拝啓 ショパン様。世界一素敵な『ショパン ピアノコンチェルト1番』がここにあります。

https://youtu.be/iYhUtZWsCQg

拝啓ショパン様、で始まる長い直筆の手紙のような、そんな角野隼斗さんのショパンへの真摯な敬愛と、どこまでも純粋な真心のこもった、渾身の演奏だと思った。

聴けば聴くほど、角野さんがどれだけこの曲と真剣に対峙し、ショパンの音楽に渾身で向き合ってきたかが伝わってきて、その本気度と集中力と真剣白羽取りのような切迫感にヒリヒリしてくる程で、こちらも聴く回数を重ねるほどに、どんどん深くよりクリアに鮮やかに、この曲で角野さんが演奏で伝えたかった想いや情景が見えてくる気がする。

第一楽章から第三楽章まで音色はがらっと変わるけれど、そのどの楽章のどこのフレーズにもどんな短いパッセージにも、こだわり抜いた愛情を感じる。
ショパンは没後170年以上過ぎていて、もう当然のことながら言葉や想いは届かないけれど、
それでも「拝啓 ショパン様」で書き出しが始まり、
100年以上経た後世でも、その色褪せない音楽性に魅了されたもののひとりとして、
純粋な心持ちで、どこまでもおろそかにせず、この楽曲に真摯に対峙しきって、
一言一句を丁寧に丁寧に紡ぎだした、一音ごとに想いを語りかけるような、そんな全身全霊のショパンに捧げる演奏だと思いました。

どんな言葉を聴くより雄弁に、演奏から「ショパンのピアノコンチェルト1番」に対する角野さんの思い入れが伝わる。
ピアノの演奏が言葉より何より雄弁、というところが、かてぃんさんのピアノの最高にして最大の魅力だと個人的に思っているので、本当に素晴らしい演奏だなと思って大感動するとともに、あんまりにもその想いが伝わってくるのが嬉しくてなんだかニマニマしてしまう。
(気持ち悪いファンでほんとすみません……)

私はこの協奏曲が大好きなので、かてぃんさんにも前々からぜひ弾いていただきたくて、一年前の大舞台でもそれはとても聴きたかったのですが、もうこんな最高な演奏が聴けるなら場所や場面なんてほんと些末なことはどうだっていいと心底思う。どこでだって構わない。
この演奏の素晴らしさを、今のかてぃんさんを取り巻く環境ならば、あらゆる世界中の音楽愛好家が受け取る準備ができていると思うし、この演奏は必ず届いて大輪の感動の花を咲かせるから、私は今こうして録音して世界中に公開してくださったことが、とても嬉しいし幸せだと思う。

何度も書いてしまうけど(本当にこの感覚がいちばん私にしっくりくる)、聴けば聴くほど、これは現代を生きる角野隼斗さんからのショパンへの時を越えた手紙だなぁと感じて。
だからこそ、今の角野隼斗さんがこうして全身全霊で演奏した録音が残ることが嬉しい。それにはふたつの側面というか理由があって。

ひとつは、今ストリーミング全盛の時代で、初めてこの楽曲を音楽配信サービスやYouTubeで聴く人もいたりする訳で。
昔の誰かの踏襲ではなく、今に生きるピアニストとしてできることやその立ち位置について常に考えて疑問を持ち続けてきた角野さんだからこそ、そんな懐疑を吹っ飛ばすほどの、新鮮で鮮明で生き生きとした素晴らしい音を届けてくれた事が嬉しくて。
今の時代に生きる、私の敬愛するピアニストがこれ程までにこの一曲に向き合って、結実したこの演奏は、今まで聴いたどのピアニストの演奏よりも遥かに鮮明で、各楽章の色合いが全然違って、同じ楽章でもピアノの旋律から感じられる想いは場面ごとに移り変わって丁寧に丁寧に描写されて。
それはおそらく今の角野隼斗さんがご自身をこの楽曲に全身全霊で傾けて投影しているからであって、その結果ご本人の人柄さながらに、とても繊細で美しくて、奇をてらっていないのに新鮮で、どこまでも純粋で、一音一音の解像度が高くて、細部までこだわり抜いていて、最大限に楽曲の美しさや楽曲がもたらす歓びを伝えてくれるような演奏がここに生まれて。
そんな演奏を誰もがすぐに聴ける環境に配信してくれるということ。それは世界の音楽好きにとって万歳三唱したい程の幸福なできごとだと思う。

