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【官能小説】アイドルマスターシャイニーカラーズの桑山千雪とプロデューサーが甘々セックスするお話【1/5話】

このお話はアイドルマスターシャイニーカラーズの二次創作です。本編とは繋がりがありません。主人公は前のお話とは別の人物です。

「楽しくて素敵な人達でしたね」
「本当だな。半日しか一緒に仕事していないのに、もう何年も前から知っている人達みたいだった」
 隣にいる女性の言葉を受けて、俺は今日の営業で出会った人達のことを思い返す。夜の町を往くタクシーの車窓に、気さくで温かい地元観光課と商店街の方々の顔が浮かんだ。
 後部座席の隣で穏やかに微笑んでいる女性は、俺が担当しているアイドルの桑山千雪。今日は千雪の仕事の関係で、午前の早い時間から新幹線で移動し、正午前に現場入りした。
「さっきの打ち上げで頂いたお料理、どれも美味しかったです。私、本場の湯葉を食べたの、はじめてで。舌触りがとっても滑らかで、味も繊細で、いつかまた食べに来たいです」
「そっか、千雪は山口だもんな。こっちのほうに来る機会はあまりなかったか」
「はい。いつか東照宮にもお参りに行きたいんですけど、今日、こちらに来てますます行きたくなっちゃいました」
「ははは。それじゃあ今度は東照宮関係の仕事が取れるよう、頑張ってみるよ」
「いえ、そんな……。こんなことでプロデューサーさんのお手を煩わせる訳にはいかないので、個人で計画を立ててみますね」
 別に俺は構わないのに。奥ゆかしい女性だ。
 最近は千雪単独の仕事が随分増えた。彼女の所属ユニットの「アルストロメリア」での仕事も増えているが、個人で指名されることが多くなっている。
 千雪の魅力を理解してくれる人が増えたということだろう、デビューから二人三脚でやってきた俺としては非常にうれしく、誇らしい。
 今日の観光イベントの仕事も好評だった。
 発注元の観光課の人達はもちろん、協力スタッフである地元商店街のおじさんやおばさん達からの評判も良かった。穏やかで優しく、思慮深い千雪の人柄が受けていたようだ。娘のように可愛がられていた。「絶対また来てね」と、お土産を両手いっぱいに持たされていた。
「会場も盛り上がっていたな。課長さんから『是非またお願いしたい』って言われたぞ」
「わあ……! うれしいです」
 千雪が顔をほころばせ、片手を頬に当てた。
「今日は移動もあったし、トークにミニライブにとたくさん動いて疲れただろう。今日はもうなにもないから、ホテルに着いたらゆっくり休んでくれ」
 俺も後は報告書をまとめて、明日の午後からの仕事の確認をするだけだ。正直、俺も今日は早めに休めることに安堵していた。
 いつもアイドルとの移動のときは運転しているから、タクシーは楽でいい。俺は背もたれに深く寄りかかって、仕事の緊張を静かにほどいていった。

