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✧09「幽かな気配、届ける記憶」




こんばんは。ドクターです。

今日もしずかな夜ですね。

今回はお便りを読みますよ。ええ、私はしろねこのすべてを肯定したつもりはないですから。

本日、彗星が届けてくれたお便りはなんと、知り合いのナースさんからのものです。この星に不時着する前に、私たち、ドクターとしろねこが暮らしていたところの仲間たちです。

ブーゲンビリア先生のところのナースさんですね。ナースには同じ容姿の個体が複数存在し、オリジナル以外は意志を持ちませんから、このナースさんはちぐはぐな存在なのでしょう。

では、さっそくお便りを読みます。

閑散とした慈愛の惑星より、ドクターがお送りします。

ラジオネーム【個体番号:142756】さんからのお便りです。


☽ ⋆ ꙳ 



おくすりの時間です。

こんばんは。ドクターと、しろねこ。

こちらは個体番号:142756。

ブーゲンビリア先生の指示により、行動を共にし、彼の期待に応えることを目的とした数多くのナースの中でも実験的な存在の個体番号となります。

どうやら、人形にこころを与えることにご執心なようです。

本日のブーゲンビリア先生は、この頃よく訪れている施設で写真を撮っていました。撮り終わって満足した彼は、絵を写せる機械から出たそれの中から、気になるものを選ぶように言いました。「私」は彼が施設をまわる様子と、写真から得たものから、探すことにしました。



ひとつ。

画像1


ふたつ。

画像2


みっつ。

画像3


お便りに同封しているので、ご確認ください。みっつめは、先生が勝手に「私」を撮ったようです。

ブーゲンビリア先生が撮った写真には、どれも「誰か」がいるようでした。

太陽の光に照らされて揺らめくカーテンの下、本を読む美しいひと。となりのベンチからこちらを見て微笑む。森へ続く道の途中、立ち止まるカゲロウ。

一体、写真を通して、場所を通して、「私」たちナースを通して、誰の面影を見ているんでしょうね。

「私」にとって、この場所は「幽かに誰かの温もりを感じる場所」のように感じました。

ブーゲンビリア先生が「私」を連れてよく訪れていたこの施設に、これまでは何かを思うことができませんでした。しかし、今日のように足をとめて見てみると、いつもとは違う瞬きの見える場所をみつけることができた気がします。こころが動く憧憬ということなのですかね。

思い出となって過ぎ去る前に、くりかえし暮らしている場所を冒険してみるのはいかがでしょうか。冒険、すきでしょう、あなた。

本日の報告はここまでです。

またどこかで。


☽ ⋆ ꙳ 


ブーゲンビリア先生、幻覚を形にしようとするものだから、おもしろいですよね。

そうですね。

ナースさんのお便りから、この星にもまだ、みえない光があるのか探してみたくなりました。


今日もほしぞらラジオを聴いてくれてありがとう。私は作業に戻りますね。

では、

おやすみなさい。

明日も夜を続けましょう。


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