小説を書きたいならオムレツを焼け
(この記事は「小説を書いてみたいとは思っている」「書こうとしたがすぐ諦めてしまった」という人に向けつつ、自分のなりの小説の書き方を紹介したものです)
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「書いてみたいけど、小説は書けない。むずかしい」と、よく言われる。
私には「オムレツを焼きたいけど、ふわふわ美オムレツが焼けない。むずかしい」って聞こえる。
家庭で焼く普通のぺっちょりしたオムレツもオムレツだぞ…!? なに言ってんだ…!!?
焼けるだろうがよ、オムレツ。
卵割って混ぜて、油ひいたフライパンに流し込んで箸でどうにか寄せるだけだぞ。
形が悪くても、焦げても、オムレツと思って焼けばオムレツだし、それはあなたにしか焼けないオムレツなのだ。
うまいまずいは別として。
小説も同じ。
「小説を書きたいだけ」ならば、(少なくともTwitterとかnoteにいるような人であれば)誰でも「書ける」と思う。
「読みやすくて面白みがある美味しい小説を書きたい」なら、そりゃ書けねえよ…すぐには…。
「↑とまでは言わないけど、私のパッションを伝えられるだけの小説が書けないんだもん」というのも、わかる。
めちゃくちゃわかる。
しかしまだ一度も、あるいは数回しかオムレツを焼いたことがないような人が、きちんとしたオムレツを焼けるだろうか…!?
とりあえずオムレツを焼け!!
1回目のオムレツを焼ききれ!!!!
それがあってはじめて、「おいしいオムレツにするにはどうしたら良いかを考えるステージ」に行けるんだ!
その先で「パッションを小説に凝縮して人を殴るスキル」が身につくんだ!!!!!!
ヘキで殴りたいだろ、人を!!!!(当社比)
(※ヘキ =性癖のようなもの。己が抱く独特なパッション。いつだって他人の同意が欲しい)
殺したいだろ!! 推しキャラを!!!!!
(何言ってるかわからない人はこの行を読まなかったことにしてください)
グチャっていいからオムレツを焼け!!!!!
と、ここまでは【普通のオムレツは焼けるけど美味しいオムレツは焼けない(と思っている)から、焼きたいけど焼かない】という人向けの内容。
ここからは、
【うるせーーー!! そもそもその「卵割って混ぜて、油ひいたフライパンに流し込んで箸でどうにか寄せるだけ」ができねーーーから言ってんだよ!!!!!】
という人に向けた内容です。
つまり本題ですね↓
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▼ 自分のステージを俯瞰しよう
そもそも、
【小説という文のまとまりを作る】
【読みやすい文章を書く】
【読みたくなる文章を書く】
【魅力的なストーリーを作る】
これらはそれぞれ別のスキルだから、切り分けて磨くほうが発狂しないと思う。
オムレツを焼く準備をしながら付け合わせ野菜も同時に作ろうとするな。
いきなり「料理に慣れた人のやり方」に挑むんじゃない。
まずは【小説という文のまとまりを作る】つまり【どうにかオムレツにする】の流れを掴むところからだ。
卵割って混ぜて → ネタ出し
油ひいたフライパンに流し込んで → 整頓
箸でどうにか寄せる → 清書
って感じ。
「読みやすい文章を書く」とかは、「卵の混ぜ方を工夫してふわふわさを出す」とか「箸の使い方を練習して成形の精度を上げる」とかの話なので、とりあえず忘れるんだ。欲張るな。普通のオムレツで殺(と)れる命から狙え。
ちなみに、【読みたくなる文章を書く】は私が教えて欲しいくらいだが、【読みやすい文章を書く】は別の機会に私なりのnoteにしてみたいと思っている。
▼ どうにかオムレツにするということ
もとい、小説らしい文章を作る道のり。
私の場合の最短ルートはこう↓
(1) 「まず、書きたいこと」を並べる(連想する)
(2) ↑の「なぜ・どう」「ついでに」を補足する
(3) ↑の情報を整頓・並び替える
(4) ↑の行間を繋げるモノ・コトを足していく
(5) 行と行をなめらかに繋がるよう文を練る
(6) 「もうこれで完成でええやろ…」てなる
イメージとしては「書きたいことを自分にくどくど説明する。突き詰めて解説するうちに書きたいことが理解できる。書ける」って感じ(???)
