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[SR-001-05] 第四章:レッスンの必要性を考える

本ページは「社会人のための楽器の継続と上達の手引き」の全11ページ中の5ページ目で、「第四章:レッスンの必要性を考える」の章です。

※本書にはペーパーバック版およびKindle版も存在します。また、書籍の詳細については、シロイブックス公式サイトの書籍情報のページもご利用ください。


独学でもよいが、レッスンで得るものは多い

幻想を取り除く

レッスンについて、私の考え方を最初に明らかにしておきます。それは「独学をメインにしても大丈夫だが、レッスンで得られるものは多いので、しっかり活用したほうがよい」ということです。

「バイオリンを習い始めるのは三歳からがベスト」などと言われることがありますね。特にクラシックの世界においては、音楽をやるということにはさまざまな幻想が存在しています。これを取り除くことは、自由な気持ちで楽器を楽しめるようになるためには必須なので、このことについてここで少し考えてみるのは意味があることです。

こうした教育は、何故かプロ奏者のようになるということを常に前提としていて、それが成功しなくとも、たとえばバイオリンを弾けるということは少なくともステータスになります。テクニックが大切で、ミスなく弾けるということが何よりも重要です。音楽の世界にも正しいことと間違ったことが存在するとされていて、常に正しいことを選ぶべきだと考えられています。

練習において「こちらのほうが効率的な上達に対して適切」という方法を選ぶことは確かに大切ですが、ここで言う「正しさ」というのはそのようなトレーニングとしての妥当性という意味ではなく、「正しさ」という権威のことを指しています。これは自分自身の音楽性の根拠を、顔も知らない誰かに求めるということで、そこには自分の感じ方や考え方というのが何もありません。

ロックミュージシャンが真面目な顔をしてエレキギター教室に習いに行ったという話はあまり聞きませんよね。私のやっているアイルランド音楽などの民族音楽もそうで、大人になってからフィドル(バイオリン)を一から始めたという人はざらにいます。あなたがギターや民族楽器を始める場合は、このようなクラシックの伝統的な重圧からは無縁でいられるかもしれませんが、もしもピアノやバイオリンをやる場合、こうした無意識のレッスン幻想は、心の重荷になる恐れがあります。特に、三歳からレッスンを始めたか否かというのはまったく変更不可能な過去の事実なので、これにいちいち思い悩んだとしてもどうにもならないことです。

あなたの目的は、あくまで人生の中で楽器の演奏を心から楽しめるようになることであるはずです。「小さい頃からレッスンを受けていないからダメなのかな」という考え方は余計なものなので、早めに捨ててしまうことが肝心になります。

レッスンで得られる三つの効果

とはいえ、レッスンが大切でないと主張するつもりはまったくありません。レッスンで得られるものを大まかに分けると、道すじ、お手本、指摘という三つの言葉で表せると思います。

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