ふたつめは、全く個人的な動機で。
私はとてつもない大ばか野郎なので、初見のサントリーホール公演に心身ともぼろぼろの状態で行ってしまい、錆び付いた心と感性で、ぼんやり靄のかかった頭で聴いていたから、その奇跡のような幸福な演奏をきちんと余すことなく堪能しきれていなかった。
もっと言うと、そこで聴いた演奏が、今まで過去に聴いたどのショパンピアノ協奏曲1番の印象とも違っていて(それで言うとブラ1もそうだったのだけど)、というか端的に言うと、私の頭のなかが「この曲の演奏って大体こういう感じだよね」「大体こんな感じで盛り上がるよね」という固定観念で凝り固まっていて。
情けないことに、結局今を生きる音楽でなくて、こんな感じだよね、と過去の踏襲の音楽を、無意識ながら勝手に自分のなかのスタンダードにしていたせいで、この今を生きるピアノの代表格である角野さんが弾くピアノがとても新鮮でとても雄弁で繊細であったから、そんな新しい感動を受け入れる心の準備も、脳内のアップデートも全然できてなくて。。。
今こうしてようやくこの演奏のとてつもない深い魅力に気づいて、感銘でいっぱいになっている。リピートしまくっている。時間がかかってしまった。

今ようやく休職できて時間ができたから、こんな風にじっくりと聴ける。(そうでもしないと心身の余裕が出来ない程、追い込まれる生き方もどうかと思うけど…。これについては本当に自身を省みたいと思う。角野さんのピアノを聴いていると、圧し殺していた気持ちや壊れかけていた心が元気を取り戻して膨らんでくるので、特にそう痛感する)
もしこれが録音&配信されなかったら、こんな素晴らしい演奏に、角野さんが込めただろうとてつもなく豊かで深い想いに、演奏の細部まで込めた愛情に、気づけなかったかもしれない。
なので、個人的にもこうして残してくださった事がとても嬉しい。とても有り難かった。

本当に何度も聴いてて、その度にこの演奏の素晴らしさがより伝わって、より大好きになるし、より感銘を受けて、毎度めちゃくちゃ感激する。毎回、感激が更新される。
過去に聴いていた他の方の演奏を素晴らしいと思っていた気持ちとは比べ物にならない程に、この演奏は何だかどんどん自分ごとになっていて。
聴く程に自分のなかで大きく深くかけがえのないものになっていって、より自分の心に寄り添ったものとして、自分自身の宝物になってくれている。そんな風に思わせてくれる演奏はなかなか出会えない。奇跡みたいに貴重で、最高に素敵な演奏だなと思う。
その恩人として忘れてはいけないのが指揮者のマリンさんと素晴らしいオーケストラで、繊細なコントロールで美しく歌うオケと、角野隼斗さんのピアノの調和による相乗効果が素晴らしくて、それがより一層の感激をもたらしてくれている。本当に感激です。ありがとうございます!

めっちゃ長い割に中身のない文章になってしまいました。申し訳ありません。。。
伝えたかったのは心からの御礼と沢山の感謝です。
角野隼斗さん。マリン・オルソップさん。
本当にこんなに素晴らしい演奏を残してくださり、心から感謝します。
最高に素敵なショパンのピアノコンチェルト1番を聴かせてくださってありがとうございます。
世界一素敵なコンチェルトでした!!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?