「え? 部屋が取れてない?」
 ロビーなのにも関わらず、思わず大きな声を出してしまった。
 気持ちが休息モードに入りつつあったので、予想外のトラブルに俺は身を硬くした。
「はい、大変申し訳ございません……。私どものミスで、シングルのお部屋をお二人様分ご用意するはずが、ツインのお部屋を一部屋しかご用意しておりませんでした。あいにく、もうシングルは埋まっておりまして、今から取り直すことは……」
「そうですか……。まいったな」
 チラッと、後ろのソファーで待たせている千雪を見る。まさか、千雪と同じ部屋に泊まるわけにはいかない。どうしようか。
「近隣のホテルや旅館に当たって空室を探したのですが、連休の初日と言うことでどこも満室で……。まことに申し訳ございません」
 ピシッとしたスーツを纏った、フロント係の男性が頭を下げた。
 困った。近くにネットカフェでもあれば、俺だけそこで夜を明かせばいいけれど、この町はそれほど開けた町ではないのでそれは望めない。
 ……仕方がない、最悪ロビーで過ごしてもいいか。
「分かりました。では、その一部屋だけで大丈夫です」
「畏まりました。お代のほうはサービスとさせて頂きます。この度はお客様に大変ご不便をおかけ致します。朝食ビュッフェは六時三十分から九時までですので、宜しければご利用ください」
 再度頭を下げたスタッフさんから、部屋の鍵を受け取った。長方形のキーホルダーが付いた、昔懐かしいキーだ。
「千雪」
 俺は待合スペースで本を読んでいた担当アイドルに声をかけた。
「あ。プロデューサーさん。お手続きしてくださってありがとうございました」
「あのな、ちょっとまずいことになって……」
「まずいこと、ですか?」
「実は、ホテル側の手違いで部屋がひとつしか取れていなかったんだ」
「え……」
 彼女の端正な顔が陰った。
「ツインの部屋が一部屋だけなんだ。しょうがないから、俺は居酒屋にでも行って朝まで時間を潰すから、千雪は部屋でゆっくり休んでくれ」
「そんな……。でしたら、私もご一緒します」
「なにを言っているんだ。そんなこと、させられるわけないだろう。千雪は明日もスケジュールが入っているんだし」
「それはプロデューサーさんだって同じじゃないですか。私、同室でもいいですからプロデューサーさんもお部屋を使ってください」
 これで千雪も結構頑固なところがあるからな。これ以上問答を繰り返しても平行線をたどりそうだ。
 チラッと腕時計の文字盤を確認する。もう二十一時半か。早く千雪を休ませてあげたいし、いつまでもここにいるわけにはいかない。
 俺は痒くもない頭を掻いた。
「……分かった。申し訳ないが、一晩だけ、我慢してくれ。俺もなるだけ千雪が快適に過ごせるように努めるから」
「はい! でも、そんなにお気を遣わなくて大丈夫ですからね」
 こんな訳で、俺はあろうことか、担当アイドルとホテルの同じ部屋で一夜を明かすことになってしまった。
 
 部屋は思っていたよりも広かった。
 並べて設置されたシングルサイズのベッドが二つに、ローテーブルを挟んで、椅子が二つ置かれている。トイレと浴室、洗面台はそれぞれ別々だった。
 荷物を置いた俺はとりあえずエアコンのスイッチを入れた。もう九月半ばとは言え、まだまだ気温は高く、部屋の中も少し暑かった。
 千雪も荷物を置いて、お茶を淹れてくれている。ティーバッグの緑茶だが、突然の事態に焦って喉が乾いていた俺にはありがたい。
「プロデューサーさん、お茶が入りました。どうぞ」
「ああ、ありがとう」
 テーブルに千雪が飲み物を運んでくれた。
 湯気が昇っているティーカップ。一口飲むと、温かさで心が幾分落ち着いた。
「ふう……。さてと、これを飲んだら俺はロビーで残りの仕事を片づけるから、その間に千雪はゆっくり風呂にでも入ってくれ」
「そんな、ここでお仕事なさってください。私、平気ですから」
 千雪が悲しそうな表情を浮かべた。
「いやいや、落ち着いて入れないだろう? 自分のせいで担当アイドルが休めないなんて、プロデューサー失格だ。な、頼むからそうしてくれ」
 多分、俺は困った顔をしていたのだろう。俺の顔をじっと見ていた千雪が、「……はい」と控えめな声量で了承してくれた。
 やれやれ、折角いい気分だったのに、とんだことになってしまったな。俺はお茶を飲みながらカバンの中身を整理しはじめた。
「えーと、タブレットとキーボードと、手帳と……。うん、あるな。じゃあ使わないものは置いていって、と……」
 俺はベッドの上に着替えが入った袋や充電器などを広げた。
 千雪は黙ってそんな俺の作業を見ていた。
「よし! じゃあ、行ってくるな、千雪。一時間したら戻ってくるから、それまでのんびりしていてくれ」
「はい、分かりました。早く終わったら、早く戻っていらしてくださいね。プロデューサーさんだってお疲れでしょうし」
「はは、了解。それじゃ、行ってくるな」
 俺は部屋を後にし、エレベーターホールへと向かった。

