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【WACK】零街の片隅へ3

今年もそろそろ終わりか…。

ここに来るのは半年ぶり、いや、もっとか。

いつのまにか、街の喧騒が嘘のように辺りは静まり返っていた。

ここはもはや人々の記憶から忘れ去られようとする場所、零街。始まりの街であり、終わりの街である。

白は慣れた足取りで、生き物の気配さえ希薄な、入口を固く閉ざした店々の前を進んでいく。

幾つの筋を数えただろうか、ある扉の前に立つと不可思議な紫色の光を帯びた扉の一部分に、覗き込むような形で視線を合わせた。

その目前に、あたかも以前から存在していたような確かさで下り階段が現出する。深い闇の向こうにある微かな光の源に向かって、前足を踏み出し、白は闇へと溶けた。

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「やあ、ゆきみんいるかい?」

青白い光の飛び交うその空間に声をかけると、確かな存在感が空気の束となってゆっくりと渦を巻き始める。

「あら、久しぶりね。元気だった?」
ローブを纏う女性が振り向くようにこちらに顔を向ける。
「この間は美味しいカモミールミルクをごちそうさま」
ついこの間のように白が言う。時間の概念がどこか狂っているのかもしれない。

「世間はすっかり年の暮れね。今日はどうしたの?」
「いや、ちょっと早いんだが誕生日のお祝いを一言ね。」
「あら、ありがとう。そういえば、そういう貴方もおめでとう。」
そう言うと、お互い目を合わせて笑う。

「最近は君の力をちょっと借りて神託をさせてもらっているよ。」

「今日は、こんな神託が出た。」

衝動だけで動くことなかれ
自分の中の楽しさを芽吹かせる 
今ある世界の上に 自分らしさを輝かせる
その中に 楽しさの探索は忘れてはいけない

「ここを開くと、更なるジオマンシーの扉があってね。さらに進むと、待っていたのはカウダ・ドラコニス。まさに年の暮にふさわしい」

「いつも導きをありがとう。さて、ゆきみん、せっかくだから、もう少し話をしていこうと思うんだが、付き合ってくれるかい?」

そう言うと、白はゆきみんの斜向かいにある椅子に腰を下ろした。


今日はゆきみんのお誕生日企画への参加だよ😊



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