より詳しく掘り下げていく↓
(1) 「まず、書きたいこと」並べる(連想する)
@例1
★キャラAの一口がでかいとかわいい。
★例えばドーナツ。一口で半分以上ぱくっと食べちゃうのかわいい。
★普段はあんなにおすましさんなのに、ってとこがギャップ。よい。
@例2
★切れかけの蛍光灯ってエモいよな〜。
★"空気感"を書きたい。
★静かな感じ。
★つまり死とか不穏。
(2) ↑の「なぜ・どう」「ついでに」を補足する。
例えば、
・なぜ★を思いついたのか(何に"良さ"を感じたのか
・★の場面にどうもっていくのか
・ついでに書きたいこと
・着地(オチ)をどうするか
など。
思いつく順で良い。(1)の時点で出ていることもある。
@例1
★キャラAの一口がでかいとかわいい。
★例えばドーナツ。一口で半分以上ぱくっと食べちゃうのかわいい。
★普段はあんなにおすましさんなのに、ってとこがギャップ。よい。
→そのシーンを書くためには、Aがドーナツを食べるシチュを作らねば。→休みの日に友達に誘われてミスドに来たってことで。
→Aの「一口がでかくてギャップ萌え」を語る人物が必要。→キャラBがいいな。→キャラBもはじめから同席してたことでいいかな。いや…別の席から相手に気付いてこっそり見てるのがいいな。→キャラBはなぜそこにいるんだろう?→もともと甘党だから来てたんやろな。
→B、ドーナツを食べるAを見て「口でか。かわいい」と思うわけだけど、Bってそう感じたらどうするんだろう?→ハッとして「なんであいつなんかにほっこりしてんだ」みたいな複雑な気持ちになるかな?めちゃくちゃかわいいのでは?これオチでいいな。
@例2
★切れかけの蛍光灯ってエモいよな〜。
★"空気感"を書きたい。
★静かな感じ。
★つまり死とか不穏。
→切れかけの蛍光灯がある場所…は夜のさびれた公園がいいな。そこで何かが起きるか、そこへ誰かが行くか…。→特に何が起きるでもなく、通りがかった誰かが蛍光灯をぼんやり眺めるかんじでいいや。
→夜の公園にひとりでいる奴、ろくな状況じゃなさそう。家に帰りたくないんかな…。
→家に帰りたくなくて、切れかけの蛍光灯を見て時間潰して…どうでもいい連想してんのかな…トイレの電球が切れかかってるとか…。→そういうこと考えて自殺をやめる話にするか。
→人物、きっと日常に疲れてんだろな。仕事かな…。
→最近、空の水槽がマイエモアイテムなんだよな。金魚鉢もいいな。飼ってた金魚が死んだ。→買い足したばっかりの新品の餌、捨てる気にもなれず空の金魚鉢の横に放置してある光景…いいな…。→その人は、家に帰ってもおかえりを言ってくれるひといなさそう。金魚までいなくなって、食べる者もいない新品の餌を見るのが嫌…みたいな、ささやかな孤独。萎えててほしい。
→蛍光灯で希望が湧くとかでもないけど、とりあえず電球変えて、餌も捨てるか、みたいな、死ぬことは延期する気持ちの変化がエモの余韻ラストかな。
〈 ポイント1 〉
ラスト(着地)は必ずここで決めきる。オチの強さとか気にしない。ここでEDに切り替わる!カット!
