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[SR-001-04] 第三章:テクニックの話

本ページは「社会人のための楽器の継続と上達の手引き」の全11ページ中の4ページ目で、「第三章:テクニックの話」の章です。

※本書にはペーパーバック版およびKindle版も存在します。また、書籍の詳細については、シロイブックス公式サイトの書籍情報のページもご利用ください。


上達の核心はどこにあるのか

演奏能力とは別に、上達するための能力がある

「はじめに」の章でも触れたとおり、本書は対象となる音楽のジャンルや楽器を限定していません。個別の楽器についての解説や教則本というのは、既にたくさん存在していますし、そうしたものはそれぞれの楽器を専門にしている人が書くことが適切です。では、この章で扱いたいと思っているテクニックというのは、具体的にはどのようなものを指しているのでしょうか。

私がこの章でお伝えしたいと思っている内容について、前提となる考え方がふたつあります。まず、音楽を表現するということの中には、楽器やジャンルを問わず共通する、重要な要素が存在するということ。そして、テクニックというのは単に指を動かす能力のレベルが今現在どこにあるのかという話ではなくて、自分の技術を客観的に点検し、改善点に気づき、これを修正していくための習慣やノウハウを持っているかという視点が存在するということです。

何かを身につけるということを考えるなら、今の時点でどれほど多く知識を持っているのかということより、勉強するという習慣や自分なりの方法論がその人の中にあるかということのほうが、よほど重要です。習慣づけの話については、前の第二章の「練習をどう続けるか」で詳しく考えました。この章で目指していきたいのは、テクニックを伸ばすために使える方法論を、あなたの中に増やしていくことです。

あなた自身の演奏レベルとは別に、あなたの中には「自分を向上させるための能力」とでも呼ぶべきものが存在しています。注目すべきポイントはそこです。演奏の技術そのものを伸ばすということと同時に、自分を伸ばすための能力を徐々に身につけていくことを意識していきましょう。

点検という習慣を持つ

俯瞰的な視点を持つことが大切だとはいえ、抽象的な話ばかりでは意味がありません。そのためこの章では、自分を伸ばすための能力を身につけるための練習方法について、なるべく具体的に述べていきたいと思います。音楽の中で注目すべき個別の要素を特定して、それを伸ばすために何らかの手段や道具を使うこととし、目に見える練習方法として役立てられるものだけを扱います。

先の第二章の「練習を続けるためには」では、練習の習慣化という点を強調しました。この章で述べるさまざまな練習方法についても、習慣化ということはやはり大切です。毎日の練習ですべてをひととおりやるという必要はないので、今日はこれをやってみよう、最近あれをやっていない気がするからやってみようかな、という感じで大丈夫です。さきほど上達における大切な視点として「点検」という言葉を使いましたが、点検というのはときどき行えば、それでしっかり効果が出ます。

それでは、あなた自身の演奏技術と、それを伸ばすための能力そのものについて、どう鍛えていけばいいのかという点を詳しく考えていきましょう。

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