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【創作小説】『紅蓮 -limit-』本文サンプル

<基本情報>

「バイクに乗って戦う変身ヒーローと、整備士のお兄さん」メインの群像劇。突如都会に墜落した隕石は、巨大な侵略植物の種子だった…唯一の対抗組織「ロータス」に危機を救われた岩淵タツヤは、整備士として彼らの支援に回る。やがてロータスの一人である赤羽ゴウと親しくなるが…。

表紙がスライドする特殊装丁です。

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※現在は簡易書籍版、PDF版を頒布しています。

※この本にBL要素は含みませんが、webのBLコンテンツが特典として着いてきます。

INTRODUCTION

 遥か彼方、空の向こうから訪れたその「種子」は、町をひとつ潰して、芽を出した。
 まっすぐ上に向かって伸びた茎は、崩れたビルよりさらに高く生長していった。皿のように丸い葉も同様に。
 やがて蕾が膨らみ、花が咲く。
 それは地球上の植物でいうなら、蓮によく似ていた。
 しかし、茎も葉も花も、光を飲み込む漆黒だった。

 黒い花は黒い実をつける。蜂の巣に見えるところまで、蓮に似ていた。
 実からこぼれ落ちた黒い塊を、新しい種子だと人々は考え戦慄した。決して排除できない植物が都市にはびこっていくのだと。

