会社を辞めた⑬
12月から新しい職場に勤務するので、実質長期休暇は11月上旬までだ。あとの半月ちょいは引っ越しや諸々の準備に充てる必要があると思っていた。
そのため、私は11月第2週目の週末を人生の夏休みラストのビッグイベントとして設定していた。Snow Man Dome tour 2024 RAYSだ。
Snow Manとは、私の推しである佐久間大介くんが所属するSTART ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ)所属の9人グループである。2020年1月のデビュー以来、立て続けにCDセールスのミリオンヒットを連発。飛ぶ鳥を落とす勢いで日本国内ではトップアイドルにのし上がった。デビュー以来5度目のライブツアー(コロナ禍が重なり無観客配信となったデビューライブも含む)となるが、今年は本州の4つのドームに北海道の札幌ドームを加え、初の5大ドームツアーを目下興行している。
冒頭書いた通り、私はこのライブを人生の夏休みの最後のビッグイベントにしようとしていた。ツアーは12月下旬までだが、12月中は体力気力ともに新しい職場での業務に全振りしようと決めている。そのためツアー日程が出たその瞬間から、最初の都市となる札幌での2日間の公演に照準を合わせていたのである。
しかしオタクの執念、そして現地の商売根性といったら恐ろしかった。ツアー日程が発表されたのは8月下旬。当たるかどうかはわからないにしろ、とにかく飛行機とホテルを押さえようと思い、発表直後すぐじゃらんを開いたのだが、数十秒前までいくつも空室があったはずのホテルが、手続きをしている間に軒並み埋まっていく。6件ほどその繰り返しで、やっとのことで1泊8千円で宿を確保したその2時間後、改めてホテルを検索してみると、先程予約ができなくなっていた6件がまた予約ができるようになっていて、価格だけ6〜7千円から2万数千円にまで数倍に跳ね上がっていた。
話に聞けば、こうした大きな公演があると宿泊需要が伸びるため、ホテルの担当者は地元でのイベントの開催日程をつぶさにチェックしているのだという。札幌市内はそれでなくても東京、大阪などと比べホテルの数そのものが限定的で、すぐに宿泊料金が高騰するらしい。ライブで札幌を訪れたのが今回が初めてだったので、オタクと宿泊施設側のせめぎ合いを目の当たりにし、お化けでも見たような気持ちになった。
ひとまずホテルも飛行機も抑え、運良く友人の協力もあり札幌公演2日分のチケットを手に入れることができた。11/8〜11日にかけ、3泊4日の旅だ。札幌行きの飛行機は当たり前だが満席である。札幌ドームの収容人数はおよそ5万人。2日間となれば、延べ10万人が札幌を訪れることになる。ライブがてら観光したり、グルメを楽しんだりする人も多かろう。空港に着くや否やカラフルなトートバッグとキャリーバッグを手にする女性の姿を大勢見かけた。
女性たちのバッグには「ぬい」と呼ばれるSnowManのメンバーの姿を模した小さいぬいぐるみがぶら下げられていて、手のひらサイズの人型アクリルスタンドを片手に写真を撮ったりしているので、ファンかどうかは一目でわかる。私もすすきの周辺にホテルを取ったが、宿泊客はSnow Manのファン「スノ担」だらけだった。
すすきのを歩いていても、すれ違う女性の6割くらいスノ担の印象。8日の昼に札幌に到着した後、ホテルにチェックインの上で夜には友人と合流し一緒に夕飯をとる約束をしていたのだが、空港に着いた直後佐久間氏のXアカウントにこんなポストが上がった。
9日の初日公演を前にリハーサルのため前日入りしており、さまざまな地元グルメがケータリングに並んだようだ。海苔にはがっつり店名が書かれている。
「へ〜佐久間くんここの海鮮丼を食べたのか〜。私も食べたいなあ」という軽い気持ちで狸小路にある海鮮丼専門店に足を運ぶと、すでにこの状態であった。
友達の到着まで2時間ほど並びながら待ち、ようやく海鮮丼にありついたがまあ、普通だった。
海鮮丼だけではなかった。8日の午後にはこんな写真も上がった。
こちらもケータリングである。ラーメンの器に輝風とがっつり書かれている。
こちらには初日のライブが終わった後に顔を出したが、もはや到底挑戦しようと思える状態ではなかった。50メートルは並んでいたのではないか。輝風の道路を挟んだ向かいにあるすすきのインフォメーションセンターのおじさん3人組が「なんだあれ・・・・」とドン引きしながら見ていて面白かった。
噂によると、この土日はSnow Manだけでなく、backnumberなど有名バンドのライブも重なっていたらしい。アイドルやアーティストを一目見ようと集まったファンが全国から押し寄せ、札幌中心部は物理的、経済的な熱気に包まれていた。地元の新聞やテレビも大騒ぎだ。
ところでこの大騒ぎを通じて札幌ドームの経営不振について少し聞きかじったが、一体あれはなんなんだろう。ネットに出ている情報が本当なのだとしたら怠慢以外の何者でもないのではないか。ドームは札幌市の三セクが運営しているらしいが、よくもまあプロ球団に対してそこまで傲慢になれたものである。
その影響なのか知らないが嵐のコンサートの時には札幌駅との往復で出ていたシャトルバスが廃止されたらしく、ドームと札幌市中心部をつなぐ移動手段が福住駅を最寄り駅とする地下鉄一本しかない。当たり前だが大混雑で死ぬかと思い、2日目の復路は地下鉄に乗るのが嫌すぎて2時間の道のりを歩いて帰った。
2日目の夜は1人だったので、すすきので有名なバニーガールのガールズバーを訪問した。若い子と話すのは性別問わず楽しい。
いろいろあったが、佐久間くんは相変わらずかわいくかっこよく光り輝いていたし、なんといっても札幌はどこで食べても飯がうまい。思う存分北海道グルメを堪能して帰った。次は佐久間くんの出演する朗読劇が1~2月にかけて公演されるが、こちらは先日FC会員向けの先行抽選で普通に落選した。
今月下旬に一般向けのチケット抽選がある。そこにかけるしかない。12月からの一年は仕事に全振りすると決めているものの、佐久間くんの仕事に関してはそれはまた別の話なのである。