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ホラー短編集でネタ出ししたときの思考、忘備録

普段エロ小説書いてるのに、思い立って全年齢向けのホラー小説を書いた。

カクヨムという小説投稿サイトに別名義(もぐもぐしてるよ)で登録して投稿したところ、思ったよりも反応があって楽しい。
調子に乗って毎日のように更新し、4/11時点でもう13話である。

描き始めたころから思考の多動が気持ち良い。
ネガティブな変な思考でぐるぐるせずに、「どんな話を書こう!?」でアクセル踏めるから。

自分でも良い感じに脳みそがギャリギャリになってるなと思うので、後々「なにも思いつかない…無力…」と元気がなくなったとき、「おまえはやれる。楽しんでたときもあったろ」と自分を励ます用に日記を残しておく。
(4くらいから本文)


この記事には作品のネタバレがあります


1 妖怪研究所職員

見た夢をブラッシュアップした。

このツイートを小説風にしてみるか、がスタートだった。

2 小指で芽を育てた男

これも見た夢をブラッシュアップした。
約4年間で見た変な夢を集めた』の「小指で芽を育てる夢」である。
「現実のつらさから、芽の神秘性にすがって狂っちゃうほうがホラーだろうな」と思って今の内容になっている。
遭難ホラーも軽く書いてみたくてこうなった。

当初は「見た夢を小説にアレンジしよう」というテーマがあったように思う。しかし、小説にできそうな夢日記が思ったよりなく、2話目でテーマを投げ捨てた。

3 冷蔵庫の幽霊が出る

ツイート(一次創作BLの妄想)をブラッシュアップした。

「死んだ恋人と離れたくなくて冷蔵庫に隠したはいいが、生き返るわけでもないからそこで詰んでしまう」というベースに、「死体ねじこまれた冷蔵庫も気の毒だよな……文句の一つでも言いたくなるだろうな……」という発想から書いた。
語り部が殺したりしてなくて、作中の全員が善人で怖い話にしたかった。

4 人間キビヤックマンをバズらせたVtuber

ホラーといえばチェーンメールだろう、という安易な発想からスタートした。
「SNSが飽和してる現代だと、チェンメが流行る=バズるなんだろうな」
「バズったら凄い勢いで拡散されるから、怪異側も大変だろうな」
「怪異が労基に相談してたらおもしろいな」という連想。

「怪異が労基に行ってることを知るにはどうしたらいいんだろう?」でこっくりさんを採用し、オチにもした。

この時代でチェンメを流行らせるのは配信者だろうなと思い、私がV好きだからYouTubeではなくVtuberにした。

Vが流行らせそうなチェーンメールを考えるにあたり、「B級ホラーっぽくて出オチワードがいいな」「人間食べ食べカエルさんみたいな語感がいいな」から人間キビヤックマンのワードは生まれた。

5 記憶に残らない子

チェンメものの次はおまじないものがいいな、と思った。4時44分の鏡みたいな。
《鏡に向かって「お前は誰だ」と唱え続けると狂う》というインターネット都市伝説(洒落怖)が実際にあり、そこから発想をもらって「鏡のおまじない」を作った。
自分が狂うんじゃなくて、自分だけが正気でいるのって怖いだろうなと思ってそういうしくみのおまじないにした。

同時進行で、4話のウケが良かったので続きになるような話も書きたいと思っていた。
4話で出したキャラがYouTubeではなくVtuberである必然性をどこかで示したいと思っていたため、この5話に合流させようと思い、あのオチにした。
「鏡のおまじない」では何か願い事をしないといけないため、キャラが最新のスマホを願えばフェイストラッキングアプリの要求スペックも見たすし、ちょうど良かった。

Vくんが主人公に「家に来い」と言われて、犯されて殺されると確信(勘違い)し、あえてついていく自棄っぷりがお気に入り。この時点でVくんは自分のモテフェイスを自覚しているのがよくわかる。

