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[SR-001-11] おわりに:あなたに伝えたかったこと

本ページは「社会人のための楽器の継続と上達の手引き」の11ページ中の11ページ目で、「おわりに:あなたに伝えたかったこと」の章です。本書の最終ページです。

※本書にはペーパーバック版およびKindle版も存在します。また、書籍の詳細については、シロイブックス公式サイトの書籍情報のページもご利用ください。


ときどき振り返ろう

音声と映像を残し、たまに見返す

楽器に取り組むということは、長い長い道のりになります。人は過ぎたことをけっこう簡単に忘れてしまうので、ときどき自分の歩んできた道のりを振り返るということをするといいと思います。あなたが努力したということ、実際に前進したのだということを思い出すんです。

演奏を録音してあとから聴き返すということは、自分の演奏技術の客観視という意味で、第三章の「テクニックの話」でも触れました。ここで、音声や映像の記録が持つもうひとつの役割について考えてみましょう。それは、自らが歩んできた道を振り返るためのツールという役割です。

幸いにも、現代では高機能なスマホが普及していて、写真も動画も録音もすべてがこれひとつで残せます。一昔前でしたら、演奏を録画をしようと思ったらビデオカメラとマイクなどの専用の機材が必要だったはずですよね。なんでもない日々の記録を手軽に残すということはできなかったし、晴れ舞台では機材とそれを扱う技能を持っている人にわざわざお願いするということが必要でした。こうしたことが、今ではお金をかけずに全部自分でできるようになっています。

まずは録音という方法です。私はひとりで練習するとき、必ずスマホで録音を回しっぱなしにしておくという習慣を持っています。これは自分の演奏を客観的に振り返るという実用面と、思い出として残すという楽しみの面があります。録音はボタンを押すだけですから、あとになってさほど聴き返さなかったとしても、特に損はしません。ここまで日常的にやるかどうかはみなさんの判断にお任せしますが、少なくとも自分の出演する発表会やライブなどのイベントについては、忘れずに録音しておくといいと思います。人の演奏が一緒に入る場合は、マナーとして録音していいかを尋ねておきましょう。

写真も大切で、こちらは実用面でなく思い出づくりが目的ですね。とはいっても、思い出はモチベーションの源になりますから、ある意味では実用目的です。音楽イベントの際には、演奏風景や周囲の様子について、写真を残しましょう。自分で撮るのもいいし、その場に一緒にいる人も写真を撮っていることは多いので、帰ったあとで積極的にお互いの撮った写真を送り合う習慣を定着させるのもいいと思います。自分の演奏姿は自分では撮れませんからね。イベントなどでなくても、人の家で一緒に練習した風景なども思い出になります。日常というのは意識して残さないと残らないので、どうでもいいことでもシャッターを切ってみましょう。不要になれば、あとで消去すればいいだけの話です。

動画は映像と音声の組み合わせなので、空気感をそのまま残すという重要な役割があります。撮ったときには意識していなかった人々のざわめきや、たまたま映り込んだ知り合いの姿などは、晴れ舞台での演奏そのものとは違った感慨を呼び起こしてくれます。

記録については、紙のノートやスマホのメモに書いたこともその一部になります。ライブのセットリストをあれこり考えたり、取り組んでいる曲を整理するときに、それを書き出すということがありますね。いつも持ち歩いていてボロボロになったノートが、あなたにとって特別なものになっているということにいつの日か気づくことがあります。こうしたことはすべて、やる気を持ち上げる間接的な力になります。

時間が経ったら、またこのページを開いてほしい

経験を積むと、見えるものが変わります。楽器を弾くことに上達すると、人の演奏はより精密に聴こえるようになるし、音楽について書かれた本も、以前はわからなかった「こういうことが言いたかったのか」というポイントが深く理解できるようになるはずです。

また、自分が必要としているものも変わります。楽器を始めた最初のうちは、どうやったら挫折せずに練習を続けられるだろうということが気になりますし、演奏に熟練してくれば、表現のニュアンスについて何かヒントは得られないだろうかということを考えるようになります。

本書は主に、楽器を始めてからさほど年数の経ってない人に向けて書かれました。十分に年数を重ねたあとでは、この本で述べた内容については自然に身についていることのほうが多いかもしれません。いつか、本書に書かれた内容があなたにとってごく当たり前なことばかりになるということもあるでしょう。そうなった場合でも、いつの間にか忘れたりしていた大切な視点を補うために、本書を参照していただければと思います。

第八章の「モチベーションが落ちたときには」では、心の停滞という難しい問題について、ひとつの章をまるごと使って考えました。いまいちやる気が出ない、なんだか新鮮さを失ってしまったように感じるといったことは、どうしてもあります。誰にだってあります。そんなとき、本書があなたにとって何らかの助けとなることを望んでいます。私が本書で目指したのは、使える知識を提供するということと、あなたに前向きに頑張ろうという強い気持ちを思い起こしてもらうことです。私はそのような目的で本書を書きました。

本書のおさらいと結び

重要なポイントの一覧

さて、本書で述べてきた内容のうち、特に覚えておいてほしいという大切なポイントについて、箇条書きにして振り返ってみましょう。各章でお伝えしたかったメッセージを要約すると、以下のようになります。

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