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Xフレアって怖いの?確認の仕方。X9.3でも耐えた人類

昨日SOを見ていたら便利な表があったので紹介しますね。


フレアの頻度

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じつは、Xフレアといっても割と頻発にあるようで、この表に11年の黒点周期の間での平均頻度がある。上から2つの赤いのはヤヴァいX10とかX20のフレアのイベント。Xフレアは3つめのオレンジ。

Xフレアはで11年で平均175程度ある(X1フレア、ここでは界王拳x1と呼ぶ)
X10も11年で8回くらいある(X10フレアは界王拳x10、つまりX1の10倍)
X20も二周期の22年で一回くらいある(X20フレアは界王拳x20、X1の20倍)

だからXフレアが単発で一回あった程度で電力グリッドがヤバイのであればすでに人類は終わっている訳だ。

まず、その175の全てが地球向きで起こるわけじゃない。大体45度くらいの広がりで放射するから11年で40−50発くらいは地球へ向けてXクラスが来ると推定出来る。一年に4−5回の計算になる。でも今は黒点の数すくないからそこまでこないよな。


ピークの高さ・太さと連発しているかが重要

そしてXフレアでもピークが鋭くてすぐ終わっちゃうのとか、ゆっくし上昇して下降するような太いピークもある。結局大事なのは飛んでくる荷電粒子の数とスピードな訳だ。

例をあげてみましょう。

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数日前にあったXフレアが緑の丸ですね。ピークは高いけども細いです。

そしてしばらくして起こったMフレアが赤丸です。こっちはピークが太いですし、Cフレアと一緒になっています。

この時のMとXでは規模は似たようなものらしいです。Mは太くてちょいと前にあったCフレアからのCMEに追いついて追い越す感じで重なって地球に一緒に来たようです。なのでMでも緑のXくらいの威力があったようです。

ま、どちらも特に被害らしい被害はなくオーロラがキレイだなで終わりました。

まあ、Xクラス単発くらいでは大丈夫ということですね。


CMEを加速する太陽と地球の間の磁界

上に書いたように、フレアの大きさと長さは勿論大事なんだけど、それと同じくらい大事なのが、CMEがやってくるスピードだ。

太陽と地球の磁気圏の勾配(IMF、後述)によって荷電粒子の加速の仕方が変わってくるので、太陽風のスピードを見れば磁気圏の様子を知ることが出来る。太陽風が200−300㌔毎秒くらいのスピードであれば普通であり、Xフレア単発がこのくらいの太陽風に乗ってやってきてもへっちゃらである。1週間前のXフレアの時も太陽風が穏やかだったのでベン・ダビッドソンも大したことないだろうと冷静だった。

太陽風は400㌔越えるとちょいと警戒だ。700くらいまでは見たことある。

逆に、Mフレアでも長めで400㌔を越える太陽風に乗ってやってくるとラジオや衛星、レーダーに影響があり得る。

太陽風が弱いときでもフレアがX10超えたら確実になんらかの障害があるでしょう。

X10だと結構ラジオ・GPS・航空レーダーに障害はあるだろうし、一部電力送電線などにもトラブルあるだろう。

X20くらいだとたぶん電力グリッドに部分的ダメージで復旧に1年くらい?しらん。

キャリントンイベントくらいX30-40になると人類\(^o^)/オワタ。グリッド大部分が死ぬと思う。


惑星間空間磁場Interplanetary Magnetic Field

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Interplanetary Magnetic Fieldっていう太陽と惑星の間にある磁界があるんだけど、上の図のように太陽系を上から見下ろす感じにみるとぐるぐると太陽から風車のように伸びている線がIMFです。これは上のようにきれいに揃っているときもあれば乱れているときもあるし、強いときも弱いときもある。

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なんでIMFが変化するのかというと主に太陽活動。

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イメージ的にはこの図の白い地球と太陽をつなぐもやもやが上から見ると風車のように曲がっているのを想像すると良いのかなと思う。

IMF上にはプラスに荷電したプラズマや、マイナスの電子が漂っていて、地球へ向かってきたり、太陽へ戻っていったりもするから、電気の通りやすい通り道みたいなのがある訳だ。

