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【イギリス生活】ささやかな至福の時間。

先週末、家族でバスに乗って出かけた。

といっても、前日に夜更かしをしてしまったので朝なかなか起きられず、急遽予定を変更し近場へ出かけることにした。

目的地まではいつも乗るバスだと30分程で着く。

しかし、この日は無性にのんびりとバスに揺られたい気分だった。(出発が遅くなったのにも関わらず)

その為、同じ目的地なのにあえて1時間半もかかる別ルートのバスに乗ってみることにした。

いつも乗るバスは大通りを通って行くのだが、
今回乗ったバスは、住宅街の狭くて細い小道をくねくねと通って行く。

イギリスの住宅街はとにかく路上駐車が多く、道の両脇にびっしり車が停められていることもめずらしくない。

しかし、運転手さんは気にすることもなく、慣れた様子でぐんぐん前に進んで行く。よくこんな細い道通れるなぁと心から関心してしまう。

この日の最低気温は、-2℃。とても寒い。窓の外を見ると、家の屋根や道路に霜がついていて白く凍っていた。(最初見た時、雪が降ったのかと思った)

いつもハイスピードのバスも(イギリスあるある)スリップしない為なのかは分からないけれど、少しばかり速度がゆっくりな気がした。

外はとても寒いのだが、窓から差し込む日の光に照らされて、バスの中はぽかぽかと暖かく気持ちがいい。(もちろん暖房も効いている)

どうやら、このバスに乗っているお客さんは地元のお年寄りが多いようだ。

降りる場所が近づくと、降車ボタンがあるのに運転手さんに「あそこの家の前で降ろして!」と頼んでいるおじいちゃんがいたり(まるでタクシー状態)、バスの中でばったり会ったのかニコニコと嬉しそうにお喋りするおばあちゃんたちがいたり、中には、運転手さんと何やら世間話を楽しんでいる人もいたり、ほのぼのする光景が広がっていた。

きっと、いつもこのバスを利用している人たちなのだろう。何だかこの街の人たちの日常が、少し垣間見えた気がした。

わたしたちは、娘、夫、わたしの順で1番後ろの席に座っていた。

しかし、しばらくするとわたしたち以外の乗客はみんな降りてしまった。

静まり返ったバスの中で、気がつくと娘は眠っていた。

ただ、バスが揺れるたびに娘の頭が壁にぼこんぼこんとすごい勢いで当たっている。見かねた夫が慌てて自分のダウンを娘の頭と壁の隙間にせっせと埋め込んでいた。しばらくすると、夫も娘の隣で眠ってしまった。

わたしは何だか眠るのが惜しくて、2人が眠る横でただひたすら、ぼーっと窓から外の景色を眺めていた。

12月に入ったこともあり、通りすぎる家々からはクリスマスツリーやリース、電飾などの飾りつけが見える。バスの中からささやかなクリスマス気分を味わうことができた。

また、バスに乗っているといくつか懐かしい場所を通った。

「この道、夏の暑い日にひーひー言いながら3人で歩いたなぁ」と思い出したり、

「この公園すごく緑が綺麗だったな、
暖かくなったらまた行きたいなぁ」と思ったり。

「こんなところにあったのか!ここのお店、今度行ってみよう」と、小さな発見があったり。

こんな感じで、特別なことは何もせず、とにかくぼーっと窓の外を眺めている時間が、わたしにとって至福の時間だった。

ぽかぽかと暖かくて、ゆらゆらと揺れるバスに乗っていることも相まって、たまらなく心地よかった。

なぜだろう…?

年々、幸せを感じるハードルが低くなってきている気がする。

たまにはあえて遠回りをして時間をかけて行くのもいいものだな、と思ったバス時間だった。

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