〈 ポイント2 〉
ここがガバガバだと後の作業が投げ出したくなるほどしんどい。慣れるまでは特に時間をかけたほうがいい。ツイートしながらだらだら考えると、意外とできちゃうかも。
(3) ↑の情報を整頓・並び替える
@例1
Aがミスドにいる。
Aは学校が休み。
友達に誘われて来た。
Bがいる。
Aとは別のテーブル。
Bは甘党だからひとりで来てた。
AはBに気付いていないが、
BはAに気付いている。
Aのドーナツを一口で半分以上ぱくっと食べる。
B、ドーナツを食べるAを見て「口でか。かわいい」と思う。
Aは普段はあんなにおすましさん。ギャップ。
B、ハッとする。「なんであいつなんかにほっこりしてんだ」複雑な気持ち。
完。
@例2
切れかけの蛍光灯。
夜のさびれた公園。
静か。
人物がいる。通りがかったところ。
蛍光灯をぼんやり眺めている。
夜の公園にひとりでいる。家に帰りたくないから。
切れかけの蛍光灯を見ながら、どうでもいいことを考えて時間を潰している。
トイレの電球が切れかかっていることを思い出す。
家のことを考えてる。
家には空の金魚鉢がある。
買ってた金魚が死んだ。
空の金魚鉢の横に、買い足したばっかりの新品の餌。捨てる気にもなれず放置してある。
家に帰ってもおかえりを言ってくれるひといない。金魚までいなくなった。
食べる者もいない新品の餌を見るのが嫌。
孤独。
仕事もうまくいっていない。
人生に萎え。
死ぬつもりだった。
でも、とりあえず電球変えて、餌も捨てるか、みたいな、死ぬことは延期する気持ちの変化。
完。
〈 ポイント 〉
・本編に必要がない部分は捨てる。
・全体を俯瞰しやすいよう文を簡潔に整える。
・流れが自然になる/自分が書きやすそうな運びに並べ替える。
(4) ↑の行間を繋げるモノ・コトを足していく
@例1
Aがミスドにいる。
【昼過ぎ。話し込んでいる→それを示唆する結露のついた中身が半分のカフェオレが入ったグラス。でもゴールデンチョコレートはまだまだ山詰み】
Aは学校が休み。
友達に誘われて来た。
【だから、私服姿】
【友達はCとD。クラスメイト。仲良し三人組。いつもの話題で盛り上がっている】
【すぐにBが出てくると話が早すぎるから…クッションで他のシーン軽く挟みたいな】
【恋バナしてたらかわいいな。Cが好みの子の話して、「Aは?」って話を振る】
【Aははにかみながら話を濁そうとする】
【Dが「さては気になるひとがいるんだ」と茶々を入れる。キャッキャウフフ】
■ ←場面(視点)転換
Bがいる。
【Bも私服】
Aとは別のテーブル。
【テーブルにはエンゼルクリームとその他のドーナツ。ひとりで食べるにはわりと多い】
Bは甘党だからひとりで来てた。
【甘党なの隠してるからこっそり。だから、】
AはBに気付いていないが、
BはAに気付いている。
【向こうに気付かれないかひやひやしているので、気にして見てしまう】
【Aのグループが出口側だから、前を通らねばならないので帰るにも帰れない】
【他の客が少ないからか話も聞こえてきてしまう。聞きたいわけではないが…】
Aのドーナツを一口で半分以上ぱくっと食べる。
B、ドーナツを食べるAを見て「口でか。かわいい」と思う。
【「かわいいところもあるんだな…」】
Aは普段はあんなにおすましさん。ギャップ。
【学校生活での絡みの回想。BはどちらかというとAのスカしてるところが嫌い】
【アハハ…と楽しそうに会話するAたちの声が聞こえて、回想終わり】
B、ハッとする。
【嫌いなのに「かわいい?」】
「なんであいつなんかにほっこりしてんだ」複雑な気持ち【を、フルーツティーで喉の奥へ流し込んだ】
完。
@例2
切れかけの蛍光灯。【街灯。電球では…?】
【チカチカと点滅している】
夜のさびれた公園。
【ひとけがなくて、】
静か。
【夏の夜だから空気がぬるい。風が吹いても生暖かい】【汗】【ワイシャツ(仕事帰りだからスーツ)】
人物がいる。【→広々とした公園に、自分一人しかいない】通りがかったところ。【仕事の帰り道。しかし、退勤したのはずっと前の時間。いろいろな場所をうろついてここにたどり着いた】
【ベンチに座って】
蛍光灯をぼんやり眺めている。
【どことなくあの蛍光灯に親しみがわく。自分もああやってゆるやかに点かなくなってしまいたい気分だった。】
