絵が描けなくなった話。その3

3つ目の原因は『自信喪失&スランプ』

そういえば、専門学校の頃にも、描けなくなった事があった。学校のイベントで、生徒がそれぞれ本のデザインをして、投票をして順位を競うというのがあって、私はランク外だった。そして、そんな事で絵が描けなくなった。

たしか5位までが表彰されるランク内だったので、ランク外なんて何十人と居るのに、私は鉛筆で線が引けないレベルのスランプになってしまった。

今思うと、相当うぬぼれていたんだなぁと、むしろそれがすごいなと思うけど、それがその当時の私の、素直な心の反応だったので仕方が無い。

けど、程度の差こそあれ、案外こういうケースは多いんじゃないかと思う。私の知人に、剣道がとても強くて、試合のたびに注目を集めた人がいる。その人は大学に入って、自分より強い人がごろごろ居るのを目の当たりにして、剣道を辞めてしまったらしい。

きっと、探せばいくらでも、こういう人はいるんだと思う。珍しいことじゃないんだと思う。

私も単純に、自分より上手い人が沢山いて、やる気をなくしているだけかもしれない。理由をつけて、絵が下手だという事実から、目を逸らしているだけかも知れない。

専門学校でスランプになってしまったあの時期は、運悪くというか、デッサンの授業が多くて、どうしたものかと悩んだ。座学や色彩ならまだなんとかなったかもしれないのに、まったく手が動かない。生まれて初めてのスランプは興味深くすらあった。線を引こうとすると手が嫌がる。引いた線が絵の線じゃない。腕が気持ち悪い。

最初は、手を止めている私を見逃してくれていた先生も、だんだんと許してくれなくなり、私としても、学校に高額なお金を払い通っているので、限られた時間を無駄にしたくない。

スランプについて調べてみたり、なんとか描こうとしてみたけど、なかなか良くならならない。アニメが好きなので、主人公がスランプになってしまう魔女の宅急便を見てヒントを探したりもした。

最終的に効果があったのは、描き殴るという方法だった。

画用紙に、何も考えずに、クレヨンで色を塗りたくる。何枚も塗りたくっていると、腕にかかったロックのような物が少しずつ解除されていく感じがした。次にクレヨンで海や太陽やクジラを描いてみる。幼稚園児の頃の絵みたいだった。次にボールペンでザクザク絵を描く。細かいことはいっさい無視だ。それにまたクレヨンでグリグリと色を塗る。

クラスには繊細なタッチのイラストを描く人が多かったからか、それを見たクラスメイトに引かれてしまった。当時の私はかなり繊細で、人に引かれる事も苦手だったけど、描き続けた。そんな絵を数枚描いていると、不思議と少しずつ、デッサンの授業でまともな線を描けるようになっていき、そのうちにスランプから脱却していた。

どうしてそれでスランプから脱却できたのか、良くわからない。なんとなく、簡単なやり方なら…と思って始めたけど、スランプになった原因とは少しずれている気がする。けど、クレヨンで塗っていくうちに少しずつ「楽しく」なっていたかもしれない。楽しくないと、描けなくなるのかもしれない。

4つ目の原因はおそらくこれだ。楽しいという純粋な『動機を無くしてしまう事』かもしれない。これが、絵が描けなくなる一番の原因かもしれない。

「楽しい」とか「好き」とか、そういうシンプルな事に辿り着くとは思っていなかった。正直、絵を描いていた頃でも、あまり楽しいとは感じていなかった気がする。ひたすら描くことに集中していた。けど、そもそも楽しくて描いてたのだろうなと思った。そういうのって思っていた以上に大切なんだなと思った。ここまで書いて、全然違ったら切ないな。

次回からは、これらを踏まえて、描ける様になる作戦を実行します。

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