6 夢に追いつかれた女

これも見た夢をブラッシュアップ。
約4年間で見た変な夢を集めた』の「水死体がついてくる夢」をもとに、その水死体が水死体じゃなかったらもっと怖いかも……と想像を膨らませた。
「語り部の主観がそもそも誤認である」という話にしてみたかった。

水の中の黒い塊→ボウフラ→赤ちゃん、托卵?乗っ取り?融合?、夢を通して現実を改変する存在、異種婚姻譚、血を吸う蚊はメスだから同性パートナーだ、男は排除するやろなぁ、とかいろいろ連想していった。

語り部が事実を誤認しているので、読者にそれを伝えるためにはどう書いたらいいのか…でどんどん文字数増えた。むずかしかった。

7 「狐の窓」で自分の正体を知ったひと

シンプルに「狐の窓」の話が書きたいな、と思った。
狐の窓をしながら鏡を見たら、よりにもよって自分が人外だったらオモロだな、と。

自覚するまで自分が人外なこと忘れることってあるか?という疑問から座敷わらしを採用した(作中で「何者か忘れちゃうくらいに、この家の子供としてかわいがられたからかなぁって……」と書いた通りである)

ギャップは大きい方がいいと思ったので、本性が女児ならガワはおじさんにしようと思った。

同時に、主人公があちこちの怪異に好奇心だけで足を突っ込む度胸がどこから来るのか裏打ちが欲しかったので、同棲させることにした。
座敷わらしの加護があるから無茶しても大丈夫だと思っている+お金などに困っていない、ということで、4話の無鉄砲さや、他人へ気軽にゲーミングパソコンをあげる余裕の根拠ができた。

8 「乗せて」の幽霊

ローカルバスが好き。
当たり判定がなくてバスに乗れない幽霊を毎日見るのってオモロいな、と思った。
そこから、ミスリード・ダブルミーニングがある話を書いてみたいな、ということで頭を絞った。

どこかに行きたいのか?(バスに乗る)
そうではなくて語り部に取り憑きたかった(ヒトに乗る)
かつ、言葉遊びで「放送に乗せる」がいいなと思って、ラジオパーソナリティの設定を持ってきた。
ラジオでないといけない理由のために、幽霊はネット配信もテレビも試して失敗したことにした。

迷惑な幽霊がいいなと思ったので、少しでも多くの人間と心中したい青年ってことにした。
作中で明記しなかったので蛇足だが、青年の「やってやる」は無差別X人(拡大心中)である。実行する前に車に轢かれた。哀れ。
無事に「乗っ取った」後の生放送では、呪いを振りまくのだろうと思う。

9 天まで届く長いネコ

昔、天をぶち抜く長いキリンとシマウマの話を書いたことがある。それをリメイクしようとした結果、「長い動物」という一点しかエッセンスが残らなかった。

「長い動物」と考えたとき、ネットミームのロングキャットのことを思い出して、ロングキャットの話を書こうと思った。
雲の上に頭がある猫は何を食べるのか? から、人間の心理を操る賢いネコちゃんにしようと思った。
食べるために人間を操る賢いネコといったら「注文の多い料理店」やろがいとなった。
人間食うならうんこもするよなと思ってうんこについても書いた。

こんなドタバタする話なら、4話のVくんちゃんに出てきてもらったら楽しいだろうなと、デート回にした。
ネコの口元(手元)まで人間が行く方法が必要で、それをエレベーターにしたもののリアリティラインがどこまでも低くなるなあと思って主人公にツッコまさせた。

10 「ごちそう桶」

和製ホラーらしいものを書こうと思った。
「人を幸せにするためのものが、人間の愚かさによって残酷な道具になってしまう」がいいなとも思った。

因習みたいなやつ、そうしたら飢餓絡みかな、食べ物がたくさん入った桶……「ごちそう桶」だ。木の桶なら御神木から作ったってことにしたら説得力あるなーって連想した。

うんこ!しっこ!死体!やったー!のあたりは完全に性癖なので深い考えなどない。

穢れたらあとはもうね、原因不明で死んでおけばホラーだよね、怖いね、おしまい!まで書いて、流れがシンプルすぎるかなと思って「不衛生だし菌とかの説もあるよね」を挟んでおいた。
ちょっと人の仕業で説明できそうな(怪異性を否定できそうな)隙を入れるの好き。

11 知らないことも良いことがあるだろう?

