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[SR-001-03] 第二章:練習をどう続けるか

本ページは「社会人のための楽器の継続と上達の手引き」の全11ページ中の3ページ目で、「第二章:練習をどう続けるか」の章です。

※本書にはペーパーバック版およびKindle版も存在します。また、書籍の詳細については、シロイブックス公式サイトの書籍情報のページもご利用ください。


習慣化の基本的な考え方

時間をかけて、自分なりのやり方を探す

楽器の練習についての基本的な考え方は、歯磨きや掃除といった日々のあれこれと同じように、練習するということを生活のルーチンにしてしまうということです。ここに定まったわかりやすい答えはないので、自分にしっくりくるやり方を見つけられるまでには、いろいろ試してみるための時間が必要となります。

部屋の掃除のような簡単なことをとっても、それが気を抜けばすぐにサボってしまいがちで、習慣化が案外難しいということは知っていますよね。楽器の習慣化は、もう少し難易度が高くなるはずです。

本書の全体に言えることですが、人は置かれた環境も性格傾向もそれぞれ違うので、この章で述べるのはあくまで基本となる考え方です。なるべく具体的な例を挙げていくとはいえ、実際の習慣にうまく落とし込むのは、読者のみなさんのそれぞれの仕事になります。いきなり突き放されたような感覚を持たれたら申し訳ないですが、「本当は難しいことについて簡単なフリをしない」というのは本書で大切にしたいと考えているポイントなので、どうぞご理解くださいね。

習慣化について、最初に実例を出しておきましょう。たとえば私の場合は、土曜日の朝に近所の遊歩道の脇にある公園に出かけるようにして、気持ちを休日モードに切り替えて練習するという方法が効果的でした。ここには、私が元々散歩好きであること、たまたま近くに自由に音を出せる公園があること、私の楽器がアンプのいらない小型のアコースティック楽器であることなどが関係しています。そのため、あなたが都心に住んでいてエレキギターをやっているような場合であれば、方法はまた違ってくるはずです。

ただ、ここで私が行なっている「決まった時間、決まった場所への外出」というのは、このあと述べる「スイッチを入れる」という行動で、これは誰に対しても広く応用が可能なノウハウです。本書で述べる応用可能なノウハウと、あなたの個別的な状況を合わせて、自分なりにうまく練習を継続できる方法を見つけていってくださいね。

仕事の忙しさや、家庭での普段の時間割が変化することはよくあるので、習慣にはそのときどきの状況に応じた微調整も必要になります。人が生活の中で何かを継続するということについては、一度やり方が確定したからそれで終わりということはめったにありません。これは楽器の上達にゴールがないということと同じで、いつでも試行錯誤は必要です。

もちろん、何事も無理をすると続かないということはあります。じっくりと時間をかけて、自分に合った方法を見つけていきましょう。

結果はすぐには出ず、それが当たり前である

第一章で、楽器に向き合うというのは大変なことなのだという話をしました。この要因を考えてみると、結果がすぐに出るということは基本的にない、ということがまず挙げられると思います。

人が何かを身につけるには、とても長い時間がかかります。あなたが当たり前に行なっている日本語の読み書きについて、小学校の頃にどれだけ授業の時間が確保されていたかということは、おそらくもう覚えていないことでしょう。人付き合いだって、何十年生きていても完璧には行えないのが人間というものです。自分のスキルというのはいつまで経っても不十分で、その不十分であるという事実を受け入れて、その中でどうにかめげずにやっていくという必要が出てきます。

これは楽器についても同じです。昨日の練習の成果が今日出るということはあまりないし、すぐに上手に弾けるようになるということは絶対にありません。これから十年経ったとしても、「まだ十年分しか積み重ねられていないのか」といった気持ちになると思います。自分で自分の演奏技術に満足しているという状態にも、おそらく到達しないはずです。

ただ、十年だったら365日か366日が十回繰り返されたということで、これは実際にやった人だけが得られる成果です。これはほとんど農業のようなもので、やるべきことを日々淡々とやりながら、成果が実るのを根気強く待つという姿勢が必要になってきます。これから述べる継続のためのノウハウは、この難しい現実に対処するという視点で書かれています。

上達の伸び悩みや、モチベーションが落ちてしまったという問題は、楽器を続けていれば必ずぶつかります。これについては、第八章で改めて詳しく考えていきたいと思います。

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