですが、狂犬病ワクチンは4-6月に接種することが、法律に明記されているために
例えば子犬を飼い始めたのが1月とかで、2-3月に狂犬病ワクチンを接種したとしても
すぐにきてしまう4月とかにもう一回狂犬病のワクチンは打たなくてはいけません
これらは混合ワクチン接種や他との兼ね合いで、うまくできるので、分かりづらい時は獣医さんに相談しましょう
成犬の場合
成犬の場合は混合及び狂犬病ワクチンを接種を毎年実施すれば問題ありません
子犬は移行抗体の関係で初年度は複雑なワクチンプロトコルですが
成犬は関係ありませんね
抗体価検査
ワクチン副作用などのを危惧し、接種したく無い場合には、抗体価検査というものもあります
これは血液検査をして、ウイルスに対する抗体が体内にどれくらいあるかという検査です
検査自体はコアワクチンとされている
ジステンパー、パルボ、アデノウイルス2型の検査になります
筆者はこれまで色々なワンちゃんの抗体価検査をしてきましたが
抗体価に関しては千差万別でした
打っても一年で抗体価が下がってしまう子もいれば
一回打ったら6年くらいもった子もいました
全然学術的な裏付けはありませんが、一度ワクチンアレルギーを起こしてしまった
ミニチュア・ダックスフンドのワンちゃんは6-8年くらい抗体価が持続していたので
強い副作用は抗体もたくさん作ってくれるのかなーと考えていました
ワクチンの副作用
ワクチンは残念ながら副作用が起きてしまうこともあります
そういう筆者も、COVID-19のワクチンを打った時は1週間くらい体調不良になってしまいました
ワンちゃんのワクチンもアレルギーはあります
多いのは顔が腫れてしまったりだとか、嘔吐下痢などの消化器症状です
これらは打ってから30分以上経ってから起きることが多く、
すぐに打った病院に戻って処置を受ければまず大事には至りません
しかし、怖いのはアナフィラキシーショックになってしまう急性アレルギー反応です
これは打ってから30分以内に起きてしまい
ぐったり、呼吸が早い、失禁、脱糞、意識消失などの怖い症状が出てしまうことがあります
ではワクチン接種はやっぱり受けないほうがいいのか?
日本における混合ワクチン接種におけるアナフィラキシーショックの発生率はは0.07%です(K Miyaji et al. 2012)
これを高いととるか、低いととるかは飼い主さん次第だと思います
1万頭打って7頭なので稀ですよね
また、初回のワクチン接種でもそのショックにはなり得るので、初回だからといって安全ということではありません
また、犬種別で見ると、ミニチュア・ダックスフンドが全体の36%を占めているとのことで、少し多いのかもしれません(K Ohmori et al. 2005)
最後に
一番重要なのは飼い主さんがきちんと考えて愛犬を守ることです
打って何か起こってしまって獣医さんのせいにするのはお門違い
納得できていないなら、それを解消できるまで獣医さんに質問してしっかり理解しましょう
たくさん聞かれて嫌な顔をするような獣医さんはいるかもしれませんが、そんな病院は変えましょう
皆さんの愛犬との幸せな時間が少しでも多くなることを祈っています
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