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儚い羊たちの祝宴 ブラックな自分を知りたい

儚い羊たちの祝宴を読みました。
儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫) | 米澤 穂信 |本 | 通販 | Amazon
すごい本だという噂には聞いていましたが、なかなか読む機会がなくやっと目を通すことができました。
短編集になってますが、どの話にも「バベルの会」という大学の読書サークルが出てくることでうっすらと繋がりがあります。

この最後の短編「儚い羊たちの晩餐」が好きすぎて何度も読み返しました。
「バベルの会」を除名された鞠絵が主人公。
彼女の書いた日記で物語が進みます。
彼女の父親がなんというか、絵に描いたような「悪徳成金」で、教養はないけど見栄のためならなんでもするというような人物です。
そんな父親が厨娘(ちゅうじょう)という宴会の料理を作る専門の女性、夏を雇ったところから話が始まります。

まだ20歳くらいの夏さんのかっこいいこと。
どこか人間らしい感情は排除したかのような冷たくも誇り高い態度、主人相手にも媚びることもなく、料理の腕は凄腕。
宴会の後は驚くような量の材料費が請求されます。
その意味の恐ろしさは後でじわじわ来ます。

父親の見栄と「バベルの会」を追い出された鞠絵の思惑が絡み合い、夏を使っていつの間にか人間が決して踏み入れることの許されない「禁断の領域」へと踏みだします。
唯一の常識人、夏が連れている見習いの文ちゃん、まだ10歳くらい?がこの話の癒しです。でも、他の人が狂気すぎるからかわいそう。

最後の結末のおぞましさと言ったら!
この話、好きで読んでるという私もちょっと病んでるのかもしれません。
なんでこのグロテスクな結末にこんなにワクワクするのでしょうか。
自分の中にあるブラックな感情を覗いてみたい人にはうってつけの小説です。


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