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”うそっこ”と仮想現実

1981年12月7日月曜日は朝からどんよりとした曇りの日だった。
大人たちにとって”師走”と言われるこの時期は、一年の中で忙しい時期でもある。
しかし子供にとってこの時期は、普段より時間がゆっくりと過ぎていく感じだ。
大人たちが忙しい分、逆に子供等は精神的に余裕が生れるのかもしれない。
この日の午前中はクリスマス会で披露するミュージカルの練習はあったが、午後は帰りの時間まで自由時間となる。
お昼を食べ終わったら肌寒い曇り空の下、みんなで元気に園庭で遊ぶ。
3輪車を自動車に見立ててお店に買い物に行くと言い、園庭隅っこにあった生垣に自生していた野草の種子を集めてくる。
この遊びは子供同士でイメージを共有できることが重要になってくる。
いわば原始的な脳内仮想現実である。
実際には保育園の園庭という現実空間にいるはずだが、お互いに脳内でイメージした空想の世界に半分入って遊ぶ。
遊ぶ人数が多くなるとイメージの共有が難しくなり、成り立ちににくくなる。
こんな遊びを当時幼児たちは
「うそっこ」
と呼んでいた。
この日も鉛色の空を背景に、それぞれの空想世界の中で様々なストーリーが繰り広げられていた。

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