「殺人ぽいのにあえて黙ってて事故で処理する」が現実でもあることを、都市伝説ではなく実例で知ってびっくり。「良かれと思って真実を知らされないこと」への恐怖心から書いた。

見た目が明らかにクリーチャーで神に等しい上位存在がペットのふりをするのあまりにおままごとでかわいいなと思ったからそうした。

ついでに、ねじ込めそうだと思ったから「ネコと和解せよ(神と和解せよ)」のネットミーム画像のネタも入れた。

あのネコ、「自分は世界の終わりを伝えに来た存在だよ」ってカジュアルにぺらぺら喋ってると思う。でもそれを知らされた人間は「情報が重すぎる、自分じゃ背負えない」と困惑して、主人公と同じように記憶を消すかどうか聞かれて頷いている。ネコは優しいので監視カメラや盗聴器のログも改変している。あの施設はそれを繰り返してる。「全員が知らない方がいい」を何度も選択して現実に向き合えないでいる。

12 幽霊画の体臭

雑味のないホラーをちゃんと書け!と自分の頬をぶった。
ので、幽霊画をテーマにしようと思った。

自分が最近、キャンバス絵を買った経験から、額縁に入ってるタイプの幽霊画、つまり近年の幽霊画にしようと思った。

幽霊がワキガだったらめっちゃ嫌だなと思った(瞬間、雑味1000%になったがそのときの私は気にしなかった)

ただ、本当にワキガネタで走り抜けたらボーボボホラー作家になって終わっちゃうと思って、「ちゃんと怖い臭いでしたー!」ってオチを作らなきゃと考えた。

はじめは絵がかけられた壁に死体が埋まってるオチにしようと思ったが、ワキガと腐乱臭の区別はつくやろと思ってやめた。

ワキガは卵が腐ったようなにおいがする(諸説あり)ということで、卵が腐ったにおい……硫黄……硫黄といえば地獄……と連想してあのオチにした。

生前の作者が罪を犯していて、その罪悪感から被害者を描いていて、裏に未来予想として地獄に落ちた自分を描いたために、今は不思議な力が働いて生中継画面になってたらいいな、と思っている。
(作中でそうと明記してないので、私的にはこうかなという解釈に過ぎない。他の解釈もアリ。正解はない)

13 モバイルバッテリー・シリアルキラー

チケット当たって、無事に観れるよう神社の神様にお願いした→バッテリーのトラブル→無限モバイルバッテリーを手に入れる。までをまず思いついた。

「モバイルバッテリーが無限に使えても、今はそこかしこにレンタルサービスがあるからありがたみないよなー」から「じゃあもっともっとチートだったら?」「どうして無限チャージされるの?些細な願い事に対して手厚すぎない?」「何が怖い話なの?」と想像を膨らませた。

今までの語り部はみんな良識(?)があったので、ここらで一発ヤバい奴を出そうと思った。
自己顕示欲が強いのでぺらぺら喋って、主人公を堂々と脅してくるような奴。人を殺しまくってるといいな。「殺す理由を正当化してて怖い」「これからも殺す気だとなお怖いよな」と思って書いた。

モバイルバッテリーを通して神社の拡張デバイス(古い言い方だと「神使」)になるのっておもしろいなとおもった。
そもそも神使って蛇とか猿を指すのに。でも人間も動物だもんな、クスッ、みたいな。

以上。

連載はいい感じにまとまるまで続けていきたいな。
そんなかんじ。

やっぱり物語を描くのは楽しいね。

(ヘッダーのイラスト提供 :スケルタル博士