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Water a.k.a マリヲ -Interview over the FREESTYLUS-

FREESTYLUSは、その土地にゆかりのあるラッパーに街中でキャリーバックを引いてもらい、カタカタというリズムや街の音に合わせてラップを披露するというパフォーマンスを起点に、時代性や場所性、そこに生きる人々と社会との関係性をストリートの視点から浮き彫りにしていくプロジェクトです。
今回は2022年3月に大阪・淡路でプレイしてもらったWater a.k.a マリヲさんのインタビューをお贈りします。
奇しくもこのパフォーマンスが行われた年末に彼が淡路で勤めていたサイクルショップ"タラウマラ"を辞めることが決まり、不変の事物はないんだと改めて思い知らされ打ち拉がれると同時に、その先の未来にも思いを馳せずにはいられません。
そのきっかけとして本インタビューとパフォーマンスがいつでも立ち返られる痕跡の一つとして、青タンのようにじわりじわり効いてくることを切に願います。


FREESTYLUS

──今回のプロジェクトに参加してみての感想や思うところがあれば聞かせてください。

そうですね、コンセプトがすごく面白いと思って、自分が針になると言うか、そういう体験ていうのはあんまりなくて、思うままというか、なんて言うんですかね、誰かを想定して音楽とか歌詞とかって書くことが多いんですけど、そういうのが全く、全くない訳じゃないですけど、そういうのがあんまり考えなくていいっていうのが一番良くて、出来上がったものが良かったなーっていう風に思えたのはなんかそういうところにあるのかなーと思いました。自分語りでは多分到底たどり着けないとこやなーとは思いましたね。

──このプロジェクトに刺激を受けて表現できた部分が結構大きかったですか?

そうですねーなんか、気持ちいいっていうか、音楽的に気持ちいいみたいなのはあると思うんですけど、言葉と音楽というか、視覚も入ってくんのがすごい良かったと思います。通行人だったりとか、スーツケースの音とかハプニングとか、そういうのとかも全部音楽になってるなーっていうのが、それこそなんか環境音とか、よく言う小説とか音楽とか詩とかに出てくる街の音っていうのに一番近づいたのかなーとは思いますね。


パフォーマンス

──今回は言葉を先に書いてそれを読んでいくようなパフォーマンスだったと思うんですけど、どういう経緯でつくっていったのかとか、そのあたりも聞けたらと思うんですがどうしょうか?

FREESTYLUSっていう名前なので、苦手なフリースタイルに挑戦しようと思ったんですけど、自動販売機でビールを買っていろいろこうやってみたんですけど、やっぱりちゃうなと思って、淡路の駅前にマクドナルドがあるんですけど、その二階から見えるのだけで、そこで書いたやつだけでやったんですけど、そこにおる自分が、動き的には止まってる自分が書いたやつが街で歩いてやるとこうしっくりくるっていうのはやっぱ街が書かせてくれたみたいな感じはありますねー、あの歌詞とかは。本当を言えばフリースタイルでやりたかったんですけど、やっぱちょっとそれは、難しかったですねー。

──個人的には、書いたものを読み終わった後にキャリーバックの中に詰めていって、最後ファスナーを閉めて終わるっていうのがすごく良かったんですけど、あれは意図してやったことなんですか? 

ライブのときとかはルーズリーフをこう、捨てていくというか、読み終わったらぽって置いていくんですけど、街でそれやってまうと、ポイ捨てやないかっていうのになるなと思って苦肉の策でやったんですけど、なんかそれも、キャリーケースに物語がついて良かったなーとは思います。

──そういう捨てるっていう行為というか、多分丁寧にしまうこともできるじゃないですか。その捨てるということに対してマリヲさんが思うことってあるんですか?

捨てるっていうことは土井さんが言ってくれたことで、これから言うことは誰だったか、水木しげるかだれかの引用で、むちゃくちゃベタなんですけど、音楽作品も歌詞とかもまあ、うんこおしっこと一緒みたいな感じはありますねー、その、排泄というか。何か、すごく、身勝手な感覚かもわかんないけど、やっぱりそれは一旦、やってる時はやっぱり一旦そう思ってやります、すごく大事なもんなんですけど。一旦捨てるし、その後のことは、その後の責任は引き受けるけど、それそのものについてはちょっともう、知らんみたいな気持ちはありますねー。

──実際にそれを街の中で見てみて、街に言葉を捨てていくっていうのが見え隠れしたというか。ごみを本当に捨てるかのように街の中に捨てていくっていうのがすごく良いなーって思いました。

そうですねー、もらったものは返していくみたいな感じもあるかもしんないですねー。


淡路

──淡路について、マリヲさんが思うところをお聞きしたいなと思うんですけど、まず淡路はいつ頃からいらっしゃるんでしたっけ?

