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おとなになると、キライなものが増えるんだよ
ケイくんから今日の出来事を聞く時間が毎日楽しみだ。
「今日はなにして遊んだの?」
「今日はドッヂボールすることになって、したくないからお部屋にいたんだけど、ユウくんがバレーボールしようって誘ってくれて遊んだんだ」
「そうなんだ。ドッヂボールなんでしたくなかったの?」
「ドッヂボールはあんまり好きじゃないんだよ」
「そうだっけ?前はふつうにしてたよね?」
「おとなになると、キライなものがひとつ増えるんだよ」
と、なんだか深みを帯びた理由で今日の出来事についての会話はおわった。
同意しすぎると、キライな気持ちを増幅させてしまいそうで強く言わなかったけれど、ドッヂボールがイヤという気持ちはとてもよくわかる。
わたしも小さなころからドッヂボールが本当にイヤでたまらなかった。
中にいる人にボールをぶつけることを主目的とするなんて、信じられないくらい野蛮なゲームがなぜ存在するのだろうと思っていた。
《顔面セーフ》という、痛みを受けたのにコート内に居続けなければならないルールがある意味もよくわからなかった。
少しでもコート内にいたくなくて「モトガイ(ゲームスタート時よりもともと外野にいる人)」に立候補していたが、コート内に人が少なくなると「モトガイ、中に入って!」と召喚されることがあり、少人数になったコート内に入る=的にされやすくなる為、モトガイ志願も次第にしなくなった。
コート内にいてもこわい、モトガイもつらい。ドッヂボールはとにかく逃げ場のないゲームだった。
だから、ケイくんにも「ほんっとうにイヤだよね!!」と言いたかったけれど、わたしの苦手フィルターでケイくんのイヤを増強してしまうのは避けたいから自制した。
「おとなになると、キライなものが増えるんだよ」
たしかに次第に自我が芽生えて育ち、好ききらいがはっきりするから、その通りかもしれない。
6歳なのに自分のことをおとなとは、かわいいな。
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