【空腹を感じるが、すっかりベンチに根が張ってしまった(未だ帰る気にならない)】
夜の公園にひとりでいる。家に帰りたくないから。
【家に帰ってもこう…(ろくろ)】
切れかけの蛍光灯を見ながら、どうでもいいことを考えて時間を潰している。
【どうでもいいこと→日頃の職場での人間関係の愚痴とか】【同期はみんな結婚して生まれた子供の話ばかりだ】【独り身の自分はわかったような顔をして曖昧に肯くばかり】【元々オフィスになじめないでいるのに】【喫煙所にも居づらくなってきた】
【そしてふいに、】
【家の】トイレの電球が切れかかっていることを思い出す。
【他に行くところもないのだから、いつかは帰らなければならない】家のことを考えてる。
【自分が電気をつけなければ暗いままの、誰の靴も脱ぎ置かれていない玄関。】
家には【→玄関の下駄箱の上には】空の金魚鉢がある。
【三日前に】買【→飼】ってた金魚が死んだ。
【餌が切れて、明日買って与えよう…と思いながら忘れ続けて、やっと買って帰って見たら餓死していた。】
【ビニール袋に入れ、生ゴミで捨てた。】
空の金魚鉢の横に、買い足したばっかりの新品の餌。【一緒に捨てれば良かったのに】捨てる気にもなれず【→捨て損ねて】放置してある。
【家には何もない】
家に帰ってもおかえりを言ってくれるひといない。金魚までいなくなった。
食べる者もいない新品の餌を見るのが嫌。
【タイミングも始末も悪い俺を象徴しているようで忌々しく見えた】
【視界に入らないようにさえ意識し始めている】
孤独。
仕事も【→なにもかもが】うまくいっていない。【とりたてて不幸なわけでもないが、けして幸せではない日々。】
人生に萎え。
【明日が来ることがーー日常を繰り返すことが、もううんざりだった】
死ぬつもりだった。
【退社した後、駅のホーム、河川敷をぶらついて、ホームセンターのあれこれの道具を眺めたり、ぼんやりと死の影を追っていた】
【実行する勇気まではないのが、自分が自分たる所以なのだ】
【そうして、こんな時間になってしまった】
【じっと蛍光灯を見ている】
【と、そもそもトイレの電気を消したか気になってきた】
【いま偶然に死ねたとして、自分が死んだ後も延々とトイレの電気があの蛍光灯のようにチカチカしていたらなんだか嫌だ】【そればっかりが気になって成仏できなかったらたまったものではない】
でも、とりあえず電球変えて、餌も捨てるか、みたいな、死ぬことは延期する気持ちの変化。
【ベンチから立ち上がる】
【蛍光灯がチカチカっと見送るように点滅した】
完。
〈ポイント〉
こつこつ詰めていく。ここもがんばりどころ。
がんばっておくと、「あとは新しいことを考えなくても、小説っぽく言い換えていくだけ」だから楽。
(5) 行と行をなめらかに繋がるよう文を練る
「小説らしくする最終加工」って感じ。
長くなっちゃうから例2のみ。
@例2
塗装の剥がれた街灯が、不安定にチカチカと点滅している。電球が切れかけているのだろう。
さびれた公園にはひとけが無く、自分一人しかいないようだった。こんな時間だから当たり前か。
自分の足音がいやに大きく聞こえるほど静かだ。夏の夜は空気がぬるい。風が吹いても生暖かく感じるばかりで、ワイシャツの内側はいっそうじっとりと汗ばんだ。
特に用があって来たわけではない。たまたま通りがかって、ひとつだけおかしな街灯があったから気まぐれに足を踏み入れただけだ。
その街頭を眺められる位置に、ちょうどベンチがあった。腰掛けて、軽く息を吐く。疲れたな。
仕事の帰り道ではあるが、退勤したのはずっと何時間も前だ。まっすぐ家に帰らず、うろつき続けて今に至っている。
外灯の光をぼんやり見上げた。どことなく、親しみが湧いている。自分もああやってゆるやかに灯らなくなり、最後は沈黙(し)んでしまいたい気分だった。
煙草を一服する。吸い終わる頃には、すっかりベンチに根が張ってしまった。暑いし、空腹感も強まってきたが、まだ家に帰ろうとは思えない。ここは思っていたよりも居心地が良いし、穏やかに時間が過ぎていく。
切れかけの電球は相変わらずで、意味をなさないモールス信号を発し続けている。俺はどうでもいいことを考えながら、「考え事をしているから」とここにいる理由を引き伸ばしていた。
