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手計算とHOUSE-ST1とKIZUKURIで簡単なモデルを構造計算し比較してみたら意外な結果に・・・地震力編

ソフト毎に機能の差こそあれ、原則は同じ計算をしています。それは手計算も同様です。ただ複雑だったりすると「モデル化」の作業で差がでてきます。また設計者によって考え方も違うので、同じ建物でも同じ結果になるとは限りません。今回は簡単な木造2階建てモデルを、手計算と、HOUSE-ST1とKIZUKURIで構造計算してみた結果の比較です。使用したモデルは「建築士試験の知識でマスターする木造構造計算」のモデルです。それぞれ考え方の違うソフトの比較で手計算との比較となると大きな差になりそうですが・・・。

平面はこんな感じ。階段もない正方形の建物です。
非常に単純です。最高高さと最高軒高を同じにしています。

外壁重量を500N/m2
床重量を500N/m2(積載は600N/m2)
屋根重量を500N/m2(積載・積雪0)
として計算してみました。

建築士試験の知識でマスターする木造構造計算の第2回では、地震力用の重量Wiを手計算で算出しています。

W2=20kN
W1=61.6kN(1階だけだと41.6kN)

となります。単純な形なので手計算で簡単にでます。もし第2回をまだ計算していない方は、ぜひ手計算でやってみてください。その仕組みを理解できるはずです。

実際に比較してみよう 建物重量Wi編

では、kizukuriを見てみましょう。

各階の重量を計算している部分です。この表がわかりやすくていいですね。F階は1階真ん中から下の重量で、本体の構造計算には関係ありませんので除外すると、
W2=20kN
W1=61.6kN(1階のみは41.6kN)

と、手計算とまったく同じになりましたね?コンピューターは特殊なことをやっているわけではなく、原則通り計算していることになります。この表で()内の重量は、柱・梁用の積載荷重時なので、全体の構造計算では必要ありません。

今度はHOUSE-ST1を見てみましょう。HOUSE-ST1はkizukuriのような集計画面がなく、計算がずらずら並んでいるので、若干見にくいです。

内容はわかりやすいのですが、建物が多くなと簡単な集計表が欲しくなります。

W2=20kN
W1=61.6kN(1階のみは41.6kN)

となります。まったく同じですね?計算ソフトによって書式は異なります。見慣れていないとわかりにくいですが、現在発売されている木造構造計算ソフトはどれも見やすくなっていますので、大丈夫です。逆に入力したら計算書が出る、みたいな感覚でやっていると困りますね。やはり内容を理解していないと駄目ですよ・・・。

実際に比較してみよう 層せん断力係数編

では、実際に地震力(層せん断力係数)を比較して見ましょう。
手計算では、3回で出しています。

Q2=5.408kN
Q1=12.32kN

です。kizukuriを見てみましょう。

NGは気にしないでください(壁倍率不足のモデルを計算しているので)

eQiが該当します。
Q2=5.408kN
Q1=12.32kN
ドンピシャで、kizukuriと手計算があっています。

HOUSE-ST1を見てみましょう。

こちらも
Q2=5.41kN
Q1=12.32kN

です。HOUSE-ST1は小数点第三位で丸めているので、数字こそ違いますが同じ結果と推定できます。つまり、手計算もkizukuriもHOUSE-ST1も同じ計算を行っていることがわかりますね。

このような簡単なモデルで確認してみることは非常に有用です。昔みたいに手計算できないと一人前ではない、みたいな感覚は古いと思いますが、この程度の検証ができるくらいにしないと、構造計算の実務は辛いです。ぜひ時間をとって検証してみてください。基本的な木造構造計算はブラックボックスではありません。


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