 きっかり一時間後、俺は部屋に戻った。
 ドアをノックすると、浴衣姿の千雪が開けてくれた。
 千雪は化粧を落としていて、熟れはじめのリンゴのように肌が少し赤くなっていた。下ろした髪から、シャンプーのフローラルな匂いがする。
──なんだかいつもより色っぽく見えるな……。
「やだ、すっぴんなのであんまり顔見ないでください」
 気づかずに見入ってしまっていたようだ。いかにもホテルの備品、という浴衣を着た風呂上がりの千雪が、非日常的だったからだろうか。
「す、すまん。でも、ノーメイクでも千雪はきれいだよ」
「な、なにを言うんですか、もう……」
 後ろを向いてしまった。本当のことを言っただけなのにな。
 俺はカバンを置いて、ジャケットを脱いだ。これで本当に今日は仕事はおしまいだ。俺も風呂に入ってしまおう。
 俺のジャケットを甲斐甲斐しくラックに掛けてくれている千雪。その姿を眺めていると……、まるで夫婦で旅行にでも来ているかのような錯覚を覚えた。
 千雪と結婚なんて、ある訳がないのに。こんな素敵な女性の旦那さんになれる人は、本当に幸せだと思う。
「千雪、ジャケットありがとう。ゆっくりお風呂に入れたか?」
「はい。おかげさまで、今日一日の疲れを癒せました。プロデューサーさんもどうぞ。あ、お邪魔でしたら私も外に出ていましょうか?」
「いやいや、その必要はないよ。ゆっくりしていてくれ」
 俺は苦笑しながら、着替えが入っているトラベル用の圧縮袋を手に取り、脱衣所と浴室がセットになったバスルームへと移動した。
 服を脱ぎながら、ふと気づいた。
──ここで千雪も裸になったんだよな……。
 当たり前のことなのだが、それを意識してしまった。するとなんだか胸のあたりがソワソワしだした。肌が熱を帯びていくのを感じる。
──なにを考えているんだ俺は……。とっとと入ろう。
 勢いよく全裸になり、俺は浴室のドアを開けた。
 換気扇がまわっている室内は、既に湯気はなかった。浴槽の湯は落とされていて、細かい水滴に照明の光が反射していた。
──今から湯を張るのも面倒だな、シャワーだけでいいか。
 いつも家ではシャワーなのだ。今日もそれで問題ない。
 と、洗い場に細長い線のようなものが落ちているのが目に入った。
 よく見ると、茶色い。
 多分、千雪の髪の毛だろう。
 ドクン、と胸が鳴った。
 千雪が、ここで身体を洗ったのだ。
 その事実が俺に突きつけられる。
 俺は無意識のうちにその髪の毛を手に取っていた。
 痛みなどまったくない、しなやかなキューティクル。
「……千雪」
 自分の顔に近づける。なんだか身体が熱い。この浴室に熱がこもっているからではない。
 俺はその髪を鼻に近づけようとした。
 そこで、はっとなった。
「なにをしているんだ、俺は……」
 罪悪感と羞恥心がむくむくと胸の中で育つ。
 担当アイドルの髪の毛をどうしようというのだ。馬鹿か。
 俺はぶんぶんと頭を振り、シャワーを出して指でつまんでいたものを流した。
 頭を冷やしていこう。そうでないと、千雪の顔を見られない。
 おかしな気持ちをそそぐように、俺は頭を泡だらけにして洗っていった。

