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[SR-001-06] 第五章:人前で演奏すること

本ページは「社会人のための楽器の継続と上達の手引き」の全11ページ中の6ページ目で、「第五章:人前で演奏すること」の章です。

※本書にはペーパーバック版およびKindle版も存在します。また、書籍の詳細については、シロイブックス公式サイトの書籍情報のページもご利用ください。


いつかを待たず、早めに人前に出る

「上手くなったら」は永遠に来ない

楽器を真剣にやるのであれば、いつか人前で弾けるほど上手になりたいと思いますよね。

この「いつか」ですが、待っていれば向こうからやってくるということはありません。自分から「そこに行こう」と決めた人だけが手に入れることができます。これは「今から時間をかけて達成しよう」という意味ではなくて、「今、この瞬間にもう自分はそこに仲間入りしたんだ」と決めてしまうような、意図的な認識の切り替えが必要になってきます。

少しでも客観的な目を持っている人なら、自分の演奏が十分に上手いと納得できるようなことはまずないはずです。あなたがどこかの屋外イベントやライブなどに行って、アマチュアの人なのに「この人はめちゃくちゃ上手いな」と驚かされるような演奏を目にしたとしましょう。実際のところ、この人の心の中は、おそらくあなたとそんなに変わりありません。足りないところが山ほどあると常に思っていて、ときどき思い悩んだりやる気をなくしたりしています。

人前に出るために必要なレベルというのは、確かにあります。ミスタッチを頻繁にせず、テンポを乱さずに最後まで普通に弾き切れるといったことですね。これが一応間違いなく行えるようになると、そこから先は表現の話で、これ以降は終わりというものがなくなります。

少し早いかなと思っても、足を踏み出してください。そこに行った人は、皆そうしているはずです。過去にそうしなかった人は、今もずっと人前に出られずにいます。

得られるものは想像以上に多い

人前に出るということには、上達に対して一般的に想像される以上の効果があります。おそらく、演奏の技術が一定のレベル以上に達している人で、人前で弾くという経験を積んでいない人は存在しないのではないかと思います。

この章では、人前で弾くということで得られるものと、その場面に上手に対処するための心の姿勢について考えていきたいと思います。この難しいステップに立ち向かう上で、ぜひとも強調しておきたいポイントがあって、それは人前で弾くということが極めて楽しく、モチベーションを刺激される経験だということです。

人は楽しいことであれば自然とそれを続けるし、逆に面白くないことであればやりません。そのため、本書の全体も、練習と演奏活動をどうすれば面白くしていけるだろうかという観点で書かれています。この本を開いている読者の方には、現時点ではまだステージに立つ経験をしていないという人も多いことでしょう。

もしそうであれば、この先に待っている楽しみについて、大いに期待してください。これは筆者が自信を持って保証します。あなたが人前で何かをするということは、自宅のソファで寝そべりながら受け取るどんな娯楽よりも、刺激的で面白い経験になる可能性が高いです。

「はじめに」の章で、本書の本当の目的が「人生の中で真剣に打ち込みたいという対象を見つけ、生きがいをつくっていく」点にあると述べたことを思い出してください。おそらく、それは舞台に上がった先にあります。

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