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カウンセリングの目的と棲み分け

こんにちは白目みさえです。
臨床心理士/公認心理師、また漫画家として日々白目をむいて過ごしています。

精神科で勤務しながら、こんなところでも漫画家業をさせて頂いております。よろしければご覧くださいませ。


今回は専門家の方向けの研修で伝えた内容なども含まれているので一部有料にさせていただいております。


「カウンセリングってなんのためにするの?」に答えられますか?


カウンセリングの目的とは何か?と聞かれて、具体的に「こういうものだ」と説明できる人は少ないのではないでしょうか。

それっぽい言葉では説明できるのです。

その人が平かな気持ちで日々の生活を送ることができるように手伝うこと
本人の成長や発達、問題の解決をサポートすること
頭の中や自分の考えを整理してもらうこと

でも「それってどういう状態なん?」って聞かれると

「うふふん?」

ってなったりします。

「こればっかりは体験してもらわないとわからない」

みたいな怪しいセリフを吐くこともあるかもしれません。

そして実はカウンセラー自身もわかっていないこともあります。

私自身大学院を出立ての頃は、効くのかどうかわからない薬を売りつけているような違和感がありました。

心理学を学んでいく中で、時にはクライエントに教えてもらいながら、学ばせていただきながら、実際に自分が理論や療法を実践体験してみて、「なるほど確かに楽になる」「自分の悩みが解消された」「考え方が柔軟になった」と実感して初めて、カウンセリングはたしかに意味があると思えました。

でもここで注意点がひとつ。

私が楽になった経験が、そのままクライエントの答えになるとは限らないのです。

私にとってはこんな風に役に立ったけど、あなたにはどんな風に役に立つのかわからない…でもしいて共通点を見出すのだとすれば「成長」とか「楽になる」とか「整理された」ということがどうやらカウンセリングの効果らしい…という答えになってしまいます。

諸先輩方が口を揃えて同じことを言うので、初心者の頃はただただそれを真似て私も同じように説明していましたが、経験を積んで理解を深め、自分も体験をして…結局一周回るとやっぱりそういうぼんやりとした説明になるんだな…という段階に今私は立っています。


私にとってのカウンセリングの目的

ただ私の中で大事にしていることがひとつありまして。

カウンセリングの最も大きな目的は

「その人にとってカウンセリング(カウンセラー)がいらなくなること」

だと思っています。

今ここでは「その人にとって」としましたが、もう少し大きな意味合いで言うと「社会にとって」と言えるかもしれません。


世の中で心の病に苦しんでいる人がいなくなればカウンセラーは必要ありません。
医師や弁護士と同じく、苦しんでいる人がいて成り立つ職業なのです。


なので私たちは常に「必要なくなること」を望みながらクライエントとお会いしなければならない。
どんな方に会う場合でも、それが一番大切なことだと私は思っています。


カウンセリングに来る方は「誰かに話を聞いてもらいたい」「話を聞いてくれる人がいない」「聞いてくれそうな人はいても、気遣ってしまって話せない」みたいな理由で訪れます。

その瞬間は医師やカウンセラーにしか頼れない状態でやってきます。

でもそこから何を目標にカウンセリングを続けていくのかというと


カウンセラーに頼らなくてもなんとかなる。

カウンセラーに話すほど重い話はもう無くなった。

カウンセラーに聞いてもらってスッキリしたからもういい。

カウンセラーじゃなくても聞いてくれる人が見つかった。

カウンセラーはもういらないかな。


という思いを抱いてもらうために続けます。


おそらくカウンセラーを目指す人の何人かは「自分を必要として欲しい」という思いで志します。

それ自体は悪いことではありません。

誰かの役に立ちたい、自分の力で誰かが幸せになれば、自分を求めてきて欲しい…。

それ「だけ」では困りますが、そんな思いはあってもいいのです。

でも臨床経験を積んでいると段々気づいてくると思います。


「必要としなくなって欲しい」という思いで会い続けていかなければならないのだという事実に。


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