淡路は三年前くらいですかねー、自分が薬物中毒でどうしようもなくなってるときに、薬物依存離脱プログラムをやってるダルクっていう施設があるんですけど、その施設に通うために引っ越してきてっていう感じですねー、そこから淡路に住んでるんですけど。最初はほんまにもう、もうすぐ出るつもりというかそんな薬物依存離脱プログラムなんか別に、やりたいことではないし、そういうネガティブなところで引っ越してきてるし、早くここを出たいみたいな気持ちはありましたけど、住んでるうちにやっぱすごく魅力的な街やなぁとは思いますねー。淀川のほとりって結構淀みがあるようなイメージがあるんですけど、その淀みの中で、むちゃくちゃ楽しいやないかいとか、むちゃくちゃ太陽みたいな一日があるやんみたいな風にして生きてるような人たちがすごく多いような気がしますねー、最底辺の人たちがむちゃくちゃ明るい音楽やるみたいな感じの人たちが街を作ってるような気はします。まぁ毎日が楽しかったらいいんですけど、毎日楽しいわけがないからみたいな感じはありますねーなんか。淡路っていう地名も、菅原道真やったっけなー、菅原天満宮作った人が淡路島と間違うてここにたどり着いて、ここに何日かおって、まぁどっか行くんですけど、それが由来なんですよ淡路っていう街の名前が。それで菅原天満宮とかもあるし、今住んでる住所も菅原っていう住所なんですけど、その歴史とかもなんかすごく、おもろいですねー。そんな一瞬だけのむちゃくちゃおもろいギャグみたいなことで地名つけて、それを今でも祀ってるみたいなんはむちゃくちゃ面白いなと思いますね。なんか人間性って街がつくっていくような気はするんですけど、街に引っ越してきた人がそのエフェクトにかかるみたいな感じも多分めっちゃあると思いますね、淡路マジックみたいな。

──マリヲさん自身も淡路マジックに…

めちゃくちゃかかったと思います。同時に、引っ越したいなという気持ちもありますけど笑 一時間に一回くらいは絶対パトカーの音するしなー。


大阪

──最後は大阪についてお聞きします。マリヲさんが思う、イメージする大阪っていう街についてお聞かせいただきたいなと思うんですけど、どうでしょうか?

一言で言うと、全員大阪の文句言うけど、大阪のこと好きやみたいな感じがある笑

──そこに住んでる人がっていうことですよね?

そうそうそう、僕もその一員だと思うんですけど、まあ好きやから文句言うんかなぁー。大阪について思いを馳せるっていうことは日々の暮らしではあんまりないですねー。あっちとこっちはちゃうみたいなのも思いますよねー。大阪でも嫌いな街好きな街っていうのがあって、嫌いな街のことはやっぱりそういう目で見てしまうし、好きな街のことは人まで見ちゃうけど。なんか都合のええとこで大阪出すような感じもありますねー自分自身も。 

──大阪人やから、みたいなことですか?

あーそうそうそう!笑 大阪人やからしゃあないやんいうて言うときもあるし、大阪人そういうとこあるんですよーて言うときもある。

──それは都合の悪い時が多いんでしょうか?

都合の悪いとき多いですね。お笑いくらいちゃいますか?全国区で大阪ええやんと思ってんのって。大阪の街自体はそんなにかっこいいとこあんまりないと思いますね。かっこいいと言うより、落ち着くとか、おもろいとか、あったかいとかそんなんやと思いますね、かっこええとこは多分ほとんどないと思いますねー。なんかかっこいい人はいっぱいいるけど、東京に憧れてるような感じの街はやっぱダサいですよ。

──そこは直結してないんですね。

全く直結してないですねー。こないだメキシコシティに住んでる人と喋ったんですけど、大阪はやっぱこう、メキシコシティとすごい通じるところがあるらしくて、街というか人というか。行ったことないですけどメキシコシティ、そうなんやなあ、そうやろうなぁ!みたいになりましたね。メキシコにどんだけ情報いってるかわかんないですけど、大阪のことを聞いたらメキシコシティの人も、おうおうそうやろなぁ!ってなると思いますね、なんかそんな感じはする。


写真:倉科直弘
インタビュー:白丸たくト



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