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人間って、優しいのに怖い生物ですよね

10月に入ってから一気に秋になりましたね。秋になるのはいつもは寂しいけど、今年は「やっとか!」という感じです。

この記事を書いている今は世界情勢が超不安定。ウクライナとロシアの争いも終りが見えないし、イスラエルまわりもついに大きく動いてしまいました。

人間はおぞましい生き物だなと感じます。みんな平和にいこうよ〜って言ってる自分も、ちょくちょく他人に腹を立てている以上、ひょっとしたら人のこと言えないのかもしれません。

そんな今回は、人間の攻撃性に関する論文を読んでみたよ〜という話です。

読んだものはこちらです。

優しいのに怖い生物、人間

人はなんでこんな優しいのに怖い生物なのでしょうか。

誰かと共同生活するし、協力していろんなことができるし、人間は社会性が高い生き物ですよね。みんなも友達や家族に助けられた経験はいっぱいあるでしょう。

でも同時に、怖い生き物でもあるなと思うんです。戦争は今も起こっているし、どこにいってもいじめはなくならない。

もちろん僕は戦争もいじめも反対だし、なんならいじめを受けた経験もあるので、まじでなくなればいいのになと思っています。

でも人類って、なんで「優しさ」と「怖さ」両方の性質を持っているんでしょうか。優しかったら普通そんな攻撃性は高くないはずなのに。

攻撃性には2種類ある

人間が優しいのか怖い生き物なのかについて、生物学的にもさまざまな議論がなされてきたようです。

そんな中、「人は優しいし攻撃性も高く、その両方の声質を持っている」と考える学者もいます。ハーバード大学で生物人類学の教授をしているリチャード・ランガム先生は、記事「Two types of aggression in human evolution」の中で

「人間の優しさと攻撃性は対立するものじゃなくて共存している」

と述べています。

彼によると、人間の攻撃性は2つに分けられるそう。

  • 積極的攻撃性:意図的に、冷静に、相手を攻撃する

  • 反応的攻撃性:感情を伴って、カッとなって怒る

人間は進化の過程において、積極的攻撃性が高くなり反応的攻撃性が低下してきたため、「優しいのに攻撃的」な人類となった、とのことです。

チンパンジーのような人類


人間に類似した生物を眺めて考えてみましょう。

積極的攻撃性が高い霊長類として、チンパンジーが挙げられます。

チンパンジーは、群れ同士で争いを起こすことがしばしばあるそう。同じ群れの仲間で協力しながら、いわゆる「縄張り争い」で勢力を伸ばそうとする習性があるみたいです。

また同時に、同じ群れの中でも階級争いや「子殺し(繁殖数を増やすためにオスが子供を殺す)」が起こるとリチャード先生は述べています。

どれも「ある利益を求めて行われる意図的な攻撃」であり、なんらかの報酬を得るために積極的攻撃性が進化してきたと言えるそうです。

もちろん全てのチンパンジーが攻撃的なわけではありません。またチンパンジー同士で縄張り争いが起こるということは、言い換えれば高い社会性を持っているということにもなります。

チンパンジーも賢い生物ですよね、気になる。

ボノボのような人類


その一方で、もうひとつ人類に似た霊長類がいます。ボノボです。

チンパンジーはオスが攻撃的な生物ですが、ボノボは逆に穏やかで争いが少なく、女性優位な社会を築きます。

自分の群れの仲間だけでなく、よそ者に対しても共感し、思いやり行動を示すことがわかっているそうです。

人間も同じような行動が見られますよね。思いやりを持ったり、みんなで協力したり。これらは反応的攻撃性が低いからこそ現れる行動でもあるとリチャード先生は考えます。

反応的攻撃性を低下させることにも、様々なメリットがありそうです。協力的な関係により子供は育ちやすくなるし、グループの結束が高まることによって生き残りやすくなる。だからこそ、人類は反応的攻撃性を低下させる方向に進化してきたようです。

神経や脳の基盤も異なる

それぞれの攻撃性は、刺激されるメカニズムが異なると考えられています。
僕もまだ脳の部位ごとの機能や神経構造に詳しいわけではないけれど、

  • 積極的攻撃性:中心および基底側扁桃体、側側視床下部、および腹外側中脳灰質

  • 反応的攻撃性:中側扁桃体、中脳下部視床下部、および背側中脳灰質と関連。低血流、またはグルコース代謝の低下から生じる前頭前皮質機能の欠陥も、反応的な攻撃の増加

上記のような違いがあるそうです。

反応的攻撃性の方が研究が進んでいて、積極的攻撃性についてはまだ明らかになっていない部分も多いとのこと(2017年時点)。

でも少なくとも、2つの攻撃性は別物として機能していることはほぼ確実というのが、生物学者の間でも報告されているみたいです。

いじめや争いも進化の産物……?

リチャード先生が提唱する説に沿って考えてみると、いじめや戦争も「本人の道徳性」とか「思いやりの欠如」だけが原因ではなく、むしろ進化の産物とさえ言えるのかもしれません。

もちろん僕はすべての争いに反対だけれど、そう言われてみると「優しさや共感を!」「思いやりを!」という呼びかけだけではなかなか収まらない現状にも納得してしまいますね。

むしろ、人類がなかなか抗うことのできない「進化的特性」を考慮したうえで介入を行ったほうが、諸悪の根源を断ち切れるような気もします。相当難しいことではあるけど、表層だけをなんとかしても解決ではないですし。

この論文を読んでからは

  • いじめや争いを止めるための介入にはどのようなものがあるか

  • 本当に効果的だったのはなにか

  • もし攻撃性が2つあるという説に沿った上で効果的な介入ってどんなものがあるか

あたりが気になります。またいろいろ探してみようと思います。

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