 だが、その侵略者の生存戦略は人々の想像を超えていた。
 それはたしかに「蜂の巣(ワスプ)」だったのだ。

ロータス

『……この地区は、超外来敵対種警戒区域に指定されています。不要不急の通行は避け……』

 携帯端末に届いたメッセージを、もう一度眺める。
 今日、この場所で会う予定になっていた。半月前に約束してから、相手は消息を絶った。
 例の怪物に食われたのだと皆が言うが、信じられなかった。以前から親や教師と揉めていたようだし、家出という可能性だってある。だとしたら、友人との約束は守ってくれるはずだ。こちらからメッセージを送っても返信はないが、携帯端末をなくしたのかもしれない。水没や故障もよくある話だ。それでも、この日この場所を忘れていなければ、きっと姿を現わす。
 高校はちがっても、お互い唯一の幼なじみだから。きっと……。
『……先月の超外来敵対種による死者は、都内一六六人……』
 顔を上げれば、駅の向こうに巨大な「蓮の実」がかすんで見える。何年か前まで高層ビルがそびえ立っていた場所だが、今はあの異質な構造物しかない。それでも、さほど離れていないこの町にはまだそれなりに人がいて、変わらない日常を過ごしている。
『外出の際は、必ず避難経路を確認してください。駆除部隊の到着が遅れる場合も……』
 自治体が流しつづける注意喚起の放送も、耳になじみすぎて単なる環境音になりつつある。あの町が隕石の落下で吹き飛ばされた日から、「エイリアン」の住処と化したことを知らぬ者などいないのに。
 かくいう自分も、現実感はさほど持ち合わせていなかった。何百万人中の数百人に、自分が入るとは思えない。
 あたりを見回していると、人ごみの中に見覚えのある顔があった。
「なんだよ……」
 やはり生きていた。死んだなんて嘘だった。自分との約束も覚えていてくれた。こちらにまだ気づいていないようだから、手を振って名前を呼ぶ。周りがふり向くのもかまわずに。
 だが、名を呼ばれた本人だけはこちらを見なかった。かすかに笑ったままの顔は、なにも見てはいなかった。その目は、いやその顔も、写真のようだった。なぜか高校の制服でもセンスの悪い私服でもなく、社会人のようなスーツを着ている。首から下を切り貼りしたような違和感の……。
 最初に気づいたのは、まちがいなく自分だろう。友人の顔が影もないのに暗くなって見えなくなったかと思うと、次の瞬間には人間でないものに変わっていた。
 映像で、画像で、幾度も目にしてはいたが、実際に遭遇したことはない。人ごみに佇む黒い怪物は、あまりに異質で、雑なコラージュ画像のようだった。
 だが同じ世界に存在している証拠に、悲鳴が上がる。
 一定の速度と志向で動いていた人の流れが、怪物を中心に乱れパニックが伝播していく。一瞬前の楽しさなど吹き飛び、皆がそれぞれの方向に逃げようとし、ぶつかり合ってお互いを阻んだ。
『超外来敵対種発生! 超外来敵対種発生!』
 それまでどこか牧歌的ですらあった警告放送が、大音量の警報に切り替わる。
 怪物は手近な通行人を捕まえ、頭部から針のような器官を出して掴んだ肩に突き刺す。刺された人間が地面に崩れ落ちるまで、何秒もかからない。
 倒れた身体が、刺された部分から黒く染まっていく。遠目に見ると、繊維のようでもあり、触手のようでもある。その黒いなにかに全身を覆いつくされると、怪物に殺されたはずの人間は自ら起き上がるのだ。だが、そのときにはすでに人間ではない。自分を殺した怪物と同じ形態になっている。
 怪物が通ったあとには、倒れた人間と立ち上がる新しい怪物が両側に現れる。それは確実にこちらへ向かってきていた。
「あ……」
 足がすくんで動けない。恐怖にはちがいなかったが、それ以上の混乱と衝撃に冷静な判断を見失っていた。
 殺された人間は、怪物に顔を奪われるという。その顔を使って、やつらは「擬態」し、獲物に近づくのだと。あれはたしかに、幼なじみの顔をしていた。
 怪物が眼前に迫り来る。そこでやっと息をすることを思い出し、逃げようとしたがふり向きざまに脚が絡まって転んでしまった。
 殺される。今、怪物の背後でうごめいている元人間の群れと同じように。失踪した友人と同じように。
 殺される……!
 頭を抱えて目をつぶった直後、襲ってきたのは予想していた痛みではなく、爆風と小石のつぶてだった。
「下がって!」
 毅然とした声にはっと目を開けると、迫っていたはずの怪物は数メートル先に倒れていて、自分の前には別の黒い生き物が立っていた。
 全身漆黒の虫に似た敵とは異なり、人の姿に近い体には、赤いラインが見える。それは敵を見据えたまま、人の言葉で叫んだ。
「逃げなさい、早く!」
 彼の視線の先では、怪物が立ち上がろうとしている。
「あ……」
あわてて、道路を這うように立ち上がり駆け出す。駆けつけた警官隊に保護されるまで、後ろを見ることができなかった。
 警察車両に押し込まれる寸前、始まった戦闘のほうへ目を向ける。動きが速すぎて、どちらが自分を助けてくれたヒーローなのかもわからなかったが。
 筆を刷いたような、なびく赤色が目に焼きついた。
 それが「紅蓮(ぐれん)」との出会いだった。