コロナホールが赤道に来るとIMFが強くなる


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X線の波長域で太陽活動を見た時に黒っぽく見えるところは、太陽表面にあるヘリウムとか陽子とかが磁気で吹き飛ばされた後だったりして、磁力線がながく太陽から飛び出ていることが多いらしい。フレアがあってCMEが起こった跡にも似たような黒っぽい領域が広がるけど、そういうのはコロナホールとは言わない。

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普通は太陽の磁力線も北極と南極から飛び出ている地球みたいな感じだから、コロナホールも極地によくあるんだけど、わりと頻繁にコロナホールは赤道の方まで落ちてくることがある。

コロナホールが赤道付近まで広がっている時は、磁力線が太陽系の面の方向に伸びているわけなので、地球方向へも太陽風が速くなる傾向があります。なのでコロナホールの大きさと位置もポイントになります。


我々はX9.3を生き抜いていた!

https://www.spaceweatherlive.com/en/solar-activity/top-50-solar-flares/year/2017.html

ここに過去のフレアの記録があって、各年のTop 50がみれて便利です。

これをささーと見てたら2017年9月にどでかいX9.3なるイベントがありました。

しかも、地球へ向けてかなり真正面www

しかし、我々はまだ生きています!!!!

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・・・結構大丈夫みたいですな。

ここに貼られているベン・ダビッドソンの動画をみるとXフレアでもまたもピークが細かったことが幸いして、地球を直撃したんですが、電波障害とかで大丈夫だったみたいです。

電力グリッドを焼き切るようなもののは10-20倍くらいこれより強く、X9.3のフレアがグリッドに損傷を与える確立として10%くらいという言い方もしてたから、X10をやり過ごせたのは当たり前かちょっとラッキーという感じでしょうか。

https://www.researchgate.net/publication/326383510_The_6_September_2017_X-Class_Solar_Flares_and_Their_Impacts_on_the_Ionosphere_GNSS_and_HF_Radio_Wave_Propagation

Further, analysis of the impact of the two SFs on the Global Navigation Satellite Systems-based navigation showed that the SF did not cause losses-of-lock in the GPS, GLONASS, or Galileo systems, while the positioning error increased by ~3 times in GPS precise point positioning solution. The two X-class SFs had an impact on HF radio wave  propagation causing blackouts at <30 MHz in the subsolar region and <15 MHz in the postmidday sector.

この論文だとGPSのサービスは精度が落ちてエラーが3倍になったが、サービス中断するほどではなかった。ラジオなどに影響があったとありました。・・・大したことないですな。ラッキー。


我々はX28もプチ経験ずみ

2003年にもX28の計測限界を振り切るフレアがかなり真正面に向けてあったんですが、CMEはほぼ右へそれたおかげで、電力グリッドへの影響ではスエーデンで一時間の停電程度だったとNASAは申しております。

A very preliminary estimate based on just 3 images of the associated CME came out at about 2300 km/second. Although part of the CME is directed towards Earth, we expect to receive only a glancing blow, since the source region is right on the limb of the Sun as seen from Earth.

それにしても大きめのフレアってなぜかハロウィンの週に集中します。こわ。

フロリダ州でオーロラがみれちゃうくらい巨大なCMEだったのに、ラッキーですね。

太陽風の速度とかはどうだったのか調査中です。


2030〜2050年までに地球磁気圏の90%を失うペース

結構大きめのX9.3のフレアが直撃しても電力グリッドは大丈夫なこともあるようですね。

しかし、今のペースで地球の磁気圏が減退すると速くて2030年くらいまでに90%の防御力を失います。そうするとX10でもX100くらいの威力の計算になるわけですね。いまは21%くらい失ったところ。2003年はまだ10%くらいかそこら。

あと数年は大丈夫かなー・・・。

まとめ

だからフレアがあった時に確認するのは

1 フレアのクラスは?ピークの高さと大きさ、何発あった?
2 地球に向かってくるのか?そうなら何時到達する?
3 太陽風はどのくらいのスピード?コロナホールの広がりは?位置は?

などなど色々と考える必要があります。

でもX10超えてたらあまり考えずになにかしらの影響があるヤヴァいやつと思ってください。

X1は多分色々と不運が重ならない限り余裕。

X20は色々と覚悟しましょう。


次回は、Space Weather Newsでこれらのパラメータをどうやってチェックするか、解説するかも(気分次第)。

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じゃ、またな!