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打者は野球のスイングの成功について、視覚・聴覚・触覚の情報をどのように利用しているのか?


2009年

バッティング・シミュレーションを使った研究

実験1 野球スイングの精度がフィードバックによって変化するのか?

⚾️目的

1つの感覚のみのフィードバックを与えた条件でバッティングのパフォーマンスを測定し、フィードバックを与えなかった場合のパフォーマンスと比較すること

⚾️対象

大学でプレーする10人の野球選手 (競技歴:13.7年、年齢21.3歳)

⚾️方法

1つのフィードバックを与えてのシュミレーションバッティング※各項目30回の試行 (合計120回)
①フィードバックなし
②視覚フィードバックのみ
③聴覚フィードバックのみ
④触覚フィードバックのみ

打者はフィードバックについて以下の簡単な説明を受けた
- フィードバックなし:"スイングが終わると画面が真っ白になります"
- 視覚:"ボールを打てば、バットから仮想フィールドに飛んでいくのが見える"
- 聴覚: "ボールを打つと、バットの音がします"
- 触覚:"ボールを打てば、バットの振動を感じる"
※打者は、接触位置によってフィードバックがどのように変化するかは知らされていなかった

⚾️評価項目

バットスイングの精度(ボールとバット真芯との距離)

⚾️結果

視覚的フィードバックは、聴覚・触覚フィードバックよりも野球スイング制御するのに有効であると示唆された
聴覚・触覚フィードバックは、フィードバックなしより、バットの真芯のズレが小さくなることが示された

⚾️考察

視覚フィードバックは、接触した瞬間から数秒後まで持続するのに対し、聴覚・触覚フィードバックは、接触から0.5秒以内に完了する
聴覚・触覚刺激のような短いフィードバックだと効果的に処理されない可能性がある
この実験では、1つのフィードバックしか利用出来ない条件を比較した。複数のフィードバック源があれば、バッティングの成績は向上すると考えられている


実験2 野球スイングの感覚情報がどのように組み合わされるか?

⚾️目的

視覚・聴覚・触覚フィードバックがどのように組み合わされるのか調べること

⚾️対象

実験1に参加しなかった16人の大学野球選手 (競技経験:12.4年、年齢:19.9歳)

⚾️方法

5段階のフィードバックが用いられた
バッターは提供されたフィードバックを実際の野球バッティングの時のように解釈して使うように指示された
視覚・触覚フィードバックの組み合わせ
視覚・聴覚フィードバックの組み合わせ
※聴覚・触覚フィードバックの組み合わせは、困難であったため行っていない

⚾️評価項目

感覚フィードバックの違いで、バットスイングの精度(ボールとバット真芯との距離)

⚾️結果

異なる感覚情報から提供されるフィードバックの一致度によって、変化することがわかった
打者は、全てのフィードバックを組み合わせて、バットの真芯に近づくようにスイングを調節している
また視覚的フィードバックと実際のバットの接触点との不一致は、聴覚・触覚フィードバックの不一致よりも、バットの真芯ズレが大きかった

⚾️考察

野球バッティングでは、視覚・聴覚・触覚のフィードバックが全て使用されていることが示唆される
複雑な運動動作の制御において、多感覚情報が重要な役割を果たすこと、そしてこれらの動作はもはや"視覚優位"と考えるべきではないことをされに裏付ける


⚾️まとめ

バッティングの時に、バットの位置とボールの位置を視覚的に正確に判断するのは難しい(ボールが速くなるほど難しい)
バッティングマニュアルには、バットから離れるボールに注意を集中することの重要性を強調する指示が頻繁にある
要は、外的な注意が最適なパフォーマンスをもたらすという仮説と一致している
初心者の場合は、手やバットの動きに注意を向けた時に一時的にスイングのミスが少なくなった
初心者の場合は、宣言的知識を活用することが提案されいる

熟練の野球選手は聴覚と触覚の両方のフィードバックを使ってよりバットの真芯に近い打点で、スイングしていたことを考えると、初心者の打者もこれらの他のフィードバック源に注意を向けるように指導すれば、バッティングスキルはさらに向上するかもしれない

⚾️研究の限界

バッティングシュミレーションを使ってること
聴覚と触覚フィードバックの忠実性

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