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【気ままな読書日記】手の届く写真集

あれは『佐藤健寿展』に行った時のこと。

美術館1Fの売店で見本の写真集を立ち読みしていると「その裏表紙、ボクなんっスよ」と見知らぬ男性に声をかけられた。
びっくりして振り向くと、ブラウンのサングラスにおしゃれアロハの男性がニコニコと私の手元を指さしている。背後には奥様とお子様もご一緒だ。
彼は平積みにしてある写真集から1冊手に取って裏返し「ホラ見ろ、パパだぞっ」とお子様に胸を張った。

写真集の裏表紙を飾るスーツ姿の男性は、目の前のアロハ氏とはまるで別人だ。サングラスに隠されて顔もハッキリわからない。だけどーーー

「いやあっ、とってもオトコマエに映っておられますねっ」

ちょこっと歓談してからさいならした。
ああ~~、びっくりした。まさか裏表紙のひとに遭遇するなんて。

で、その時に見ていたのがこちらの写真集。

1977年生まれの写真家・安森信が、同じ年に生まれた「同級生」100名を撮影した。
僧侶、公務員、漁師、保育士、フルート奏者、飲食業、若女将......様々な職業の同級生が、それぞれの仕事の現場でカメラと向き合う。

アロハ氏によれば、ここに映っているのはみーんな県内のひとばかり。
特別に用意されたモデルさんじゃなくて、ごく普通に生活している一般の人たちがモデルを務めているのだという。

それ聞いて思ったのだ。
なんて身近で、たのしい写真集なんだろう、って。

遠い世界の美しいモノや珍しいモノをみせてくれる写真集も素敵だけれど、こんな写真集もすごくいい。

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