思い出に変わるまで
あの頃のキミは幼かった
けど年上の僕はもっと幼かった
出会うのが早過ぎたと言えば格好つくけど
最後のデートを終えた夜、キミはうつむいたまま僕に背を向け、遠ざかって行った
僕はなぜかいつまでもその姿を鮮明に覚えている
街灯の下、小さな背中がまっすぐ遠ざかっていく
あの日の僕の身勝手を、キミはどう受け止めてくれたのか
その事だけが長い月日をかけて重く、切なく僕の胸にのしかかる
思い出の曲を聴くたびに、キミと手をつないで歩いた事を思い出す
恥ずかしくて僕の顔をちゃんと見れないキミの笑顔も、とても可愛いかった
なのに一度もありがとうと伝えられなかった
ゴメンという言い草ばかりが駆け巡る
・・・あれから何百回、いや何千回思い出したかわからない
とうの昔に、キミは忘れていたかもしれない
だけど時代の風が、キミに僕の姿をこっそりと送り届けてくれた
おかげであの日の答えを聞く事ができた
・
・
「帰ってからずっと泣いたんだよ」
その答えを聞いた瞬間、僕の目からは一気に涙が溢れ出た
キミによく似た女の子がキミに寄り添うアイコンと、キミのそのひと言で、僕の涙のダムは容易に決壊した
これでようやく伝えられる
息詰まるほどの切ない思いは、暖かい涙となって放つことができた
「ありがとう、とにかくありがとう」
そんな気持ちをくどいほど伝えた後に、ちょっと待ってねと言って、キミは一枚の画像を送ってくれた
僕が贈ったペンダントの画像だった
落ち着きかけたダムの水が
再び溢れ出た
ようやくこれで、思い出になった。
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