「お、この芸人さん、最近よく出ているよな」
「はい。この間、番組でご一緒しました」
「そう言えば、そうだったな。どうだった?」
「真面目な方でしたよ。楽屋にあいさつに行ったんですけど、テレビのときとは違って、凄く礼儀正しいんです。やんちゃなキャラクターなのはお仕事のときだけみたいですね」
 眼鏡をかけた千雪が笑う。
 風呂から上がった俺だったが、どうも変な間が生じてしまって困っていた。
 風呂場でのこともあったので、どうも千雪を意識してしまう。ただでさえ湯上りの担当アイドルと夜のホテルで一緒、という背徳的なシチュエーションなのだ。いつものように振る舞える訳がなかった。
 それは千雪も同じようで、明らかに雰囲気が固くなっていた。言葉数が少なくて、沈黙が俺たちの間に居座っていた。
 そこで、俺は外部に救いを求めてテレビをつけたのだった。幸い、深夜枠のバラエティー番組が放送中だったのでそれを見ることにした。お陰でなんとか千雪との間に自然な会話が生まれた。芸人さんというのは、凄いものだ。
「ふぁぁ……。あ、すみません、あくびするところなんかお見せしちゃって」
 千雪もリラックスできたのか、そんな油断した姿を見せてくれた。
「いや、気にしないでくれ。それにもうすぐ0時になるし、そろそろ寝るか」
 俺は椅子から立ち上がった。
「はい。それじゃあ、寝る準備しますね。えっと、アラームをセットして……。電気は枕もとのスイッチで消せるんですね。あ、プロデューサーさんはお休みになるとき、電気はつけておく方ですか?」
「俺は真っ暗にして寝るほうだよ。灯りがついてると寝れないときがあって」
 テレビを消しながらそう答えた。
「そうなんですね、私もです。じゃあ、電気全部消しちゃいますね」
 千雪が向かって左側のベッドに移動し、眼鏡をケースにしまってスイッチに手をかけた。
 パチン、パチン、と部屋の中央の照明と通路の灯りが消えた。
 俺が右のベッドに入ったことを確認して、千雪は読書灯を消した。
「おやすみなさい、プロデューサーさん」
「おやすみ、千雪。あ、俺のイビキうるさかったら、鼻摘まんでいいぞ」
「くすっ。もぅ、そんなことしませんよ。明日もよろしくお願いしますね、おやすみなさい……」
 俺は脱力し、瞼を閉じた。
 ふうぅぅ……。これで、本当に今日が終わった。
 不意打ちのアクシデントに狼狽えてしまったが、なんとかやり過ごせたと思う。
 明日は七時三十分に起きて、朝食をとった後、千雪と一緒に新幹線で東京に戻る。その後は俺だけで打ち合わせに出向いて……。
 予定を頭の中で確認していたら、次第に意識が重くなってきた。俺も疲れていたらしい、いつもより早く眠りに落ちそうだ。
 隣から掛け布団が動く音がした。シーツが擦れる音も聞こえる。
 千雪がトイレにでも立ったのだろうか?
 俺も行っておけばよかったかな。まあいい。眠い……。
 すると、俺の掛け布団の端がめくれた気がした。ひとりでにめくれたのだ。
 ああ、きっと夢に落ちかけているんだな、現実と夢が重なっているんだ……。もうすぐ、完全にそっちの世界へ……。
「ぷろでゅーさーさん……」
 千雪の声が聞こえた気がした。
 夢の中に千雪が出てきたんだろうか。はは、今日は本当に千雪づくしの一日だな……。
「プロデューサーさん、まだ起きていらっしゃいますか?」
 今度ははっきり聞こえた。
「んん……?」
 瞼を開け、声がした方向に顔を向ける。
 今日一日一緒だった、俺の担当アイドルの顔がそこにあった。
「あれ……。どうした、千雪?」
 なんだか彼女の様子がおかしい。顔が強ばっていて、緊張しているような表情になっている。大きなステージの前で何度か見たことがある表情。
「私、私……」
「い、いったいどうした? あれ……」
 俺は目を丸くした。千雪が俺のベッドに潜り込んでいた。狭いベッドの中に、俺と千雪が並んで横たわっていた。
「な、なにをしてるんだ千雪⁉」
「びっくりさせてしまってごめんなさい、プロデューサーさん。あの、お話があるんです」
「話?」
 こんな状況でしなければいけない話か? もしかして、ずっとしたかったのに遠慮してできなかったのか?
 俺は上半身を起こして、読書灯をつけた。オレンジ色の光がぼおっとベッドの上を照らす。
 千雪も身体を起こして、ためらいがちに口を開いた。
「私を、その……。抱いて頂けませんか?」

(続く)

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