 整備場の壁に取りつけられたモニタの電源が、自動でオンになった。
 作業をしている者も休んでいる者も、その場にいる全員がモニタのほうを一度向く。そこにはあの不気味な「蓮」が映し出されていた。
 蜂の巣を想起させる巨大な構造物の穴から、なにかが飛び出してきた。人のような、虫のような、そのどちらでもないなにか。
「始まったか」
 岩淵(いわぶち)タツヤはもそりと呟き、メンテナンスが一段落した装備から接続コードを引き抜いた。脇に置いてあったタンブラーを掴んでモニタの前に移動する。開発整備課の課長・駒込(こまごめ)ヨウコが先に来ていた。
「そっち終わったの?」
 タツヤと同じ作業用のユニフォームを着た中年の女性は、腕を組んでモニタを睨んだまま尋ねてくる。
「大方は。あとは連中が帰ってくる前にできますから」
 無数に取りつけられた定点カメラの映像は、対象の動きを感知して自動的にモニタへ映す映像を切り替えていく。現場担当の駆除班や研究班では複数の映像を同時に見られるのだろうが、整備班では戦闘自体を逐一モニタリングしている余裕はないし、そこまでのリアルタイム情報も必要ない。装備のモニタリング担当者以外が、大まかに戦闘の状況を把握するには、こちらのほうがわかりやすい。
 黒い装甲をまとった「駆除部隊」は、戦闘用のバイクで道なき道を駆け抜ける。瓦礫の上でも走行でき、武器も搭載している。ただし敵は人間側のどんな攻撃も弾き返してしまうため、パルス式の銃も足止めにしかならない。
 赤いラインの入ったバイクが、ライダーごと黒い怪物に突っ込んでいった。いや、正確には、彼がバイクごと体当たりした。
「あいつ……」
 エイリアンを轢いた程度で大破することはないが、あの外皮に接触するだけでもダメージは大きい。できれば銃を使ってほしい場面だと、整備場の面々からそれぞれ嘆息が洩れた。
「タツヤ、装備は大事に使えってちゃんと教育しなさいよ」
 駒込がモニタから目を逸らさず言う。
「日々言ってますよ、ていうかおれべつにあいつの教育係でもなんでもないですから」
 向こうは駆除処理課、こちらは開発整備課、管轄も業務も全くちがう。だが駒込は鼻で笑っただけだった。
「そうね、母親みたいなもんよね」
「いやおかしいでしょ、課長ならともかく」
 彼女なら成人した子供がいてもおかしくないが、自分は彼より少し年上なだけで、いやそれ以前に……。
「やめてよ、あんなめんどくさい息子」
「そのめんどくさいのをおれに押しつけようとしてるじゃないですか」
 雑談をしながら新鮮味のない映像を眺めているうち、駆除班から通信が入る。駆除がそれほど時間をかけずに終了したことはモニタで把握していたから、手順どおりの流れだ。簡易的な報告で状況を確認した開発整備課長は、整備場のメンバーをふり返った。
「こちらとのモニタリングに不整合はなし、各自三台の返却準備を!」
 野太い返事が一斉に上がり、タツヤも自分の持ち場に戻る。あの調子だと、修理箇所はかなり多そうだ。
 それから二十分もしないうちに、数時間前送り出した車両が使用者とともに帰ってきた。それぞれが待機している整備担当のところまでバイクを転がしてくる。とはいえ各車両には搭乗者を認識するセンサーがついているから、ハンドルを握って押してくる必要はない。調教された犬よろしく、歩く搭乗者にバイクのほうがまっすぐついてくる仕様だ。
 駆除部隊も整備士も勤務形態はローテーションだから、正式にそれぞれの担当者が決まっているわけではない。だがタツヤのところへ来るのは大概、任務中は紅蓮と呼ばれる赤羽(あかばね)ゴウだった。
 フルフェイスのヘルメットを外すと、繊細そうな青年の顔が現れる。見たところ、どこか怪我をしているわけでもひどく疲れきっている様子でもない。彼はじゃまそうな髪をかき上げ、頭の後ろで無造作に括った。
 タツヤは彼が無事に帰ってきた安堵を押し隠し、バイクのシートを叩く。
「またバイクで突っ込みやがって! たまには無傷で返せねえのか!」
「……………」
 彼はぺこりと頭を下げる。謝ったつもりなのだろう。
 隣のブースに黄色いラインの愛車を預けた仲間が、通り過ぎざまに声をかけていく。
「まあまあ、おれもフォローしきれなかったしさ」
 声も口調も軽い高輪(たかなわ)シュンは、現行メンバーの中では最年長で、タツヤとのつきあいも最も長い。シフトによっては彼の車両を担当することもある。
「おまえは無駄弾使いすぎ。毎回バッテリ空にして帰ってくんじゃねえよ」
 接近戦を好まないシュンは、他のメンバーより銃の使用頻度が高い。それが彼の作戦であり戦略なのだと知ってはいるが、戦闘中にバッテリ切れにならないかとハラハラさせられる身にもなってほしい。
 だが彼は悪びれずに肩をすくめるだけだった。
「だって敵に近づくの怖いじゃない」
「それ、隊長の前では言わないでよ」
 三人目が呆れた口調で言いながら後ろを通りすぎていく。バイクに青い蓮のステッカーを貼っている武蔵(むさし)ハルコは、タツヤが見るかぎり最も効率よく戦っている。
「言いませんよ今さら。だって隊長もう知ってるもん、おれがチキンってことは」
 笑いながら、戦士たちは整備場を出ていく。彼らはこのあと駆除処理課への報告がある。その前に着替えと装備の返却を済ませなければならない。
 ゴウはタツヤがまだなにか話すことがあるのか、正確にはまだ怒られるのかと、立ち尽くしたままこちらを窺っている。
「まずそっち片づけてこい。説教はこっちの修理が終わってからだ」
 ため息混じりに言うと、ゴウは安心したように微笑んだ。
「……ありがとう」
「ほんとにありがたく思ってんならもっと大事にしろ。装備も経費も無尽蔵じゃねえんだ」
「努力する」
 わかっているのかいないのか……まちがいなく後者だが、ゴウは神妙にうなずく。
 口数も少なく、笑顔などめったに見られない彼が口にする言葉は、おしゃべりな連中よりは重く感じられる。だが自分はよく知っていた。ゴウはなにも考えていないのだ。
 いくら「選ばれた」存在とはいえ、彼には荷が重いのではないかとよく思う。
 四色の蓮の中でも最強と称される「紅蓮」という立場は。