どうでもいいことーー例えば、職場での人間関係。同期はみんな結婚して、生まれた子供の話ばかりするようになった。独り身の自分は、わかったような顔をして曖昧に頷くことでしか話題についていけない。今日もそうだった。元々オフィスになじめないでいるのに、喫煙所にも居づらくなってきたことが憂鬱だ。
そしてふいに、家のトイレの電球が切れかかっていることを思い出した。チカチカ、チカチカ。妙な親しみの正体は、家の中でも同じことが起きているからでもあったのだ。
――考えたくない家のことを考えてしまった。
他に行くところもないのだから、いつかは帰らなければならない我が家。
自分が電気をつけなければ暗いままの、誰の靴も脱ぎ置かれていない玄関。
玄関の下駄箱の上には、空の金魚鉢がある。
三日前に、泳がせていた金魚が死んだ。餌が切れて、明日買って与えよう……と思いながら忘れ続け、やっと買って見れば餓死していた。
俺はその親指大の小さな亡骸を、ビニール袋に入れて生ゴミで捨てた。
空の金魚鉢の横には、買い足したばかりの新品の餌が置かれたままだ。死んだ金魚と一緒に捨てれば良かったのに、捨て損ねたきり放置している。
家には何もない。
帰っても「おかえり」を言ってくれるひとはいない。金魚まで去ってしまった。
仕事から帰宅するたびに新品の餌筒を見る。それはタイミングも始末も悪い俺を象徴しているようで、たまらなく目障りだった。
出勤するときも視界に入れないよう意識し始めている。もちろん、触りたくもない。
とりたてて不幸なわけでもないが、けして幸せではない日々。代わり映えしないいやなことばかりが目につく。
明日が来ることがーー日常を繰り返すことが、もううんざりだ。今日、残業明けの足で電車を待ちながら、そう思ったのだ。
死のう。
電車が来ても乗り込むことなく、しばらく駅のホームに立ち尽くした。飛び込もうか、どのタイミングで。そんなことを考えているうちに、行き交う誰かと肩がぶつかり「あぁ、邪魔になっている」ととりあえず人波に逆らうことを止めて電車に乗り込んでいた。
適当な駅で降り、偶然たどり着いた河川敷をぶらつく。川か。しかし、下校中の子供の目が気になって踵を返した。
大通りに出て、歩道橋の階段を登った。この高さ、交通量……。と思ったが、高欄によじのぼるには足の長さが足りないような気がした。
気がつくとホームセンターに居て、縄や刃物や、煉炭だったり、あれこれの道具を眺めた。
ぼんやりと死の影を追い続けた。
――わかっている。実行する勇気まではないのが、自分が自分たる所以だ。
そうして、こんな場所、こんな時間になってしまった。
「そういえば……」
頭上から注ぐ明滅の中で、そもそも今朝トイレの電気を消したのかが気になってきた。
いま偶然に死ねたとして、もし消し忘れていたら我が家のトイレはあの街灯のようにいつまでもチカチカするのだろうか。力尽きるまで、誰にも見つからずに、上がったままの便座を瞬かせ続けるのか。電力ばかり消費して……。
なんだか間抜けで嫌だ。気になる。
しかも、それが気になっているせいで成仏できなかったら、たまったものではない。
思わずスッと立ち上がっていた。電球だけは変えよう。あのホームセンター、電球安かった。
古い電球と一緒に、ついでに餌も捨てよう。分別はする。
死ぬのはそれからでいいや。死ぬために明日は会社休もう。
ぐうう、と腹が鳴った。コンビニでいいか、電球も飯も。
足を踏み出すと、歩き回って蓄積された疲労を感じた。帰り道がだるい。まあ、それは仕方がない。
自分の前に伸びる影が出たり消えたりする。外灯がチカチカとまばたきをして、俺を見送っているらしい。
〈 ポイント 〉
・言ってることが重複する部分はしれっと消す。
・「この方が書きやすいな」と思ったらしれっと並び替えたり調整する。
・細かいニュアンスなどにこだわって同じところばかり修正するようになったら自分の頬を打ってそれを終了と諦めのゴングとし、どれだけ気になってももう触らない。次に行く。
(6) 「もうこれで完成でええやろ…」てなる
自分が完成って思えば、半端だろうがそうじゃなかろうが完成なんだ。
▼ できたオムレツを受け入れるのは度胸
「思ったよりめんどくせーな」と思ったあなた……それはまあ……そうだよ!!
