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夜明けのすべて

2024.2.9公開

※ネタバレを含む表現があるかもしれません。

 最初にこの映画を見ようと思ったきっかけは、あらすじを見て、主人公がPMS(月経前症候群)であるということだった。社会人になってからだろうか。生理前に自分の不調を強く感じるようになった。この映画ではどのように描かれているのか気になった。

 この映画は、起承転結があるお話ではなく、どこにでも誰にでもあるような日常が織りなすものだった。心地よいヒーリングの音源と、陽の光のあたたかさを感じる映像シーンが、何度も私の胸にぐっときた。特にそれを感じたのは、山添くんが自転車を漕いでいるところと、エンドロールのところ。

 日常を感じられたのは、朝、昼、夕、夜とそれぞれのシーンが流れるように何回も巡っていたからだと思う。これが後になって、プラネタリウムでの藤沢さんの言葉につながり、「夜明けのすべて」の題につながったのだろう。

 主人公、藤沢さんのPMSによるイライラが爆発してしまうシーン。何度かあったが、あれはかなり共感してしまった。私の場合はイライラしてもそのまま怒り散らかすのではなく、涙が出たり鬱になったりがほとんどなので、あのような実体験はないが、いつああいう風になってもおかしくないと感じられた。周りから見ると明らかにおかしいと思うが、当の本人はそれに気が付かないもんだなぁと痛感した。パニック障害の山添くんの発作のシーンにも、完全に引き込まれてしまった。私も適応障害になった経験があるから尚更なのだろう。

 生きづらさを病気のせいにしてしまえば簡単だけれど、その分、人との関わりを避けるようになり、余計に生きづらくなるだけだろうなと感じた。はじめに会社にきたばかりの山添くんは同僚を避けていたし、制服(作業着)もきちんと着ていなかった。それがいつからか、自ら同僚に話しかけ、差し入れまでするようになり、作業着もみんなと同じように着用するようになっていた。病気や大切な人との別れなど、登場人物たちは人に話せないような事情をそれぞれ抱えていた。そんな中でも、社会を生きる為にはほんの少しの誰かの言葉や支えがあると、こんなにも優しい世界になるのだと感じた。そして、変わるきっかけにもなるということだ。

 生きづらいながらにも、行く先々での人との出会いや関わりによって、自分が生きやすいと思える環境に進んでいくことが、生きる課題であると思った。周りの影響もあるだろうが、まずは自分が生きやすくなるように、少しでも周りの人に優しさ、あたたかさを与えることで、自分にも返ってくるものがあるのではないだろうか。

 生きづらさを抱える私の心がホッとする、あたたかく優しい作品でした


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