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【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』

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【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』のまとめです。完結済み。 アサとユキはともに高校一年生。もうじき、幼馴染の二人にとって、高校生になって初めての夏休みがやってくる。アサにはユキ…
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#長編小説

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第1話

 耳元でスマホが小刻みにふるえている。短いバイブ音が断続的に聞こえてくる。それは小刻みに…

小山内 裕
2年前

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第2話

「ユ、ユキぃー」  泣きそうな顔でアサはやってきた。ユキはかったるそうな顔をして、めそめ…

小山内 裕
2年前

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第3話

 アサは学年ごとにある掲示板の前で途方にくれていた。 「こんなたくさんなんて、聞いてない…

小山内 裕
2年前

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第4話

 ユキは、自分に呼び出しがかかっていることを知っていた。体育が終わって下駄箱に戻ると、青…

小山内 裕
2年前

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第5話

 学校の自転車置き場は日陰になっているから夏でもひんやりといている。一人、また一人と自分…

小山内 裕
2年前

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第6話

 机の上がすごい勢いで散らかっていく。始めはノートや教科書類だけだったはずなのに、気付け…

小山内 裕
2年前

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第7話

 ミルク色のお湯につかりながら、ぼんやりと天井を見上げた。真っ白い湯気で天井についている電球がぼんやりとしていて、姿を定かにしていない。何を考えるとも無くとそれを見ていると、今日の午後の怖かったことを思い出した。嫌な気分になって、お風呂に顔を半分ぐらい沈める。  ユキに言い寄ってきた人なのに、今日ユキを待っている間にアサのラインを聞いてきた人。本当に、立ってられないほど怖くなった。セカイがアサ一人の時に音を立てて動こうとしていた。 「まだ、ちゃんとユキに言ってない……」  い

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第8話

 いつのまにか、夜、星を見上げてホットミルクを飲むことが習慣となっていた。夏だったら、半…

小山内 裕
2年前

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第12話

「どういうことか、説明してほしい」  甘口のカレーをせっせと口に運びながら、野菜を一人ひ…

小山内 裕
2年前

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第13話

 日焼けする、とひるんだのはほんの一瞬で、次の瞬間には海がキラキラと光る様子に目が奪わ…

小山内 裕
2年前

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第14話

 港に下りると、船の上よりも何となく塩の香りを強く感じた。海にまっすぐ伸びたコンクリの岬…

小山内 裕
2年前

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第15話

 広い玄関に入って息を深く吸うと、湿った木に匂いがした。いい加減ヒールが高いサンダルは疲…

小山内 裕
2年前

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第16話

 横に広いの階段がぎっぎっと軋んている音が聞こえて、振り向いた。ユキの綺麗な黒い髪がちら…

小山内 裕
2年前

【小説】『もうすぐ、光の玉が爆ぜる』第17話

 商店街の終わりが見えてきた。  古臭い灰色のレンガが並んだ地面の両脇を、小さな店がいくつもひしめきあっている。藍色ののれんをぶら下げた魚屋。真っ赤に熟れたトマトがいくつも並んでいる八百屋。緑の大きな屋根には、白い字で店名が書かれている。その隣は果物屋で、その隣が豆腐屋だ。夕方に近くなってきたこの時間は、だんだんと人が増えてくる。通りにぼちぼちいる買い物カゴをぶら下げたおばさんたちは、アサやユキ、諒を見るだけで親しげに呼びかけてくれる。  島に唯一ある洋服屋や八百屋が立ち並ぶ