見出し画像

IPOスタートアップ知財分析〜WealthNavi編〜

 IPOスタートアップの知財分析第2回は、こちらも昨年上場し上場後すぐに時価総額1000億円を超えているWealthNaviさんです。

1.WealthNaviについて

 入金するだけで自動で最適なポートフォリオで資産運用ができるロボアドバイザー「WealthNavi」を提供するスタートアップです。ウェルスナビの特徴としては、リバランス機能と自動税金最適化(機能名「DeTAX」)があります。

 リバランス機能は、一定の比率で投資し続けるのではなく、追加投資を行う際、追加投資後のポートフォリオを最適に保つよう、購入する銘柄や数量を決めるリバランス機能を備えております。例えば、「積立投資を行っている場合には、毎月の積立のたびにポートフォリオの配分比率が最適なものに近づき、より効率的な運用が期待される」とのことです。

 DeTAXは、「配当金の受け取りやリバランス時の売却による利益の実現化での税負担で運用額が減少、投資効率が低下するのに対し、ポートフォリオ内にある未実現の損失がある銘柄を同数量の売買を行うことでより含み損を実現、ポートフォリオの構成を維持したまま税負担の繰り延べを図り税金の最適化を行う機能」とのことです。

 創業からの資金調達の流れは、15年7‐10月:シードラウンド2.5億、16年1~10月 :シリーズA 5.5億、18年2~10月: シリーズB 32億、18年9~11月: シリーズC41億となり、累計約150億円を調達しIPOまで到達しています。


2.WealthNaviの知財について

 特許は全部で4件しており、上記で紹介したリバランス機能・DeTax機能にピンポイントで2件ずつ特許取得していることを、以下のように特許取得を積極的にPRされています。

 リバランス機能に関する特許6105799号は、「各銘柄の仮想比率と目標比率との差に基づいて購入対象銘柄を決定する」ものようです。審査過程で、具体的なアルゴリズムの特徴が追加されており、権利範囲としてはやや狭いので自社プロダクトは保護されているのでしょうが、権利回避することはできるような気がします。

 DeTax機能に関する特許606871号は、「各銘柄の未実現損失、保有数量、および未実現損失の総額に基づいて、特定銘柄を売買すべき数量を算出するもの」のようです。細かい権利範囲はさておき、プロダクトと機能とは整合が取れたなかなかいい特許ではないでしょうか。

3.分析・考察

 シリーズAの資金調達前後で出願しており、リリース初期に実装した部分をピンポイントで出願しております。この辺は1回目の分析を行ったプレイドさんとは異なり、プロダクトリリース初期にコア機能をピンポイントで特許取得する王道的な戦略のようです。

 また、出願から1年以内(2017年前半)には権利化まで完了しており、早期に特許取得しPRも実施しています。特許取得のリリース以外でもリバランス機能が特許取得していることを所々でPRしているようです。このように早期権利取得・早期PRでリバランス機能=>ウェルスナビ自特許=>ウェルスナビ独自機能という印象を顧客や業界内の競合・ステークホルダーに認識させ、着実にPRしているのではないでしょうか。

ダウンロード

 なお、競合企業の一つであるTHEOのプロダクトでもリバランス機能や税金最適化の機能は実装されているようですが、ウェルスナビ程自社の特徴的な機能としてはPRしていないような印象です。どうしても後追いで模倣している印象を与えてしまうからでしょうか?

 全体として、特許件数は4件と然程多くないですが、自社プロダクトの初期に実装したコア機能をピンポイントで特許取得している事例ではないでしょうか。また、早期の権利化・早期の特許PRで自社プロダクトの立ち位置の明確化に寄与させているというのがウェルスナビの特許戦略の中の一つの特徴のように思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?