 オレンジ色の空の下に、崩れたビルから咲いた巨大な花のシルエットが見えた。
 タツヤは喫煙所の窓からその花を見つめる。先月はなかった。今までそこにあったオフィスビルは、鉄骨もコンクリートも貫く蓮によって串刺しにされ、半分ほど崩れ落ちている。
 数年に一度の頻度ではあるが、いざそれが始まると同じ高さのビルを建てるよりも短い期間で、エイリアンは自分の拠点を生み出す。それを阻止することは今の人類にはできない。
 喫煙所のドアが開いた。
 ふり返ったタツヤは、相手を認めてタバコを持った手を軽く挙げる。
「おう、おつかれ」
「おつかれ」
 Tシャツとジーンズに着替えたゴウは静かに微笑み、タツヤの横にやってきて自分のタバコを取り出した。だがライターが見あたらないようで、抱えてきた上着のポケットを、タバコをくわえたままごそごそと探している。呆れたタツヤが自分のライターで火をつけてやると、彼は決まり悪そうな上目遣いでこちらを一瞥し、タツヤの手元に顔を近づけた。
「……なにか言うことは?」
 満足げに一服するゴウに、タツヤは自分も煙を吐き出しながら促してやる。わずかに目を見開いて、青年はタバコから口を離した。
「ありがとう」
「どういたしまして」
 こんな調子だから、課長に母親代わりなどと言われるのだ……そうは思うが、いちいち言って聞かせないと礼の言葉すら忘れる男なのだから仕方ない。不遜なのではなく、彼の中に行動の因果関係が入っていないだけだから。場面ごとに逐一教えていかなければ、いつまでたっても覚えない。
 ゴウは窓にもたれ、つまり室内を向いてタバコを吸っている。Tシャツの首元から、タトゥーのような黒い模様が覗いていた。決して無難とはいえない髪型や、タバコの手慣れた持ち方も相まって、善良な一般市民なら避けて通る外見ではある。おまけに自分からはほとんど口を開かない。誤解されても弁明すらしない。
 それどころか、喫煙所での世間話さえ望めない。だから話しかけるのはいつもタツヤだ。
「今日はもう上がりか?」
 うなずいて灰を落とした彼は、返事の代わりにこちらを見上げる。いきすぎた無口にもさすがに慣れた。
「こっちはもう一仕事残ってるな……帰るか?」
「待ってる」
 ゴウはそう答えてタバコの箱を窓枠に置く。ソフトケースの口から覗く残りの本数と、自分の腕時計に目を走らせたタツヤは、火をつけたばかりのタバコを灰皿に押しつけた。
「三〇分過ぎたら先帰っていいぞ」
 軽くタバコを挙げてみせるゴウを横目に、足早に喫煙所を出る。
 待っていろと言えば、彼は一時間でも二時間でもここにいるだろう。確固たる理由があるわけではない。職員寮に帰るのは二人だけではないし、帰り道が同じだからといって学生のように待ち合わせて帰る意味もない。実際、こうして偶然喫煙所で会わなければ、それぞれ帰宅してそれぞれの時間を過ごしていただろう。
 意味も理由もない。むしろ、なにもないからゴウはタツヤをただ待っていられる。駆除部隊として戦う、それ以外の「自分」をゴウは持っていない。
 修理箇所のリストは作成済みだから、最優先事項だけ対応して、戦闘データ分析は明日の早朝に受け取れるよう検査システムのロジックを修正、整備班の部下にも作業を割り振って……。あと二時間はかけるはずだった仕事を頭の中で組み直しながら、タツヤは整備場へ戻っていった。

