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知財・弁理士キャリアについて

 今年度の弁理士試験の合格発表がされましたね。合格者の方々おめでとうございます。さまざまな苦労や思いがあって辿り着いたと思いますが、ここからが弁理士としてのキャリアスタートですので、一緒に業界を盛り上げていきましょう。

 さて、Twitter界隈などでもたまに話題にあがっていますが、今回は知財・弁理士キャリアについて、個人的な考えをまとめてみようと思います。新たに知財業界に入られる方も、知財業界のなかで転職を考えている方なども、何かの参考になれば幸いです。

1. 知財キャリアの軸

 私はキャリアを考えるときに知財業務のエリアをベースに考えています。知財業務といっても非常に多岐に渡るのでこれを整理するため、知財業務の種類と、技術分野の2軸を設定すると以下の図のように整理できます。

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 横軸は知財業務のざっくりとした流れとなっており、知財戦略を構築する戦略・分析エリアから、権利取得するための調査・出願・権利化エリア、そして権利化後の係争・ライセンスエリアとなっています。縦軸は技術分野でここではざっくり5分野にまとめています。実際には、契約業務やクリアランス業務が抜けていたり、特許・意匠・商標といった法律種の軸、日本だけでなく米国・欧州・中国といった国ごとの制度・実務に特化した専門軸もありますが、ここでは割愛します(知財業務は本当に多彩ですね・・・)。

 このような整理の中で、自分自身はどのエリアで活躍したいでしょうか?もしくはこれまでの経験を活かしてどのエリアに業務範囲を拡大したいでしょうか?それに合わせて、次のキャリアを考えてみるのはいかがでしょうか。

 例えば、戦略・分析系の業務をしたい場合でも技術分野を横断的に取り組みたいのであればコンサル会社の方がいいでしょうし、特定の業界に特化して取り組みたいので企業知財の戦略系、最近だとIPランドスケープ担当部門などがよりマッチすると思います。また、出願・権利化業務に特化していきたいのであれば、このエリアに関わる特許事務所・企業知財・特許庁審査官などの異なる立場を経験すると非常に専門性の高いキャリアが築けるのではないでしょうか。
 このように自分が働きたいエリアを特定し、そこから逆算してキャリア設計していくのをお勧めします。以下ではどのようなキャリアプランがあるのか、類型ごとに見ていこうと思います。

2.キャリア類型①:業務特化型

 これは特定の業務分野に特化したキャリアです。以下の図の例だと、戦略・分析、またそれに関連する特許調査業務を技術分野横断的に経験した上で、特定のエリアに注力されているイメージです。

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 例えば、特許調査会社から知財キャリアをスタートし、技術分野を問わず経験を積んだ後、最近流行りのIPランドスケープのニーズを捉え、企業知財やコンサル企業で電気・HW・化学分野のIPランドスケープを実践している方とかいたりするのではないでしょうか?

 上記は戦略・分析エリアの例ですが、出願権利化・係争ライセンス領域では、さらに海外軸も掛け合わせ、特定の国の法律・実務にフォーカスするとより高い専門性を築けるでしょう。

3.キャリア類型②:技術分野特化型

 こちらは、特定の技術分野にフォーカスした分野特化型のキャリアです。技術分野の高い専門性を活かして幅広く知財業務を経験した上で、特定のエリアに注力してされているイメージです。

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 例えば、バイオ系の企業や研究機関の研究者がバイオ企業の知財部で知財キャリアをスタートさせ、知財業務全般を経験した後、特許事務所を経てバイオ分野に特化した特許事務所を独立するといった感じでしょうか?技術系の高い専門性を活かしたキャリアになります。

4.キャリア例(筆者)

 一応私自身のキャリアも同様に図にしてみました。私自身は電機メーカの知財部門でスタートし、ローテーションで複数の事業部門担当をしながら知財業務を幅広く経験しました。現在はスタートアップ向けに知財戦略・出願権利化の支援を中心に活動しています。

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 個人的な思いとしては、キャリア初期はとにかく経験エリアを広げたいという思いで色々とトライさせてもらいました。一通り経験できたと感じた後、その中でどこにフォーカスしたいかを考え、図にはないですがスタートアップという軸を掛け合わせて戦略・出願・権利化エリアに注力しているのが現在という感じです。

5.最後に

 いくつか例示しましたが、知財のキャリアは冒頭にも書いた通り非常に多岐にわたっていると思います。どのようなキャリアが正しいということではなく、まずは上記のような広いエリアの中で何をしたいかを思い描くことが重要だと思います。また、エリアによってはすぐに挑戦できない、そのエリアの募集がないようなところもあるかもしれません。そのような場合でも数年後にそのエリアに行くためのルートがあるはずなので、そのようなルートを考えてみるといいと思います。

 この考え方は、知財キャリアのスタートのタイミングでも転職のタイミングでも変わらないと思います。ただし、知財キャリアをスタートさせる時にどのエリアを自分がやりたいのかということがイメージできないことも多いと思うので、そのような場合には知財業務を全体を俯瞰できる企業知財がいいと思います。

 また、個人的な経験からすると、企業知財、特に大企業の知財部門は、知財に関する知見・ノウハウが企業として圧倒的に蓄積されているので、キャリアのスタートとしては非常に良いと思います。もちろん、特許事務所でも教育に力を入れているところもありますし、実務経験から個人で能力を高めることはできると思います。それでも、企業知財には常時数百人規模の人材を通じて収集された知見やノウハウが蓄積されている点は、知財キャリアを選択する上で見逃せないポイントではないでしょうか。

 最後までお読みいただきありがとうございます。読者の方のキャリアに少しでも参考になれば幸いです。

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