でも慣れたら色んなことがショートカットできるようになるから、「短編くらいならチョイだな」と思うようになれるかも知れない。
例えば私は(2)〜(4)を1行程としてやっている。
▼ これらを読んでなお「いや、くじけてしまうんや…」ってなる人
そういう人は、
【ネタ出しの時点で脳みそが停止する】か、
【清書が終わらず力尽きる】あたりだと思う。
どうだろ。
● ネタ出しの時点で脳みそが停止するヤツ
小説書きたいって思うなら、何かを書きたいとは思っているはず。
「いま自分が書きたいモノ・コト」が思考の向こうでなぜつっかえて出てこないのか、ひたすら内省するしかない。
いま自分がハマっているシチュとか、キャラとか、最近いいなって思った世界観とか展開とか、自分の好きなモノ・コトの知ってもらいたい萌えポイントとかぼんやり連想していって、「伝えたい…このパッション…」を突き詰める。
「思いつかないわけじゃないけど…既存のものと似てるし…面白くないから…」とか、「その発想はナシ寄りのナシやね」みたいなこと囁いてくるもう一人の自分は想像できる限りの凶悪な鈍器で殺れ。そいつは萎えマーラだ。自分の変態さを信じろ。俺がマーラだ(勃)。
基本的に何かを見て「うわっエモッ一句読も」みたいになる奴はナシもアリもねぇ唯一無二の変態だ。上位互換があろうが己にしか書けないものが1mmくらいはある。他人の作品のことは考えるな、産むことに集中しろ。産んでからなら悪いところだけじゃなくて良いところも見つけてやれるんだ。そうしたらその作品はその時点での100点なんだ。
何かを読んで「こんな話を私も書いてみたい!」とかそういうスタートでもいいと思う。パロディという言葉もあるし。
● 清書が終わらず力尽きるヤツ
・ネタ出しが雑なまま清書に入ってしまい、清書しながら行間のネタ出しをするハメになって過去の自分を呪う。
・ネタの量が多すぎていつまでも終わらない清書に萎える。
の、どちらかでは?
→ ネタ出しをじっくりやる。
→ ネタが長くなったら1と2に分けて、とりあえず1を完成させる。
で、解決できるかも。
理想に合わせて自分を変えていくのもいつかは必要になるけれど、まずは自分の程度に合わせて道筋を整地しよう。
▼ 「自分がなぜくじけるのか」がわかれば、なんとかできる
結論、「小説を書けない」って言う人は、自分でハードル上げがちだと思う。
「小説を書きたい」という気持ちに背伸びをさせなくてもいい。
「うまい小説を書きたい!」は本当にわかる。読んでもらいたいもんね。
でも、とりあえず一作「ただの小説」を書いてみて。それをベースにブラッシュアップすれば「うまい小説」に前進できるはず。
▼ 余談
こういうテーマの発信をすると「こういうのは小説じゃない」ってボソッと言う人が必ず出てくるんだけど(私の作品に限定して宛ててるのかもしれないが)もし見かけちゃっても無視でいいよ。
どんなに立派な理由をつけても、結局はママの作ったオムレツしか認められない人なんだ。
「どんなものを小説とするか」はそれぞれだろうから、その人がそう思うことは否定しないけれど、みなまでは言うまい。
「自分にやれるかどうか」ドキドキしながら一歩目を踏み出そうとしている人、そういう雑音に出鼻をくじかれたりせず、「なるようになーれ」と唱えながら卵を割ってほしい。はじめは綺麗に割れなくていいから。
▼ オムレツ、焼いてみてね
そして誰かに食べてもらうと、「また焼こうかな」ってきっと思えるから…ぜひ誰かに読んでもらって!
(これがまたネックなんだけども…。例えば #小説を書きたいならオムレツを焼け タグを作ってみんなの発表の場にするとか…仲の良いフォロワーと「初小説見せ合いっこ」とか…したら良い…かもしれん…。まあこれはまた別の話だ……)
あわよくば、私向きのオムレツがこの世にまたひとつ生まれますように。
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余談なんですが地雷物件を引き当ててしまって10ヶ月で引っ越すハメになり、オア〜〜てなっているところなので、100円でもサポート頂けるといのちつながります(ちゃっかり…)