 日が沈んだ町に、人の気配はない。不自然なほど静かな空間に、スピーカーから放送が流れている。
『……この地区は、超外来敵対種特別警戒区域です。民間人の立ち入りは禁止されています……』
 かつては都会的な町並みが広がっていたこの地も、今は敵対研の関係者と出入りの業者くらいしかいない。
 超外来敵対種対策研究所……通称「敵対研」は、隕石落下の際にできたクレーターの近くにあった。強制退去を迫られた大学のキャンパスを、建物と敷地丸ごと流用している。
「腹へったな……なにか食いたいもんあるか?」
 徒歩五分の職員寮までの道に、飲食店などない。寮に食堂はあるがメニューは完全に覚え込んでいるレベルだし、自室でなにか作って食べるとしたら、ものによっては寮を過ぎたスーパーマーケットまで買いにいく必要がある。
 ゴウは少し考え込んで、携帯端末を取り出した。
「ミロク、なにか食べたい」
 おそろしく抽象的な要求を突きつけられたAIアシスタントは、わずかな間の後、明瞭な回答をよこした。
《外食でしたら竹屋の五丁目店、社員食堂でしたらミックスフライ定食、ご自宅でしたらシーフードパスタがおすすめです》
 タツヤは思わず空を仰ぐ。
 自律型AI「ミロク」は、今や個人の携帯端末から官公庁のメインコンピュータにまで採用されていて、起動ワードの「ミロク」という呼びかけを聞かない日はない。今の回答も、個人の嗜好や生活パターン、現在時刻および現在位置、健康状態や部屋の冷蔵庫の中身まで考慮した結果ということは知っている。
「おまえ、おれが先週置いてった冷凍のシーフードミックス、まだ手つけてねえな」
「……たぶん」
 冷蔵庫の中身など覚えてもいないゴウは、自信なさそうに答えた。
 現代社会で公私ともにミロクと無縁の生活は難しく、タツヤも仕事の半分はミロク相手だが、歳のせいなのか日常まで頼るのには抵抗がある。ゴウが躊躇なく自分の行動をミロクに任せる心理は理解しがたい。
「おまえに聞いたおれがバカだった。うち来い、なに出されても文句言わず食えよ」
 街灯に照らされたゴウの表情が明るくなった。
《いかがなさいますか》
 訊かれっぱなしのミロクが返答を要求してくる。そういうところが煩わしいとタツヤは思うのだが、ゴウは素直に答えている。
「タツヤの部屋で食べるからいい」
《すばらしいですね。楽しい時間をお過ごしください》
 ミロクのおせっかいなコメントなど意に介さず、彼はポケットに携帯端末をねじ込む。そしてわずかに軽い足取りで前に踏み出した。
 結局ゴウにとっては同じなのだ、とタツヤは思いながら彼の少し後ろを歩く。次の行動を示してくれるなら、人間でもAIでも、敵の出現でも。


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続きは『紅蓮 -limit-』でお楽しみください。


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